成年後見制度 ~法定後見と任意後見のちがい~


成年後見制度の目的は大きく分けて、2つあります。

1つ目は判断能力が不十分とみなされる方の財産を保護するために「財産管理」をすること、2つ目はその方の代わりに医療や介護の契約をすることで安心して生活を送ることができるようにすること「身上監護」です。

 

判断能力が十分にある人は自分が交わした契約について、どのような結果となるのか、自分にとって得なのか損なのか、契約内容が適切であるか等を判断することができますが、認知症などの精神疾患をお持ちの方はこうした判断をすることが難しいため、後見制度があるという訳です。実際に、正しい判断能力が無い方が「振り込め詐欺」や「悪徳な訪問販売」といった詐欺行為の犠牲になってしまうことも珍しくありません。とある団体の調査では、認知症になっていない人に比べて、認知症になっている人は詐欺行為の被害にあってしまう割合がおよそ8倍という結果がでているようです。

また、判断能力が不十分とみなされ、一切の契約ができない状況になってしまうと、介護が必要な状況であっても、ご自身では契約を進めることができず、安心して生活を送ることができません。

 

認知症などの精神疾患により、適切な判断が難しい方が、成年後見制度を利用して後見人をつけることで、本人の財産や生活の安定を守ることができるようにすることが成年後見制度の主旨となります。この後見制度において、財産を守ってもらう人・契約を代わりにしてもらう人を「成年被後見人」といい、財産を守る人・契約を代わりにする人を「後見人」といいます。

 

任意後見と法定後見

成年後見制度には「任意後見」と「法定後見」があります。簡単に説明すると、違いは下記の通りです。

 

任意後見:ご自身が将来認知症になってしまったときに備えて、事前に契約を締結して信頼できる方を予め後見人を定めておく制度

法定後見:もう既に認知症になってしまった方の後見人を、家庭裁判所に申し立てを行い、家庭裁判所に後見人を決めてもらう制度

 

成年後見制度自体は、ご本人様がお亡くなりになると契約が終了しますので、後見人はあくまで成年被後見人が生きている間の財産や生活の安定を守る制度です。成年被後見人の方がお亡くなりになった後の様々な死後のお手続きや相続について代行する義務や権利は成年後見人にはありませんので注意しましょう。

 

任意後見(任意後見契約)

ご本人様が認知症等の精神疾患を発症し、判断能力が将来、不十分になってしまった際に支援制度を開始させる仕組みが任意後見です。

いま現在の判断能力には全く問題はないけれども、万が一の時のために準備しておきたいという場合にご本人様が、任意後見人として自分の財産や生活を守ってもらいたいという人を選び、その相手と任意後見契約を結ぶことで利用できる制度です。

 

任意後見はご本人様の判断能力が不十分であると医師の判断が下された後に、任意後見の契約によって後見人として契約をした人(任意後見受任者)が家庭裁判所へ「任意後見監督人の選任」を申し立てることで開始されます。

申し立てをし、任意後見が開始されると家庭裁判所が別途定めた「任意後見監督人」という立場の方が、任意後見人は正しく義務を果たしているのかをチェックします。

 

任意後見契約は本人と任意後見人の間で公正証書にて契約書を作成し、契約を結ぶことが必要です。

 

 

法定後見

法定後見制度を利用するということは、既に本人の判断能力が不十分であるという医師の判断がくだっていることが前提です。

判断能力が不十分な方は、原則として契約を結ぶことができませんので、発症後に”任意後見契約”を結ぶことができません。

そのため、法定後見における後見人は家庭裁判所が選任します。

 

法定後見制度の中でも、本人の判断能力のレベルによって後見の種類は「後見」「保佐」「補助」に区別されます。

 

後見 → 判断能力が全くない場合。成年後見人はご本人様(被後見人)に代わって契約を結ぶ「代理権」と呼ばれる権利や、ご本人様(被後見人)が契約したものを無効にする「取消権」を有しています。万が一、被後見人が悪質な詐欺等にあい、契約を結んでしまっても、後見人が取り消すことができます。

 

保佐 → 判断能力が特に不十分とみなされている場合。法律で定められている行為でのみ代理権と取消権を有しています。ご本人様(被保佐人)の同意があれば、法律によって保佐人に認められている代理権と取消権を使うことができる行為を増やすことができます。

 

補助→判断能力が不十分とみなされる場合。原則として補助人には、後見人や保佐人と違って代理権と取消権が認められていません。しかし、ご本人様(被補助人)の同意を得て審判をすることで、補助人が代理権と取消権を有する行為を定めることができます。

 

 

成年後見制度は、判断能力が不十分な方の財産や生活の安定を守るための制度です。あくまでご本人様の資産を維持することを目的としておりますので、資産運用をして財産を増やすといったことはできません。

非常にルールが厳格ですので、財産と生活の安定を守るための制度としてはとても有効ではありますが、「してはいけない事」や「できない事」が多く、柔軟性に欠けることも確かです。

 

ご自身の将来に備えて成年後見制度についてもっと知りたいという方はお早めに信頼できる専門家へご相談されることをオススメいたします。

 

行政書士法人オーシャン
山﨑  亮太郎(やまざき りょうたろう)
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