【インタビュー・エンディング産業展2017】今、新たなサービスを提案しければ、供養そのものが軽んじられてしまう = TSO international佐々木CEO


2015年から毎年、東京で開催されているエンディング産業展は、葬儀・埋葬・供養など、人生の終末から死後に関わる産業や宗教者のための総合的な専門展示会である。3回目となる今年は、8月23日(水・友引)、24日(木)、25日(金)の3日間、昨年と同じ東京ビッグサイトで開催される。

主催はTSO international株式会社。同社は、スポーツ・健康・レジャーや、高齢者が安心して生活できる環境づくりなどをテーマに展示会ビジネスを手がけている。出展社280社、2万5千人以上が集まった昨年の展示会から1年。自身も寺に育ったという代表取締役CEOの佐々木剛氏に、今年のエンディング産業展への意気込みと供養産業への熱い期待をお話しいただいた。

 

サービスとして成り立つためには、選択肢は欠かせない

――2015年、そもそもエンディング産業展を始めた狙いにはどのようなものがあったのでしょうか?

現代は多死社会などと呼ばれていますが、今後2040年まで死亡者数が増えていくことは統計上、ほぼ間違いないことです。死とはわれわれが避けて通ることはできないものですが、人間が動物と違うところは死者をも敬い、先祖を大切にするといったことだと言われています。私も、こうした死者や先祖への心が、今をしっかり生きて行く基礎となり、人間の発展にもつながるのだと考えています。

ところがこれに逆行するように、葬儀の簡素化、あるいは火葬場でご遺骨の引き取りを拒否される、そういった話題が全国各地から聞かれるようになってきました。このような時代の流れが元に戻るかといえば、おそらくは戻ることはないでしょう。しかし、だからこそ今、新たな葬祭サービス、埋葬のサービスを提案していかなければ、仏事や葬儀そのものが軽んじられてしまうのではないかと危惧しています。このような背景からエンディング産業展を開催したいと思ったわけです。

 

 

――以前、「今の日本全体を覆っている閉塞感を産業展の開催によって変え、日本を活気づけたい」と語られていました。エンディング産業、供養産業についても閉塞感を感じていらっしゃいますか?

そうですね。何事もそうですがサービスとして成り立つためには、選択肢が用意されているべきで、その選択肢から消費者に選択していただくことが重要です。エンディングという分野においては消費者という言い方には語弊があるかもしれませんが、この消費者の選択こそが本来のあり方だと思います。いろいろな選択肢が用意されていなければ、「やる」か「やめる」かの二択しかなくなってしまいます。お葬式もお墓も、これまではそんな状態だったのではないでしょうか。そこに、閉塞感を感じざるをえない状況がありました。

そうではなくて、オープンなプラットホームを作り、そこにできる限りの有用な情報を集め、産業に携わる方々とのネットワークを構築することができれば、そのプラットホームにおいて消費者も情報に触れることができ、事業者の方々も新しいサービスについて知識をもち、イノベーションのきっかけを得ることができます。政府やマスコミもその情報に触れることができますから、世の中を変えていくきっかけにもなります。

選択肢が少ないなかで消費者が選択しなければならない閉塞状況を打ち破っていく、これが展示会の役割だと考えています。ぜひ、最新のトレンドを見に来ていただいて、そのなかから時代のニーズにあったものを選び、日々の活動に生かしていただきたいと願っています。

 

われわれが投資すべきなのは、これからの業界を担う人材を育成すること

――エンディング産業展は一般の方も自由に入場できます。この業界では珍しいことだと思いますが、そのご決断についてお聞かせください。

昨年のエンディング産業展では業界関係者様以外の、終活の一環としてご来場いただいた一般の方、あるいはそれに準じる方々は約5,000人いらっしゃいました。来場者全体の2割近くを占めています。

対象を一般の方々にも広げていることについては、今でも業者様からご意見をいただくこともあります。しかし、消費者から上がってくる意見を業者様が直接くみ上げ、それをサービスに反映させて提供していくこともマーケティングとして重要です。消費者の声を聞かないかぎり、閉塞感はなくなっていかないのではないでしょうか。展示会で商品の値段を出すかどうかは難しい問題で、これは出展者様におまかせしています。ただ、声を聞くには消費者の興味をひくことも必要ですから、参考価格のような形で出していただいてもいいのではないかと思っています。

お葬式の御布施もわかりにくいと言われています。寺院においても一般の消費者の声を聞くこともできていないのではないかと危惧していますので、これについては、今年の秋に大阪で開催する、関西版のエンディング産業展でそういった機会を設けたいと考えています。

2016年のエンディング産業展の受付風景。一般来場者も含め、国内外から大勢の人々が集った

 

