さようなら金さん! 中村梅之助さんの劇団葬

2016年1月18日、肺炎のため85年の生涯を閉じた中村梅之助(なかむらうめのすけ/本名・三井鐵男=みついてつお)さんの劇団葬が3月3日、東京・港区の青山葬儀所で行われました。

劇団前進座の代表として舞台や映画、テレビなどで活躍した梅之助さんに最後のお別れを告げようと、映画監督の山田洋次さんや脚本家のジェームス三木さん、また俳優の里見浩太朗さん、西郷輝彦さん、松平健さんなど関係者やファンら約750名もの人々が集まりました。

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初代遠山の金さんが歩んだ役者人生

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葬儀委員長を務める劇団前進座幹事長藤川矢之輔さんが挨拶に立ち、劇団前進座と共に歩んだ梅之助さんの人生を振り返りました。

前進座の創立にすべてを捧げた中村翫右衛門(なかむらかんえもん)さんの息子として、劇団旗揚げの1年前、昭和5年に生まれた梅之助さん。8歳の時に初舞台を踏み、15歳で前進座に入座。全国津々浦々を公演で回りました。

舞台だけでなく、遠山の金さんシリーズの1作目となる『遠山の金さん捕物帳』の遠山金四郎をはじめ、数多くのテレビや映画で活躍しました。

舞台に立つことを決してあきらめなかった

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喪主を務めた長男の中村梅雀(なかむらばいじゃく)さんは、戦中戦後の食糧難の時代に育った梅之助さんはもともと体が弱く、「30代まで生きられないかもしれないと医者にも言われていた」と言います。

さまざまな病苦を乗り越え数々の舞台などで活躍しましたが、昨年11月に呼吸困難で倒れ救急搬送。一命を取り留めたもののこの1月に再度、病院に搬送されたそうです。

今年5月には前進座の85周年公演を控えていた梅之助さんは、「もし命を続けるなら肺に管を通す、でも会話はできなくなる」という医師の説明に「会話ができないのであればこのままで構わない」といいつつ、「何とか5月の舞台に立ちたい」とおっしゃっていました。

日ごとに体力が衰えていく中で唯一、最愛の孫娘だけが目で会話ができたそうです。

最愛の孫のキスでお別れ

亡くなる2日前、午前2時頃、意識がもうろうとしていた梅之助さんは突然目を覚まし、お孫さんを呼んで「チューがしたい」と伝えました。

看護師と相談してほっぺにキスをしようとしたら、「そうじゃない、口にしてくれ」と。

お孫さんは唇にキスをしました。

梅之助さんは無言で右手の親指を立て、「よし」と反応したそうです。

「おそらく、この時覚悟したのだと思います」と梅雀さんは言います。

そして18日、東京が大雪に見舞われ交通機関がマヒしていたため親族がなかなか集まれない中、そばに付き添っていたお孫さんに見守られて人生の幕を閉じました。

祭壇は四季を照明で表現

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今回の劇団葬では、祭壇がとてもきれいでした。

とはいっても祭壇そのものは白を基調とした、デザインもとてもシンプルなものです。

では何がすごかったのかというと、その照明です。

式の中で祭壇の色がゆっくりと移ろい、気が付くとまるで違う雰囲気になっています。

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「舞台公演をする際に照明を担当している東京舞台照明さまのご好意で『梅之助さんの最後を見送りたい』と、ライトが当たるように準備してくださいました。祭壇は照明の色が映えるように白を基調にしています」と劇団の担当者さん。梅之助さんご本人の好みもあって「シンプルさを心掛けました」とのことでした。

また献花の間には、梅之助さんの数々の名台詞が流れています。

劇団ならではのお別れのかたちというより、式そのものが舞台でした。

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祭壇の右側には劇団前進座の座旗が掲げられています。

1931年の劇団旗揚げ当時からあるもので、劇団の創立記念日や総会などでは必ず立てるものなのだそうです。

 【中村梅之助さんの略歴】
昭和5(1930)年2月19日、前進座創立メンバー中村翫右衛門の長男として生まれる。東京都出身。
昭和13(1938)年、『蜂の巣長屋』で初舞台を踏み、翌14年『勧進帳』太刀持ちで4 代目中村梅之助を名乗る。昭和20(1945)年、前進座に入座。以後前進座幹事長を経て、 前進座代表となる。2015年5月国立劇場公演『文七元結』の家主甚八が最後の舞台と なりました。
【主な舞台】『勧進帳』弁慶/『毛抜』粂寺弾正/『魚屋宗五郎』宗五郎/『一本刀土俵入』駒形茂兵衛/『平家女護嶋』の俊寛/『左の腕』卯助
【主なテレビ】『遠山の金さん捕物帳』/『伝七捕物帳』/大河ドラマ『花神』

劇団前進座公式サイトより)

(小林憲行)


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