ライフエンディング業界のトップインタビュー 葬儀とは省略の歴史。限りなくゼロに近づいていく中「遺すべきもの」を提供する

株式会社FUNE(フューネ)
代表取締役 三浦直樹

葬儀社のパイオニア的存在として多くの「日本初」を世の中に送り出してきた株式会社FUNE。業界外の常識を積極的に取り入れたチャレンジと、原点である「花」を強みとして安定した成長を遂げてきた。商店街の小さな花屋から葬儀業界に進出した同社を30歳で継承。現在、直営式場10店舗を展開し、JAや大手互助会、さらに十数社ある専門葬儀社の中で、地場出身の葬儀社として地域に確固たる地盤を築いている。三浦直樹社長にお話を聞いた。

2019年5月28日

インタビュー/小林憲行 文/藤巻史

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お客様の利便性を第一に考えて取り組んだ会館戦略が、躍進のきっかけ

もともとは生花店からスタートしたそうですね

私の曾祖母が始めた花屋が原点です。商店街にある、間口二間くらいの小さな花屋だったんですよ。祖母が二代目となって花屋を継いだのですが、そこに大学生だった父がアルバイトで入ったのが大きな転換点でした。父は、アルバイトをしながら「このまま花屋を生業にしていても、これ以上は成長しないだろう」と家業の行く末を真剣に考えたそうです。そして、生花店の中に葬祭部を設立しました。昭和48年のことです。その後、昭和50年には株式会社ミウラ葬祭センターとして独立。法人化し、トヨタ自動車とその関連会社の社葬を請け負うことで一気に成長を遂げました。

 

トヨタ自動車のお膝元という地の利を生かした戦略が成長につながった?

そうですね。その社葬で得た資金で、三河で当社が初めて取り組んだ会館戦略をはじめました。葬儀会館というものがほとんどない時代に、「お客様の利便性を第一に考えるなら、会館があるべきだ」として取り組んだ父の先見の明だと思います。今思えば、これが当社の躍進の源ですね。

しかし、最初のうち、会館施行率は3%を切っていたんですよ(笑)
「三浦さんはこんなのを造って、きっと潰れる」なんて言われたそうですが、会館施行率が70%を超えるまでが我慢のしどころだと考え、それまでは会館使用料もいただかずにやり続けました。自宅で通夜をした後、「三浦さんが言うから仕方なく」会館で葬儀を行うというお客様が多かったようですね。

会館ができる以前から、地域柄、通夜と葬儀の場所が違うというのはよくあることだったので、違和感なくやっていただけたのかもしれません。通夜も葬儀も一緒に葬儀会館でやるようになったのは、住環境の変化もあって従来の慣習が薄れてきた平成20年頃だったと思います。そのころには当初目指していた通り、施行率は70%に達していました。もちろん当社だけの力ではなく、他社も葬儀会館を建てることで、会館での葬儀が認知されたこともあります。一度「便利だな」と感じていただけたら、また使っていただける。その利便性を地域で最初に提供できたということが、当社にとって最大のアドバンテージだったと思います。

 

業界に風穴をあけたわけですね

葬儀会館の先駆けとして、今に至る流れを牽引してきたと自負しています。

2004年にオープンした一見結婚式場に見えるような邸宅風の「そうそうの森」も、これまでにないコンセプト型葬儀会館として全国からたくさんの方に見学していただきました。そのほかにも、葬儀会社として初めて信託会社と提携して、ローコストでできる葬儀信託をつくったり、路線バスにラッピング広告を出したり、業界が変わるきっかけを作ってきたのではないかと思っています。

 

そうした新しいアイデアを考え付くコツはあるのでしょうか?

世間の常識は、業界の非常識。そして、業界の常識は世間の非常識。そのことに気づいて、積極的に世間の常識を業界内に取り入れているというだけです。

例えば、仏壇店にお孫さんを連れてきてくれた方がいらしたら、お孫さんにたくさんサービスをするというのも1つです。実際、当社の仏壇店には、キャラクターもののグッズや折り紙などがたくさん置いてあります。子どもは仏壇を買いませんが、おじいちゃんおばあちゃんと行ったところが「面白かった」と思えば、「またあそこに行こう」とねだりますから、再来店につながりやすいんです。

こうしたことは他のサービス業では当たり前ですが、葬儀業界や仏壇店ではあまり実行されていません。結婚式のノウハウを葬儀に転換するなど、業界の枠にとらわれなければいくらでも新しい着想が生まれると思います。

ライフエンディング業界のトップインタビュー_FUNE三浦直樹社長

 

ゆりかごから墓場までの間で自分たちにできることを考え、事業化していかなければならない

いま、御社の葬儀で一番力を入れているのはどのようなことですか?