――3年目となる今回の新しい取組み、目玉企画を教えてください。

今回の開催に向けて大きく変えたのは、各業界のトップの方に集まっていただいてセミナー企画委員会を立ち上げたことです。葬祭、仏壇、石材、寺院など各分野のみなさんの意見を出し合っていただくことで、セミナーの内容も充実したものになりました。さらにそれをどなたにも聞いていただけるように受講料を無料にします(注)。充実したセミナーを受講いただき質問もしていただけるというエデュケーションの機能を高めたこと、これが今回の大きな変更点です。業界の第一人者の方々にお考えいただいて、現在もっとも聞きたいであろう内容を網羅していますから、日本でいちばん充実したセミナーだと思っています。

セミナーの無料化は、たしかに大きな負担です。ただ、われわれが投資すべきなのは、これからの業界を担う人材を育成することであり、業界が次のイノベーションを起こしていくことです。多くの方にセミナーを聞いていただき、それを各社に持ち帰って業務に生かしていただく、これを毎年繰り返していくことで業務内容をブラッシュアップしていただく。これがわれわれの目的ですので、そのための投資は惜しまずにやっていきます。

これから少子高齢化が進んでいく東アジアからの講師もお招きします。日本にとってもビジネスチャンスが大いにある地域ですし、各国の供養や埋葬の文化・考え方をシェアすることによってグローバル化にも対応していきたいという趣旨です。

今年はすべてのセミナーが無料。誰もが自由に学べる場を創りたいという(画像は昨年の葬儀社向けセミナー風景)

 

多死社会は止められないが、幸せな多死社会を作ることはできる

――今回のエンディング産業展の展示会場の魅力は?

展示会場については、業界の垣根を越えて、現在300社近くの出展社様に集まっていただいていますが、もう少し増える見込みです。展示面積は去年より10%ほど増加しています。

さらに今回は日本石材産業協会様と一緒に、はじめて「ジャパンストーンショー2017」を同時開催します。お墓だけでなく石を用いたモニュメントや納骨堂などを石材販売店様にPRするだけでなく、寺院関係者様や葬儀社様にも関心を持っていただければと思っています。

今、お墓の問題は深刻です。ライフスタイルの変化から、結婚しない、子どもがいないといったご家族は増えています。こうしたことから継ぐ人がいないお墓が増えています。継いでくれる方がいない人が亡くなったとき、その方のご遺骨をどうするか。そうした方に対応できるサービスも数多く揃えました。エンディング周辺のお困りごとはすべて対応できるように、ご遺族への対応、あるいは終活のためのサービスの拡充に取り組んでいます。

また、近年、相続税の税率が変わって、生前贈与などの相続税対策に関心が集まっています。相続といえば不動産が大きな問題となりますが、今では全国で6軒に1軒が空き家になっていると言われるように、空き家となった実家をどうするか、悩んでいる方が多くいらっしゃいます。その空き家対策として、「空き家対策パビリオン」も同時開催いたします。リフォーム、リノベーションの会社にご出展いただくなどで、空き家の撤去・売却・修繕・管理などに関する設備や機器、サービス、情報を集約しました。

エンディング産業展2017 会場レイアウト(イメージ)

 

――エンディング産業展では毎年、面白いイベントも話題ですが、今年はどんな企画がありますか?

納棺士の仕事のすばらしさを伝え、同時にそのスキルアップを図る納棺士コンテスト、お坊様のしぐさや立ち居振る舞いといった外見でない美しさを競う美坊主コンテスト、供養業界で働く女性にスポットをあてた供養女子、その他のイベントをセミナーに合わせて開催して、皆様にオープンマインドで接してもらえるように考えています。また、若手の育成も、こうしたイベントの大きな目標となります。

今年も開催!?人気のイベント「美坊主コンテスト」(画像は昨年の模様)

 

今秋、関西でも「関西エンディング産業展2017」を開催

 

――8月の東京のあとは、11月8~10日にインテックス大阪で「関西エンディング産業展2017」が予定されています。

大阪でもエンディング産業展を開催することを決めたのは、1つは葬送文化が関東と関西では異なっており、東京での産業展だけではカバーできないお客様が多数おられるためです。そしてもう1つは近畿圏の寺院数の圧倒的な多さで、寺院関係の方々にもしっかりリーチしたいと思いました。今後、毎年開催できるように定着化を図っていきたいと期待しています。

展示会によって、社会が抱えている問題をすべて解決することまではできませんが、緩和することはできるはずです。多死社会を止めることはできませんが、幸せな多死社会を作ることはできると信じています。そのためにどんなサービスが必要なのか。エンディング産業展を専門に担当する社員と日々ディスカッションし、実際にサービスを提供されている業者様にもお話を聞きにうかがって、展示会に生かしています。

人の死に関わる仕事は尊い仕事であり、だからこそみんなが大切にする、その結果としてマーケットが拡がっていく。このような流れにもっていけるようにこれからも努力していきます。

 

――ありがとうございました。

 

見どころ満載の【ENDEX】エンディング産業展2017。開催は2017年8月23日から25日です。終活に真剣に取り組んでいる方もそうでない方も、楽しめる企画が満載です。足を運んでみてはいかがでしょうか?

詳細については、下記公式HPをご覧ください。

 

(注)同時開催の「ジャパンストーンショー2017」には一部有料のセミナーがある。

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