【プロが語る!】 介護離職を予防するための両立支援対応モデルについて


さて、今回は社長さん・人事総務のご担当者向けに、介護離職をする従業員を減らすために、会社内に介護相談体制を作りませんか?というお話をしたいと思います。

ここでは、介護離職とは「家族などの看護・介護を理由に、働き盛りの社員が会社を辞めること」の意味で使っています。働いている従業員が、介護離職をしないように、会社内に相談体制を構築する支援を、厚生労働省が行なっています。

 

会社に相談するときにはもう、手遅れ……

前回の記事で、従業員が、会社の総務や人事に、介護について相談をする場合というのは、話がかなり大事になっていて、「退職しないといけません……」「介護休業をとりたいのですが……」という話になることが多いということを紹介しました。

いろいろと調べてみると、介護をしなければならない方にとって会社は、初期に相談する相手というより、ある程度、従業員が動いてみて、介護の方向が定まったうえで初めて、「今後の生活スタイルをどうするか?」を相談する相手になっているようなのです。

しかし、これでは、会社が従業員を応援したくても、応援できることが限られてしまいます。実際に、人事総務の担当者にお話を伺うと、「制度はあるけど、なかなか社員さんが活用してくれない」「もうちょっと前に相談してくれれば、ストレスを感じるほど悩まなくても良かったのに……」「私たちの仕事をさせて欲しい!」と思っている方も多いのです。

もしも会社内に、介護が必要になった従業員が、最初から相談できるような体制があれば、現状を変えることができるかもしれません。

 

社内に相談できる体制をつくるには?

とはいえ、会社にどんな体制をつくると良いのか?また、介護に詳しくない人事、総務のご担当者が、どんなことをアドバイスを従業員にできるのか?などなど、何から手をつければよいのか?わかりにくいですよね。

そんなお悩みを持つ方々のために、会社内に相談体制をつくるための具体的な構築手順や、実施上のQ&Aなどが載っているマニュアルが、厚生労働省のHPにあります。

 

仕事と介護の両立支援のページ

 

この中の「実践マニュアル」が、とても参考になります。

このマニュアルの正式名称は、「平成27年度 仕事と介護の両立支援事業 企業における仕事と介護の両立支援実践マニュアル 介護離職を予防するための仕事と介護の両立支援対応モデル」です(長い!)。

このマニュアルには、会社が従業員の仕事と介護の両立を支援するために取り組むべき事項を「介護離職を予防するための仕事と介護の両立支援対応モデル」として5つに整理しています。この5つを整備すると、社内の体制が整うというわけです。

 

その5つとは、

  1. 従業員の仕事と介護の両立に関する実態把握
  2. 制度設計・見直し
  3. 介護に直面する前の従業員への支援
  4. 介護に直面した従業員への支援
  5. 働き方改革

となっています。

また、すぐに使える「お役立ちツール」も公開されていますが、このツールがまた、結構使いやすくておススメです。

 

初めて介護の相談体制を構築する方へ

この5つを詳しく紹介していきます。

初めて、介護の相談体制を構築する会社さんは、この順番で取り組んでいきましょう。すでに、介護離職に取り組んでいる会社さんも、自社の取り組みを振り返りつつ、ご確認下さい。

 

1.従業員の仕事と介護の両立に関する実態把握

最初に行なうことは、情報収集です。従業員に向けて、アンケートや聞き取り調査を行ないます。

過去(もしくは現在の)従業員が抱えていた介護の有無を確認します(介護保険を使ったかどうかも?)。またその時に、自社の制度がどのように活用されたか?どんな制度があれば、より援助になったと感じたのか?などを、従業員からヒヤリングします。それにより、その会社の仕事と介護を両立させるにヒントが手に入ります。

 

2.制度設計・見直し

実態把握をふまえて、自社の両立支援制度が「法定の基準を満たしているか(直近では平成29年1月に変更がありました)」「従業員に周知されているか」「利用要件がわかりやすいか・利用手続きが煩雑でないか」「従業員のニーズに対応しているか」などをチェックしましょう。特に、従業員の周知がどこの会社さんの悩みの種のようです。

