【プロが語る!】平成30年度介護保険改正で、福祉用具レンタルはどう変わる?

平成30年4月に改正される「介護保険法」について、検討課題や方針などが、少しずつ、決まり始めましたので、その内容をお知らせします。

今回のテーマは、福祉用具レンタルについて。

数年前からこの話がありましたので、冷静な方と大騒ぎしている方に分かれるようです。

▼介護保険による福祉用具のレンタルについて詳しく知りたい方は、こちらもご覧ください。
姉妹サイト「いい介護」の記事にジャンプします。

【レンタル対象13種目】福祉用具の種類と利用までの流れ - 日刊介護新聞 by いい介護
在宅介護が必要になった時、一番最初に考えられるサポートは福祉用具の利用でしょう。すべての福祉用品を購入するとな
Adsense(SYASOH_PJ-195)

福祉業界の相見積もりに意味はあるか?

平成30年度に大きな制度改正が予想される介護保険について、現在、検討されている大雑把な内容の中から、今回は福祉用具についての議論を紹介したいと思います。

福祉業界では、初回訪問(生活相談員が、初めてご利用者宅を訪問して、契約の話や、初回アセスメントを行なう訪問のこと)の時に、息子さんに「他のデイサービスさんからも、相見積もりを取りますから……」と言われました、というのが「ほのぼのした笑い話」になることがあります。

この辺りが、一般の企業さんと医療介護の企業との違いでもあります。

医療介護の報酬というのは、厚生労働省が上限額を決めているため(その金額も、運営するには、かなり厳しい数字なのですが)、通常はどこの施設さんも上限額目一杯の金額にしていて、どこの施設もほぼ同じ金額になります。

この金額に、多少の余裕があれば、他の施設との差別化をするために、「ご利用金額を下げて……」という戦略も生まれるのですが、毎度の報酬改定で、サービスの基本報酬が下げられているため、上限額目一杯を下げるという空気になりにくくなっています。

時には、例えば競合店が多く、新規のデイサービスを立ち上げたようなところは、戦略的に5%引きなどを一時的に実施しているところを見かけます(ある程度利用者が増えたところで、金額を上限額に戻しているように思いますが……)。

ただ、この5%引きというのは、利用者の自己負担の10%を5%に変更できるわけではありません

介護保険は、9割を公費、1割を自己負担というように負担割合が決まっていますので、この割合を勝手に変えてしまうと、不正請求ということになり、ルールが分かっていないと指導され、事業所の指定取消しに追い込まれます。

仮に、通常1万円の価格のサービスを5%引きで提供するところあがったとします。

%e8%a1%a8

しかし、表のとおり、実際に5%引きでも、自己負担は50円しか変わらないので、なかなか、デイサービスの企業努力が、理解されづらいところがあるように思います。

詳しくは「指定居宅サービス事業者等による介護給付費の割引の取扱いについて」という通知がありますので、詳しく知りたい方はご確認ください。

デイサービスの金額の違いは、主に昼食代やおやつ代といった自己負担の部分になります。また、ほとんどのデイサービスが、当日キャンセルをした場合は、昼食代とおやつ代をキャンセル代として請求しているところが多いと思います。

確認される場合は、このあたりをお尋ねになると良いと思います。

介護保険のサービスで相見積もりを取った方が良いサービスは?

前置きが長くなりましたが、実は介護保険のサービスで、「相見積もり」をとった方が良いサービスがあります。

福祉用具のレンタル、販売です。

福祉用具は、同じ用具であっても、各事業者さんによって、レンタル料金、販売料金が異なります(販売料金が異なるのは、他の企業でも同じですね)。

これは、福祉用具の本体のレンタルの金額の他に、メンテナンス料金、サポート費用などが盛り込まれているためで、各事業者により1ヶ月のレンタル料金が異なります。

ですから、どんなメンテナンスを行なうか?などの具体的な内容を見積もりで確認して、「比較検討してから契約」という流れの方が、皆さん納得されるのではないか?と思います。

ところが、この仕組みが、どうやら、平成30年4月より変わるようです。

つい先日、新聞記事が出ましたので、みなさまもご存知かもしれません。

変更点というのは、事業者の裁量で任されている、レンタル料金を、今後は公定価格を作り、その範囲内でレンタル料金を決める方向で話が進められるようです。

今までは、市場の価格競争を通じて適切な価格による給付がなされるよう、保険給付における公定価格をあえて定めていなかったのですが、今回の改正で、公定価格を作ることになります。

