葬儀は、参列する人数や規模、日数によって、一般葬、家族葬、一日葬、直葬など、その種類・名称が異なります。
後悔のないように葬儀を執り行うためには、それぞれの特徴やメリット・デメリットを把握しておきたいところですね。
そこでこの記事では、葬儀の種類とその特徴、メリット・デメリットを中心に解説していきます。費用感もあわせて説明しているので、どんな種類の葬儀にするのか、ぜひ参考にしてください。
目次
「一般葬」の特徴
しきたりや慣習に則った、いわゆる普通のお葬式を「一般葬」と言います。一般葬は故人と生前親しかった友人や知人を招き、付き合いのあった人との縁を大切にした葬儀のスタイルです。
一般葬では遺族と参列者が故人を偲んで食事をする「通夜」に始まり、翌日に「葬儀式・告別式」が行われます。その後、故人を納めた棺を火葬し、遺骨を骨壷に入れる骨上げという流れです。
参列者が多い葬儀になると飲食費や返礼品の費用が多くなります。また、大きな斎場を借りる必要もあり、料金も高額になります。
一般葬のメリット・デメリット
メリット
- しきたりや慣習に則った葬儀ができる
- 故人と縁のあった多くの人と一緒に偲ぶことができる
デメリット
- 参列者が多いと料金が高くなる
- 遺族が参列者対応に追われてしまう
一般葬が執り行える場所
一般葬は、参列規模に適した公営斎場、民営斎場、寺院などで執り行うことができます。急に参列者が増える場合もあるため、余裕のある広さを検討しても良いですね。家族葬専用ホールや参列人数に会わない斎場は適していません。
「家族葬」の特徴
「家族葬」とは、親族やごく親しい友人・知人のみで行い、故人とのお別れを大切にした葬儀の形式です。遺族が参列者の対応に追われることなく、家庭的な雰囲気の中お別れの時間をゆっくりと過ごすことができるのが特徴です。
家族葬は参列者が少ないため、飲食代や返礼品費用があまりかからない傾向があります。
しかし、家族葬は親族のみで行う葬儀のため、葬儀に参列できなかった友人・知人にとって、納得できないお別れとなってしまう可能性もあります。残された方々が納得できる葬儀になるのか、慎重に考えましょう。
また、家族葬と近い葬儀のスタイルとして、「密葬」「自宅葬」があります。
家族葬のメリット・デメリット
メリット
- 故人とのお別れの時間をゆっくりと過ごすことができる
- 参列者の対応に追われない
- 料金が安い傾向がある
デメリット
- 参列したくてもできない人が出る可能性がある
家族葬が執り行える場所
家族葬が執り行える場所は、家族葬専用ホールもしくは少人数の葬儀ができる斎場です。広すぎる斎場はさみしい雰囲気となってしまうため、葬儀の人数に適した斎場を選びましょう。
家族葬と近い葬儀の形式で「密葬」があります。
家族葬と密葬の違いは、家族葬がその1回で完結することに対し、密葬は後に一般の参列者を招いた葬儀(お別れ会・偲ぶ会)を行うことを前提としている点です。
密葬を選ぶ方の多くは社会的地位の高い方の家族です。そのため、密葬で遺族と故人との別れの時間を取り、その後に参列者向けの葬儀を行います。
故人の自宅で行う葬儀を「自宅葬」と言います。
自宅で行う葬儀のため、故人の好きなものを並べたり飾り付けをしたりと自由度高く執り行うことができます。また故人が過ごした自宅で、家族水入らずで見送れることも魅力です。
しかし、棺を搬送できないマンションでは自宅葬ができません。できたとしても葬儀業者が出入りするため、近隣住民に迷惑がかかるかもしれません。そのため現在では、自宅葬を行う人は5%程度に留まっています。
「一日葬」の特徴
「一日葬」とは、お通夜を行わずに葬儀式・告別式を1日で行う葬儀の形式です。喪主が高齢で体力的な負担が大きいときや、参列者のスケジュールを合わせにくいときに選ばれます。
また、通夜料理の費用や、親族の宿泊費を削減できるといった、経済的な理由から選択する場合もあります。しかし、遺体は前日から運び入れるため、場合によっては二日分の会場費を支払わなければならないケースもあります。