この辺りについては、顧問の社労士さんに、ご相談されると良いと思います。

 

3.介護に直面する前の従業員への支援

従業員に対して、親の介護をどうするのか?社内には、こういう支援制度がある!というのを告知する段階です。この支援をすることで、介護を始める初期段階から、会社が支援に入ることができるようになります。また、従業員からすると、「自分達のことを、会社がきちんと考えてくれている」という安心感を与えることができると思います。

以前は、家族の介護というプライベートな情報を、会社に伝えるのか!?という拒否反応がありましたが、最近では、そのあたりがずいぶん薄れてきた印象があります。

従業員が介護に直面してから、仕事と介護の両立に必要な基本的な情報を提供するよりも、従業員が介護に直面する前に、直面しても離職しなくて済むような、情報提供の支援を行う方向に考えが変わってきています。

 

4.介護に直面した従業員への支援

介護と仕事を両立する従業者への実質的な支援になります。定期的に面談を行ない、介護休業、介護休暇、残業なし、1日の労働時間の制限など、具体的な制度を活用する段階です。実際に、さまざまな問題が生じる可能性があり、本人も同僚も、いろいろと知恵を出し合う段階になります。

また、本人以外の家族の支援があれば、数日の会社をお休みすることで、対応できる事例もあるかと思います。

この段階で、人事総務のご担当者が従業員と面談をしながら「介護支援プラン」を作成します。別に「介護支援プラン」策定マニュアルがあります。ケアプランのような表を使いながら、要介護者と従業員の週の予定を立てることで視覚ができます。

 

5.働き方改革

今後は、介護休業も育児休業のようにメジャーな休業制度になっていくと思います。

そうなると、今までのやり方を少しずつ変え、会社全体の生産効率を上げていく事が必要になります。仕事に意欲的に取り組めるような職場環境や働き方をめざしていく段階です。

残業時間の削減、年次有給休暇の取得促進、仕事上の情報共有、働き場所の変更などなど、「お互いさま」と支援し合える職場風土づくりを構築することになります。

このマニュアルは、具体的にどう取り組めば良いか?がとても明快ですし、段階ごとに必要になり資料(アンケートやセミナー資料、従業員への配付資料)が、きちんと準備されています。至れり尽くせりのマニュアルです。

 

具体的な支援ツールの中では、下記を使ってみてください。

  • 「親が元気なうちから把握しておくべきこと」チェックリスト
  • 「従業員から介護に関する相談を受けた際に対応すべきこと」チェックリスト1~58
  • 「ケアマネジャーに相談する際に確認しておくべきこと」チェックリスト

最後になりますが、この記事を読んでいる、社長さん、人事総務のご担当者向けのご案内です。現在、厚生労働省は、株式会社パソナに「平成29年度 中小企業のための育児・介護支援プラン導入支援事業」を委託しています。

中小企業に育児・介護の相談窓口をつくるための導入支援をしています。介護プランナーが会社に伺って、さまざまな相談にのり、企業内の介護・育児離職を防ぐ体制を作りのお手伝いをするサービスです。上記の取り組みを質問を交えながら、確認することができます。

私も、6月より、この介護プランナーとして、企業さんを訪問しています。

もし、ご興味がありましたら、下記のサイトをご覧下さい。

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橋谷創(スクナクリエイト代表/社会保険労務士・介護福祉士)

橋谷創(スクナクリエイト代表/社会保険労務士・介護福祉士)

医療法人で人事・総務・行政対応等、総務人事全般を経験。実地指導や監査対応も場数をこなし、対応策などについては独自の視点も交えながら的確なアドバイスに定評あり。また、ディマティーニ・メソッドの導入により、介護現場のモチベーションアップを後方支援。マネジメント研究に日々取り組んでいる。