ライフエンディング業界のトップインタビュー 日常の「困った!」に適切なサポートをするのが、葬儀社の役割

株式会社JA東京中央セレモニーセンター
代表取締役 丹野浩成

2000年、親会社である東京中央農業協同組合から出資を受ける形で独立・創業した株式会社JA 東京中央セレモニーセンター。「葬儀は究極のサービス業である」として、お客様からのあらゆる要望に応えるJA の専門家集団だ。全国の葬祭業者の中でもいち早くISO9001 を取得。週刊ダイヤモンドの全国主要葬儀社安心度調査でも連続して全国トップクラスに名を連ねるなど、高品質なサービスに定評がある。 終活セミナーやイベントの開催などの地域活動を展開するだけでなく、デイサービスの運営など、葬儀の枠を超えてサービスを提供し続ける。時代の変化を予期した絶妙な戦略と、柔軟な対応力で同社だけでなくJA葬祭を牽引している。

2018年11月9日

インタビュー/小林憲行 文/藤巻史

そもそも、JAの葬祭事業への取り組みはいつごろから始まったのでしょうか?

JA の「相互扶助の精神」自体は、江戸時代の庶民の隣保組織である「五人組」までさかのぼります。

五人組は、五軒の家を一組として、互いを見張らせたり連帯責任を取らせたりすることを主な目的として定められたものですが、「火事や葬儀のときなどはお互いに助け合う」という相互扶助も目的の一つでした。その延長線上に作られたのが、大正時代の産業組合(現・JA)です。

産業組合では、トラクターやコンバインと同じように、祭壇や葬具を共同購入して共同で利用していました。当時は、儀式そのものは地域の長老が仕切っていたわけですが、次第に葬儀を生業とする一般の業者が出てくるようになり、JA も葬儀のサポートを含めた公的なサービスに着手するようになっていったのです。

丹野社長ご自身はどうして葬儀に取り組まれるようになったのですか?

私はちょうどその過渡期に、葬祭関連の事業部にいました。値引きをしたり、後払いにしたりということもなくすべて現金決済で、できるだけ高い祭壇を選ぶ人が多い時代でしたから、利益率の高い事業だという印象でしたね。太平洋戦争のあとで、死に対する恐れも世の中に色濃く残っていたように思います。

そうした時代背景もあって、葬儀をサービス業として広げていこうという機運も高まっていました。

これからの事業だから、若い人に任せようということだったのでしょう。

しかし、当時のJA は金融、共済が主流で、葬儀はあまり日の当たらない仕事でした。葬儀を仕事にするということ自体への偏見もありましたし、労働時間も不規則でね。家族は心配するし、同僚や先輩からは「本当にやっていけるのか」「行ったら戻ってこれないぞ」などと言われましたよ。

すべてのサービスは、私たちのファンになってもらうためのものです

しかし日の当たらない部署であったのにも関わらず、葬祭業者としていち早くJAから独立されています。

葬儀という仕事は、実際に取り組んでみると、「何もわからなくて不安だった」という方々から、本当に喜んでいただける仕事なんです。私自身も深い感動を覚えました。

そのころは今のような事前相談や下見などもない時代でしたから、すべてその場その場で決めていくというやりがいもありましたね。

そこから、お客様が感動する姿を見て僕自身も感動する、一緒になって感動するというこの仕事にのめりこんで行きました。

今はだいぶ世の中の意識が変わって、新卒向けの会社説明会を開けばたくさんの学生さんが来てくれます。ただ、いつ連絡が来てもいいよう、常に臨戦態勢でいなければなりませんし、亡くなり方もいろいろですから、労働条件を含めて一般企業と同じというわけにはいきません。そういう特殊な仕事であることは確かです。

JAから独立された理由は、どのようなことだったのでしょうか?

1996(平成8) 年の合併と、2000(平成12) 年の法人化、この2つが大きな節目でしたね。

合併ではJA 城西・JA千歳・JA 砧・JA 大田・JA 大森・JA 杉並中野の6 農協が広域合併して東京中央農業協同組合セレモニーセンターを開設し、エリアが拡大しました。また、見積もりや価格表など、ツールを整備したのもこのころです。

法人化することで最も大きく変わったのは、稟議が下りるまでのスピ―ド感です。法人化する以前はたくさんあるJAの部署の中の一つでしたから。何かをやりたいと思っても、話が上に行くまで時間がかかり、やっと稟議が下りたころには機を逸していたということも少なくありませんでした。

その点、法人化後は、お金のことはもちろん、人材採用も、従業員の教育も、良いと思ったことは即断即決ですぐに実行に移せるようになりました。

もちろん責任は伴いますが、アイデアと行動力があればどんどんチャレンジすることができます。

店舗を増やしたり、お寺さんと提携したりといった新しい試みを成功させ、業績を伸ばすことができたのは、やはり法人化の効果ですね。また、その点が他のJA さんと大きく違うところだと思っています。