実際に、私も調べてみましたが、各社レンタル料金に幅があり、この金額差を利用者が、日々のメンテナンス費用で実感できるのかな?と思うところはありました。

ただ、ケアマネージャーさんも、ご家族からいろいろと指摘されることを良しとしませんから、ある程度良心的なレンタル料金を提示する事業者や、全国レベルで提供している事業者を選ぶことが多く、正直、以前と比べれば、問題が起こりにくい状況になっているとは思います。

現在、公益財団法人「テクノエイド協会」がインターネット上で平均価格などを検索できるサービスを提供しています(2014年からスタート)。

例えば、ラックヘルスケア株式会社の車いす「レボ」の情報が以下のようになっています。

このサイトの中段に、次のような情報が載っています。

厚生労働省が取り組む福祉用具貸与価格情報公開に基づく価格情報
最頻価格 ¥8,000  表示は、1ヶ月当たりの全国の最頻価格です
平均価格 ¥7,890  表示は、1ヶ月当たりの全国の平均価格です
※「最頻価格」及び「平均価格」は、平成28年8月の介護保険利用分から算出したものです。
※貸与価格の公表に必要な情報は、国民健康保険団体連合会の情報を、国民健康保険中央会において取りまとめたものです。
※貸与価格は同一製品であっても、取り扱う福祉用具貸与事業者のサービス内容(アセスメント、用具の選定、計画書作成、搬出入、モニタリング、メンテナンス、消毒等)に係わる費用によって異なります。

レンタルしたい商品が、どれくらいの平均価格なのかを調べることができます。

私が調べた、大手さんは月8,000円(自己負担800円)で最頻価格でした。

ただし、検索結果のエラーが続き(検索ワードが正しくなかったようです……)、情報まで到達するのに複数回試してみることになりました。

これでは、途中であきらめてしまう人も居るのでは?と思います。

このサイトに、テクノエイド協会から(必ずお読み下さい)という文章があります。

情報公開の背景
この価格情報の公表につきましては、平成25年12月20日、社会保障審議会介護保険部会において取りまとめられた、「介護保険制度の見直しに関する意見」を踏まえて行うものであり、介護保険における貸与価格の適正化に向けた取組の一環として、利用者や家族をはじめとした国民が幅広く活用できるよう貸与価格情報の公表を公益財団法人テクノエイド協会のホームページ上で行うものです。

情報の取扱について
介護保険における福祉用具の貸与及び購入は、市場の価格競争を通じて適切な価格による給付がなされるよう、保険給付における公定価格を定めず、現に要した費用の額により保険給付される仕組みとされています。
従って、貸与価格は同一製品であっても、取り扱う福祉用具貸与事業者のサービス内容(アセスメント、用具の選定、計画書作成、搬出入、モニタリング、メンテナンス、消毒等)によって異なります。
実際の貸与価格に関するお問い合わせは、福祉用具のメーカーではなく、最寄りの福祉用具貸与事業者へお願いします。但し、掲載している全ての福祉用具を最寄りの福祉用具貸与事業者が取り扱っているわけではありませんのでご注意ください。

とのことですので、ご注意下さい。

個人的には、この取り組みは、とても有益だと思います。

もし、ご自身やご家族がレンタルされている福祉用具があるようでしたら、このようなサイトを確認されると良いと思います。

実際に利用者宅に訪問に行くと、使われないレンタル用具が、部屋の隅に置いてあることがあり(使いにくくて……という声が多いように思います)、やはり福祉用具は実際に使われないと全く意味がありませんから、使いにくいところや、細かい希望を担当者に伝えて、器具の変更やレンタル終了をすると良いと思われます。

レンタルの良いところは、器具選定のやり直しがきくところです。

購入では、やり直しがききませんから。

また、福祉用具は、数年ごとに進化していますので、担当者の方に相談をすると、以前には無かった機能などを搭載した新しい用具を紹介してもらえると思います。

この話が正式に決まれば、この幅広いレンタル価格もあと1年半ということになりますね。

今後も、議論の動向に、ご注意下さい。

▼詳しくはこちらもご覧ください

【レンタル対象13種目】福祉用具の種類と利用までの流れ - 日刊介護新聞 by いい介護
在宅介護が必要になった時、一番最初に考えられるサポートは福祉用具の利用でしょう。すべての福祉用品を購入するとな

この記事を書いた人

橋谷創(橋谷社会保険労務士事務所代表、株式会社ヴェリタ/社会保険労務士・介護福祉士)

葬儀・お葬式を地域から探す