葬儀というのは、省略の歴史なんです。

昔は1年間喪に服していたのが次第に短くなり、2時間くらいかかっていた読経も今ではほんの数分です。これからもこの流れは変わらず、限りなくゼロに近づいていくでしょう。

そうした中で、私たち葬儀社に何ができるかというと、「省略してはいけないもの」の中から自分たちの強みを見つけ出し、ニーズに合わせて提供することではないでしょうか。

家族葬や直葬を選ぶ人が増え、「夜は一切対応しないが、価格は安い」といった極端な方針で参入する新規業者が増えていけばなおさら、「どこにも負けない何か」を1つ持ち続けて強みにすることでしか生き残れません。葬儀社が葬儀だけやっていればいい時代は終わりました。これからは、ゆりかごから墓場までの間で自分たちにできることを考え、事業化していかなければならないと思っています。

 

サービスの質という点も重要になってきますね

本質を求める時代ですから、本業の質をいかに高めるかというのはとても大切です。例えば、うどん屋なのに付け合わせの天ぷらの種類を増やすことなどに終始して、肝心の麺は買ってきたものを使っているというのでは話になりません。うどん屋なら、麺にこだわり、粉をこねるところからやるのが本当です。私たちの場合は、それが人材育成ですね。

当社は派遣社員を使いませんし、外注もしません。人件費をかけて、他社より質の高いサービスを提供することに全力を注いでいます。いま、見積もりに入れているサービス料は7%ですが、いずれは10%まで引き上げても納得してもらえるだけのサービスクオリティを追求したいですね。

 

具体的には他社とどのような違いがあるのでしょうか?

お葬式が終わるまで、というのが一般的なサポート体制だと思いますが、当社は3回忌までお客様に寄り添うということを基本にしています。3回忌までなら、いつでも、何回でも担当者を呼び出していただいて構いません。グリーフケアの観点から言えば期限を決めずに寄り添うべきなのでしょうが、ここは難しいところですね。とにかく、お客様のニーズを汲んで寄り添うことを徹底していれば、会社が廃れることはないでしょう。

 

ご喪家には、葬儀からアフターまで同じ方がずっと担当されるのですか?

基本的にはそうです。

ただ、当社では、ご家族から「この人にお願いしたいです」という指名があった場合、その指名されたスタッフがずっとそのご家族の担当になります。それは葬儀の打ち合わせをした人とは限りません。会館のスタッフかもしれませんし、ほかのスタッフかもしれません。指名をいただいた者が、そのご家族の担当になるのです。

お客様がスタッフに求めるものは一つではありませんから、指名が集まるかどうかは当社のスタンスがどうこうというより、スタッフ個人の魅力でもあります。ですから、お客様に指名された担当者にはその分を給料に反映して還元しています。

今は、見積もりを見比べて、簡単に他社に乗り換えてしまう時代です。そうさせないだけのクオリティを保つ工夫をし、「葬儀はどこに頼んでも同じというわけじゃない」と知っていただける努力をしています。

ライフエンディング業界のトップインタビュー_FUNE三浦直樹社長

 

原点である「花」を強みに、ぶれずに進んでいきたい

人材不足に悩む葬儀会社も多いようですが、どのようにして質の高いサービスを提供できるスタッフを確保しているのでしょうか

人材不足は、創業以来ずっとですから (笑)。人手不足でも成り立つ経営が身についているんでしょうね。スタッフの質については、入社後の研修でできる限りフォローしています。葬儀業界は、20年くらい前からひとつのビジネスとして認められるようになり、大卒の新卒や女性も入ってくるようになりました。

今は高学歴の方も多くて、全体的に知識レベルは上がっています。研修では、ネガティブをポジティブにするために物事を見る枠組みを変えるリフレーミング研修をはじめ、メンタルの強化も図っています。社員にも対してもグリーフケアに通じるような気持ちをもって接するようにしていますね。失敗したら、「失敗するのは悪いことじゃない」ことを伝え、理解してもらった上で、「なぜ失敗したのか」を考えさせ、「どうすれば失敗しないか」へと頭を切り替えてもらうというように、一歩ずつ一緒に歩んでいく意識を持っています。これからの時代のリーダーに求められるのは、支配型のリーダーシップではなくサーバント型リーダーシップ、つまり相手に奉仕し、導くリーダーシップだと言われていますが、まさにその通りですね。

 

組織の在り方も変わってきているのですね

当社も、ずっとピラミッド型の組織を作ってきましたが、時代の変化を受けて変えるべきだと感じるようになりました。先ごろ、組織の形を変える改革を行ったところ、現場の声やお客様の声が届きやすくなり、風通しも良くなったんです。街の葬儀屋さんにあるような、企業でありながら家族的な雰囲気が出てきましたね。これからは、それが大手にはない強みになっていくのではないかと期待しています。

 

今後、業界はどのように変化していくとお考えでしょうか?

今後は「永代供養でお寺さん任せ」「散骨して終わり」といったメンテナンスフリーの供養が増えていくでしょう。だからといって、供養する心が変わるわけではありません。その時々のニーズを正確に汲んで、求められるサービスをしっかり提供していきたいですね。

これからも原点である「花」を大切にし、これを強みにするという信念を貫き、ぶれずに邁進していきたいと思います。

 

ありがとうございました

ライフエンディング業界のトップインタビュー_FUNE三浦直樹社長

三浦直樹

株式会社FUNE(フューネ) 代表取締役
1975年生まれ、愛知県豊田市出身。2000年から大手冠婚葬祭互助会に入社し3年間経験を積んだ後、家業であるミウラ葬祭センター(当時)に入社。29歳の時に父である先代と意見が対立し「そこまで言うなら社長になってから言え」と言われ、「やってやるわ」と返したのが事業承継のきっかけとなり、翌年、代表取締役に就任。「感動葬儀。」をテーマに、業界に先駆けてさまざまな取り組みを続けている。

「ライフエンディング業界のトップインタビュー」は超高齢社会に向けて先進的な取り組みをしている企業のリーダーにインタビューし、これからの我々が来るべき未来にどう対処し、策を練っていくかのヒントを探る企画です。普段は目にすることができないライフエンディングの最先端の場で、どのような取り組みが行われているのか?余すこと無くお届けします。

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