注意点として、一日葬は新しいスタイルの葬儀のため、菩提寺がある場合は菩提寺の許可が必要になります。仏教における葬儀では、お通夜・告別式・火葬の流れを重視するため、許可が得られないケースも。稀なケースではありますが事前に菩提寺に相談を入れておく必要があります。
一日葬のメリット・デメリット
メリット
- 1日で終わるため、時間的負担が少ない
- 料金が安い傾向がある
デメリット
- 菩提寺がある場合、許可が必要
- 故人を見送るための時間が少ない
一日葬が執り行える場所
一日葬は参列人数に適した公営斎場、民営斎場などで執り行うことができます。葬儀自体は一日で終わりますが、前日から遺体を搬送する必要があるため、自宅で安置できない場合は安置施設がある斎場を選ぶか、安置できる施設を探す必要があります。
「直葬(火葬式)」の特徴
「直葬(火葬式)」とは、通夜や告別式を行わず火葬のみを行う葬儀の形式です。参列者は招かず、火葬場の火葬炉の前などに遺族が集まり10分程度のお別れをします。その後すぐに火葬を行います。
直葬も宗教儀礼を大幅に省いた葬儀の形式のため、菩提寺の許可が必要です。この時あらかじめ僧侶に頼んでいれば、火葬炉で読経をしてもらうことができます。
直葬は葬儀を行う経済的余裕のない方が選ぶ場合もあれば、遺族に負担をかけたくない故人が遺言書に直葬を依頼することもあります。
直葬は他の葬儀の形式に比べ料金を大きくおさえられます。飲食費、返礼品費などがかからず、火葬料金や搬送費、棺、骨壷などの必要最低限のサービス費、物品料しか発生しないためです。
しかし、故人とのお別れの時間を取れず、慌ただしく終えてしまったことに後悔する方もいます。参列できなかった親族の気分を害してしまう場合も。直葬にするかどうかは慎重に決める必要があります。
メリット
- 葬儀費用をおさえられる
- 葬儀にかかる時間を短縮できる
デメリット
- お別れの時間が極端に短く、後悔することも
- 菩提寺がある場合、許可が必要
直葬が執り行える場所
直葬が執り行える場所は火葬場のみです。基本的に火葬場に集合して行う葬儀の形式のため、一般的な斎場で直葬を行うことはできません。
しかし、遺体の搬送や火葬場の予約などは葬儀社にお願いするため、まずは葬儀社に連絡する必要があります。また、火葬まで自宅で安置できない場合、斎場の安置室もしくは安置施設を借りなければなりません。
「お別れの会(偲ぶ会)」の特徴
「お別れ会(偲ぶ会)」とは、遺族や親族だけで行う密葬の後に会社関係の人や友人・知人を招いて行う葬儀です。著名人の逝去時に行われるケースが多いですが、近年はどなたでもお別れ会を開催できます。
お別れ会と偲ぶ会は同じ意味として使われます。
また、お別れ会(偲ぶ会)に近い葬儀の種類として、形式・宗教に囚われない場合の葬儀を「自由葬」と呼ぶこともあります。
形式、宗教に囚われない葬儀を「自由葬」と言います。宗教儀礼をする必要がないため僧侶による読経や焼香も行わず、より故人らしいプログラムを組むことができます。
例えば、ロック歌手の葬儀ではBGMをロックミュージックにしたり、スポーツ選手の葬儀では思い出の試合映像を流すなどをします。
自由葬は故人らしい葬儀ができる一方、確率したスタイルがないため内容をしっかりと組み立てる必要があります。また、菩提寺がある場合は自由葬に宗教者を呼ばなかった結果、納骨を断られたということもあるようです。
自由葬を行う際には、葬儀後のことも考慮してメリットだけでなくどのようなデメリットがあるかも確認しておきましょう。
お別れの会(偲ぶ会)・自由葬のメリット・デメリット
メリット
- 故人と親しかった人に参列してもらえる
- 故人の思い出やエピソードを会葬者で共有できる
デメリット
- 準備に時間がかかる
- 参列者が多いと料金が高くなる
お別れの会(偲ぶ会)・自由葬が執り行える場所
お別れ会はホテルで行うことが多いようです。ホテルでお別れ会を行う場合、線香を焚かない、遺骨を持ち込まないなどの制限があります。