地域のイベントや葬祭セミナーなどにも、早くから力を入れられています。

セミナーは、「今日はJA さんに行って、いい話を聞いた」と思って帰っていただくために無料で開催しています。私たちのファンになってもらうということですね。

1 回目は地域の葬儀のしきたりなど分かりやすい話から入って、2 回目に認知症になったときの対策として有効な家族信託について、3 回目に自分らしいお葬式について、という具合に順を追って展開していくと、皆さん足を運んでくださいます。

最近では、認知症になる前の予防が大切という話と、なってしまう可能性を考えて成年後見人や家族信託という仕組みについて学んでいこうという話を積極的にしています。

家族信託は信託銀行とは関係なく家族間で信託をしようというもので、もちろん私たちが提供するサービスではありません。それでも、「いいものだから教えてあげたい」という、その気持ちだけでやっています。

セミナー後の茶話会なども含めて、少しずつ地域の人たちと信頼関係を築くことができれば、「何かあったときはJA さんに頼もう」と思ってくださるでしょう。時間はかかりますが、未来に向けた種まきだと思って取り組んでいます。

実際、当社への葬儀依頼のうち一定数は「セミナーで知った」「セミナーが良かったから、ご連絡した」という方からのものです。

葬儀という儀式のサービスに特化していたものを、ライフサポートに変えていく

葬儀という枠にとらわれることなく、広く高齢化社会に向き合っていくということでしょうか?

そうですね。むしろ、これからはそういう姿勢でないと、葬儀も任せてもらえないのではないでしょうか?

地域に選ばれる存在であり続けるためには、有事の際だけでなく、普段からきちんと関係性を築いていくことが大切です。団塊の世代が後期高齢者になる2025 年に向け、「みんなでいろいろ補いながら100 歳まで生きよう」という内閣の方針を、地域の皆さんにどのように訴えていくか?どのようにお困りのことに応えてくのか?というのが、これからの葬儀社のテーマだと考えています。

考え方としては、葬儀という儀式のサービスに特化していたものを、ライフサポートに変えていくということですね。高齢になれば、部屋の片づけやお風呂掃除など、きわめて日常的な活動でも一人ではできなくなる可能性があります。そういう「困った」という場面に必要なサービスを提供していくのが葬儀社の新たな役割になるのではないでしょうか。

介護保険外サービスの拡大も考えていらっしゃるそうですね。

いま、介護保険で提供されるデイサービスはコンビニより多く、基本は昼間に高齢者を預けたり、レクリエーションをしたりする形です。このサービスに救われている人がいる一方、行ってはみたものの「みんなでお歌を歌いましょう」というようなレクリエーションに辟易して足が遠のき、自宅に閉じこもって衰えてしまう人が多いのもまた事実です。

私たちは、「もう一度自分で身の回りのことができるようになりたい」「いつまでも元気でいたい」という目的意識を持つ人のために、地域の人が元気になれるサービスを提供していきたいと考えています。

具体的には、例えば当社では、本社の隣にある施設で、平日は一般的な「共助」にあたるデイサービスを行い、土日は空いたところに「自助」にあたる和太鼓や、スポーツ吹き矢、健康マージャンといったプログラムを、ワンコインで提供しています。

各プログラムを教えるインストラクターも、もちろん地域から担い手を探しています。元気になりたいという高齢者にサービスを提供するとともに、高齢者に働く場を提供するという役割も果たしているんです。

最後に、今後の事業承継などについてはいかがお考えでしょうか?

いま開催している終活セミナーなどは、私がたまたま若いころからこの道一筋で来て、自分自身もこれが天職だと思って邁進してきたからこそできるものだと自負しています。

しかし、なかなかそういう人は少ないですね。創業者と二代目以降の考え方が違うのはよくあることですから、次の社長がまた時代にあった新しい戦略を考えるでしょう。

ただ、地域に根差した企業であり続けること、地域とともにあるという理念を忘れてはならないと思います。

ありがとうございました。

丹野浩成

株式会社JA東京中央セレモニーセンタ― 代表取締役社長
2000年にJA東京中央から独立し、株式会社JA 東京中央セレモニーセンターを設立。葬儀セミナーやイベントなど、地域に根差した活動を展開している。一方で2007年に全国JA 葬祭研究会設立発起人として初代会長に就任。2018 年6 月には同会を全国JA 葬祭経営者研究会に進化させ、これからのJA葬祭の在り方を模索し続けている。

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「ライフエンディング業界のトップインタビュー」は超高齢社会に向けて先進的な取り組みをしている企業のリーダーにインタビューし、これからの我々が来るべき未来にどう対処し、策を練っていくかのヒントを探る企画です。普段は目にすることができないライフエンディングの最先端の場で、どのような取り組みが行われているのか?余すこと無くお届けします。

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