『blank13』が問いかける、埋葬や葬儀の意味

13 年前に突然失踪した父が余命3 ヵ月で見つかったことから始まる物語を齊藤工監督が映画化した「Blank13(ブランク13)」が、2 月3 日(土)よりシネマアート新宿で公開、2 月24 日(土)より全国順次公開されます。

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“そう言うもの”とやり過ごす当たり前の風習こそが作品の味わい

映画の冒頭、カメラは火葬場の裏側を映しています。

亡くなった人を火葬するという「当たり前」と背中合わせに存在しながら、普段は目にすることがない光景です。

火葬炉に火が入り、画面の中央に国内の火葬率が99 パーセント超であることを示す文章が浮かび上がります。

葬という「常識」が揺らぎ、故人のからだが燃えていくという事実もまた遺族にとっては非日常であることに改めて気づいて、火葬炉の中で燃えていく遺体が存在感を増していきます。

主人公・コウジ(高橋一生)の兄・ヨシユキを演じ、本作品で長編映画監督デビューを果たした齊藤工さんは、公開に先立って「 “そう言うもの”とやり過ごす当たり前の風習こそが作品の味わいになればと作りました」とコメントを寄せています。冒頭の火葬に続く葬儀のシーンも、日本特有の「そういうもの」でしょう。

折り畳み椅子が並ぶ小さな式場の一部屋だけで展開される葬儀の場面を牽引するのは、独特の演技で多くの作品を彩る佐藤二朗さんです。

僧侶から突然提案された「参列者の挨拶」の一番手に立ち、自身が話し終えた後は場を仕切って、個性的な参列者の話に絶妙の相槌を打ったり突っ込んだりして話を進めていきます。

彼の抜群のコメディセンスと、参列者を演じる神戸浩さん、織本順吉さん、伊藤沙莉さん、村上淳さんといった名脇役の演技は、葬儀という厳粛な場面であるにも関わらず終始笑いを誘います。

一方で、ギャンブルにおぼれて多額の借金を作った挙句、家族を残して失踪した父(リリー・フランキー)に複雑な思いを抱えながら遺族席に座るコウジと兄、コウジの恋人は無表情のまま。

それでも、コウジの脳裏には父と過ごした幼い日の記憶が蘇り、失踪していた父のなかにもそうした日々の名残があったことを参列者のエピソードから感じとって、長いブランクが少しずつ埋まっていきます。

葬儀の式場という最後の舞台で、遺体が一人の人間としての姿を取り戻し、コウジが愛や憎しみを超えた「父」という存在に納得する過程は、埋葬や葬儀という日本の文化が持つ本来の意味をも問いかけているようです。

故人を埋葬するために遺体を火葬し、遺骨をお墓に納めるというのは、実は日本だけの風習です。アメリカやヨーロッパの主流は土葬であり、日本に次ぐ火葬大国と言われるイギリスでは、遺骨を灰になるまで完全に燃やしてしまいます。

自分と家族のつながりやそれぞれの人生、人を送るということ、残されるということ、残していくということ―。時間に逆行して紡がれていく家族の物語は、見ている人の心にさまざまな角度から迫り、深い余韻を残すことでしょう。

『blank13』

2 月3 日(土)シネマート新宿にて公開
2 月24 日(土)全国順次公開
©2017「blank13」製作委員会
配給:クロックワークス

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