お別れ会は参列者のための葬儀ですから、早めに招待状を送り準備に取り掛かりましょう。
また、お別れ会はホテルで行うだけでなく、レストランや故人のゆかりの地など、会場となる施設の了承さえ得られれば自由に開催できます。
「社葬(団体葬)」の特徴
「社葬(団体葬)」とは、企業や団体の発展に尽力した故人の功績を讃えて、企業や団体が主催して行う葬儀のこと。主に企業の創業者や重役が亡くなった時に行われます。
社葬の規模は数十名のコンパクトなものから、参列者が千人を超える大型のものまで様々。大型の社葬はまず親族だけの密葬を行ってから社葬を行うのが一般的です。
また、企業が関与する葬儀の種類として、「合同葬」もあげられます。
「合同葬」とは、企業と遺族が合同で葬儀を主催し、密葬と本葬を一度に行う葬儀のことを言います。また、2つ以上の企業や団体が合同で行う葬儀も合同葬と呼ばれます。
中小企業などの同族経営の会社で行われることが多いようです。葬儀が一回で済むため遺族や参列者の負担をおさえられるというメリットがあります。
社葬(団体葬)・合同葬が執り行える場所
社葬を行う場所として、葬儀場、ホテル、寺院などのほか、企業が所有している体育館や大会議場などの施設を利用する場合があります。
場所に決まりはありませんが、予想される参列者の人数に合わせた会場選びをすることが重要です。遠方からの参列者がいる場合、交通アクセスや駅からの距離も考慮しましょう。
「市民葬(区民葬)」「福祉葬」の特徴
「市民葬(区民葬)」とは、自治体が市民・区民向けのサービスの一環として行っている葬儀プランです。自治体と葬儀社との協定料金により、簡素ながらも安価で葬儀を行うことができます。
市民葬(区民葬)を利用するのに所得制限はなく、故人か喪主がその自治体に住んでいればどなたでも利用できます。
自治体によって料金やプランに含まれる内容は異なります。市民葬(区民葬)の制度を導入していない市町村も多いようです。
また、自治体が関係する葬儀として「福祉葬」もあります。
「福祉葬」とは、生活保護法第18条に基づいて、葬祭扶助によって行われる葬儀のことを言います。生活保護を受けている世帯の方が亡くなり、葬儀費用を出せない場合に適用されます。
葬祭扶助で支給される費用は搬送、火葬、納骨などにかかる最低限の費用です。僧侶による読経や戒名の授与など宗教的な儀式はありません。
市民葬(区民葬)・福祉葬のメリット・デメリット
メリット
- 葬儀の料金を安くおさえられる
デメリット
- 自治体が提携する斎場しか利用できない
- 葬儀を行いたい日時に予約が取れない可能性がある
- 市民葬の制度を導入していない自治体もある
市民葬(区民葬)を執り行える場所
市民葬(区民葬)ができる場所は、自治体と協定を結んだ斎場に限られます。自宅から近いか、希望日に予約が取れるかなど、あらかじめ確認しておきましょう。
「生前葬」の特徴
「生前葬」とは、本人が生きているうちに喪主(主催者)となって行う葬儀です。本人の意向を反映させるケースが多く、生前葬は本人が元気なうちに、お世話になった人に対して感謝の気持ちやお別れを告げることを目的としています。
通常の葬儀とは形式もマナーも異なり、本人と友人・知人が交流できるのがメリット。また、決められた流れもなく、自由に開催できるのもポイントと言えます。
一方、亡くなった後の遺族の気持ちを考えると、「生前葬をしたから通常の葬儀はしなくて良い」とはなり難いのが現状です。家族の時間的負担、金銭的負担はかかってしまいます。
生前葬のメリット・デメリット
メリット
- 自分で自由に行うことができる
- 時間的制約がない
- 家族の負担が少ない
デメリット
- 生前葬に理解を得られない可能性がある
- 葬儀が二度手間になる
生前葬が執り行える場所
生前葬を行う場所に決まりはないので、自由に開催場所を決定できます。参列者の人数を考慮する必要はありますが、自宅や斎場、ホテルなどで行うことが多いようです。