平凡な私に訪れた寝耳に水の熟年離婚

いい葬儀【記事監修】
いい葬儀

記事監修いい葬儀

スマホCTA(電話をかける)

【連載】リアル・シニアライフ
この連載では、シニアライフにまつわる、人間関係、経済問題について、実際の生活者にヒアリングした結果を、個人の事情がわからないよう脚色し、ルポ形式でお伝えします。

Adsense(SYASOH_PJ-195)

好きに生きようと思って。

そう妻に離婚を切り出されたのは昨年の夏、私が70歳になる直前のことでした。
この歳になって今更離婚なんて、と驚きましたが、この歳になったのだからもう好きに生きたいというのが妻の言い分でした。
私としては結婚生活に波風がなかったとは言いませんが、世間様と比べても至って普通だったと思います。クラブに飲みに行くくらいはありましたが、不貞があったわけでもなく金銭トラブルがあったわけでもありません。
まさに寝耳に水の離婚宣告でした。

熟年離婚

何度か話し合いと言えないような話し合いを行いましたが、埒があかず、結婚生活とはどちらか一方の意志だけでは成り立ちませんので私も諦めて離婚することにしました。
私が言うのもおかしな話ですが、もうこんな年齢なんだからわざわざ離婚せずに体裁だけでも夫婦でいれば良いものの、わざわざ離婚したいということはよっぽどの覚悟だったのでしょう。
財産と呼べるほどのものは何もなかったですが、家を私がもらい、預貯金は彼女が持っていくことであっさり決着しました。思えばそれもすべて準備されていたのかもしれません。
子供達はというと、いつかはそうなるのかなーと薄々思っていた、とのことです。
当事者の私が寝耳に水でしたのに、、、子供達がそう感じていたということは、何度か妻からはそのような気配が出ていたのでしょう。そんなことにも気づけない自分が招いた結果とも言えますね。まだ何故か他人事のように感じてしまいます。
私を支え、子供達も立派に育てあげ、私の両親の面倒も良くみてくれた妻には今でも感謝しています。

約半世紀ぶりの独身生活

子供達は既に独立しておりますので、妻が家を出た今、自宅は私独りとなってしまいました。
いささか広すぎますし、今後のことを考えると手放してアパート暮らしをすることも視野に入れています。どうしても家族のことを思い出してしまいますしね。
半世紀ぶりの独身生活はというと、今更ですが、妻のありがたみを身にしみて感じています。
温かい食事が出てくるまでには献立を考え、お財布事情も考えながらスーパーへ行き調理をする。そんな当たり前の過程があって成り立っていたんですよね。
今なら、何が食べたいか聞かれてなんでもいいなんて返答は絶対にしないと断言できます。
正直外で働いている自分の方がすごいことをしていて偉いと思っていましたが、家事をこなし子育てに勤しみ、パートにまで出てくれていた妻のことを思うと感謝しかありません。
正直、一人で暮らし始めた頃はスーパーへ行くことすら抵抗がありました。
ご近所の目も気になりましたし、なによりスーパーへはほとんど行ったことがありませんでしたから。しばらくはコンビニやお弁当屋さんでニ、三人分を買って何食かにわけて食べるという生活でした。一人分だけを買う勇気すらなかったんですよね。
金銭的にもこんな生活を続けていてはさすがにまずいと思い、意を決してスーパーへ行ってみたんです。
恥ずかしながら、初めて行った時には何も買えずに帰ってきました。
もうその時の無力感といったら今でも忘れられません。
とにかく、何がどこにあるかもわかりませんし、自分が何を買えばいいのかもわかりませんでした。
何回か散歩に行くくらいのつもりで店内を回って予行練習をして、やっと買い物ができるようになりました。
落ち着いて見ると、結構私のような年代の男性もひとりで買い物かごを持ってスーパーで買い物しているんですよね。きっとみんながみんな私のような境遇なわけありませんが、私にとってはとても励みになりました。
今では、夕方の安くなる時間帯にマイバッグを持って買い物に行くくらいスーパーへの買い物は慣れたもんです。火曜日は毎週特売日なんですよ。

精一杯の毎日

自分の世話をするだけで精一杯の毎日が続きました。
どこになにがあるかもわからない。食事の準備はしないといけない。掃除もしないと部屋は片付かないんですよね。シーツなんて初めて洗濯しました。
でも、とにかくやらないといけないことが多くて助かりました。
目の前のことを一生懸命やっているだけで忙しかったですから。ひとりでいる寂しさが少し紛れました。意外と家事は向いているのかもしれませんね(笑)
今更後悔してもしきれませんが、妻と暮らしている時にもっと積極的に家事をしておくべきでした。
そんなことをポツリと娘が来た時に言うと、お父さんがするべきだったのは家事じゃなくてお母さんとの会話じゃない?と言われてしまいました。私もまだまだです。

先々の心配と子供達への負担

この歳になってからの独り身はやはりこたえますね。
幸い身体は今の所健康ですが、いつ何が起こるかわからずいつも漠然とした不安があります。
子供達には、一緒にいてくれればまだ安心なものの、離婚したことで心配が増えたと言われてしまいました。
もう子供も独立しているので、正直子供にはあまり関係ないと思っていた私たち夫婦の離婚ですが、いつの間にかこちらが心配されるような年齢になってしまっていたんですね。

普通で真面目な男の平凡な離婚

正直、離婚はなにか大きな問題がある夫婦に訪れるものだと思っていました。
不倫、不貞、嫁姑、お金、モラハラ、DV、義父母の介護。
そんな問題もなく、平々凡々な私たち夫婦にはテレビや雑誌の中の話だと思っていたんです。
人生何があるかわからないものですがまさかこんなことが私の身に降りかかるなんて。
真面目で普通に生活してきたのにどこで間違ってしまったんでしょうか。
妻はこの普通から抜け出したかったのかもしれません。
普通で真面目にしか生きられませんが、私も残りの人生迷惑をかけずに生きていけるようにしたいと思います。

関連記事

シニア婚活。曲げられない自分との闘いとは。
【連載】リアル・シニアライフ この連載では、シニアライフにまつわる、人間関係、経済問題について、実際の生活者にヒアリングした結果を、個人の事情がわからないよう脚色し、ルポ形式でお伝えします。  今回紹介するのは、「シニア婚活」中の米田隆吉(...

https://www.e-sogi.com/magazine/?p=9028死後離婚とは?相続年金はそのまま、姻族を解消する手続き

葬儀・お葬式を地域から探す