家族葬とは、家族や親族、親しい友人など、参列者を限定して行う小規模なお葬式です。家族葬といっても、通夜・葬儀にお坊さんを呼んで読経や戒名をしてもらうならお布施が必要。
この記事では、家族葬における御布施の相場や費用の内訳、渡し方のマナーなどを紹介します。
目次
家族葬でお布施は必要?
そもそもお布施とは
お布施とは、葬儀で読経や戒名授与をしてくれるお坊さんへ感謝を伝えるために渡す金銭。お坊さんへの報酬や給与、対価といった意味はないため、お布施として包む金額には厳密な決まりがありません
お布施の種類 | 意味 |
---|---|
財施 | お坊さんにお金や食べ物、衣服などを渡すこと |
法施 | お釈迦さまの教えを説く説法や、お経をあげること |
無畏施 | 人々の恐怖や不安を取り除き、穏やかな心持ちにすること |
ちなみに、お布施には財施(ざいせ)・法施(ほうせ)・無畏施(むいせ)、3つの種類があります。
通夜・葬儀・法要などでお坊さんが読経するのは法施、教えを説いて遺族の気持ちを穏やかにするのは無畏施にあたります。そして、遺族がお坊さんに宗教的儀式のお礼として金銭を渡すのは財施です。つまり、お布施は「財施」を指す言葉と言えます。
家族葬でも宗教者を呼ぶならお布施が必要
家族葬でも、お坊さんを呼んで通夜や葬儀・告別式をするなら、お布施が必要です。お布施は、宗教的な儀式をしてもらうお坊さんへのお礼を意味するからです。
一方で、家族葬を身内だけで行い、お坊さんを呼ばない場合はお布施は必要ありません。
なお、先祖代々お世話になっている菩提寺がないご家庭は、葬儀社に依頼したり、僧侶手配サービスを利用したりするのが一般的です。菩提寺以外のお坊さんを呼ぶ場合も、お布施の準備が必要になります。

家族葬のお布施は喪主が準備するのが基本
家族葬のお布施は、葬儀を執り行う喪主が準備するのが基本です。ただし、喪主が高齢や未成年で葬儀を執り行うのが難しい場合は、別に施主を立てて施主がお布施の準備をします。
ちなみに、葬儀費用と同様に、故人の資産からお布施を支払うことも可能です。お布施を含めて、通夜や葬儀にかかった費用は相続税控除の対象となるので、金額をメモしておきましょう。なお、初七日以降の法要で渡したお布施は、相続税控除の対象外となるため注意が必要です。
家族葬のお布施の相場金額

弔事 | お布施の金額相場 |
---|---|
葬儀・告別式 | 10万円~50万円 |
四十九日法要 | 3万円〜5万円 |
納骨法要 | 1万円〜5万円 |
新盆・初盆法要 | 3万円~5万円 |
一周忌法要 | 3万円〜5万円 |
三回忌以降 | 1万円〜5万円 |
家族葬のお布施の金額相場は、一般葬のお布施とほとんど差はありません。家族葬でも一般葬と同じ流れで通夜・葬儀が営まれるため、基本的には同じだと考えてよいでしょう。
ちなみに、一般的な葬儀・告別式におけるお布施の金額相場は10万円〜50万円。お布施の相場が幅広いのは、地域や宗派、葬儀形式の違いによってお布施の金額が変わるからです。
また、お布施はお坊さんの宗教的儀式に対するお礼なので、葬儀後の法要でも準備が必要です。あわせて確認しておいてください。
地域によって異なるお布施の相場金額
お布施の相場に幅があるのは、包む金額に地域的な差があるからです。
2024年に鎌倉新書が実施した「第6回お葬式に関する全国調査」によると、お布施の全国平均金額は22.9万円。もっともお布施の相場が高いのは山梨県の48.9万円、もっとも安いのが沖縄県の10.4万円と、最大で約39万円の差が生じています。
地域によってお布施の相場は大きく異なるので、不安な方は葬儀社やお寺に事前に確認しましょう。
宗派によって異なるお布施の相場金額
宗派 | お布施の相場 |
---|---|
浄土宗 | 30万円~50万円 |
日蓮宗 | 30万円~50万円 |
浄土真宗 | 20万円~ |
天台宗 | 40万円~70万円 |
真言宗 | 30万円~70万円 |
臨済宗 | 30万円~50万円 |
曹洞宗 | 30万円~100万円 |
葬儀を執り行う宗派によっても、お布施の相場は異なります。
仏教では死後、お坊さんに戒名をつけていただくのが慣習です。戒名にはランクがあり、高い位の戒名をつけるとお布施が高額になっていきます。浄土真宗では、戒名ではなく、「法名」をつけていただきます。法名にはランクがないため、お布施の相場金額も比較的安価です。
葬儀の形式によって異なるお布施の相場金額
葬儀の形式も、お布施の相場に差が生じる要因の1つです。
参列人数が違うだけで、通夜・葬儀といった流れは変わらない一般葬と家族葬のお布施は金額にほぼ差がありません。一方で、火葬場で読経する火葬式(直葬)や通夜を行わない一日葬だと、お布施の相場が安くなる傾向にあります。
一般葬や家族葬と比較すると、火葬式や一日葬ではお坊さんの宗教的儀式にかかる時間が短いからです。
家族葬でお坊さんに渡すお布施の費用内訳
- 読経へのお礼(読経料)
- 戒名へのお礼(戒名料)
家族葬でお坊さんに渡すお布施は、読経料と戒名料、2つの要素で構成されています。
読経へのお礼(読経料)
読経料とは、家族葬でお経を読み、故人を供養してくれたことに対する謝礼です。読経料は、お経を読んでもらう日数やお坊さんの数、宗派などによって異なります。また、通夜・葬儀の読経や遺体安置後の枕経など、タイミングによっても金額が変わります。
また、菩提寺のお坊さんの他に、脇僧と呼ばれる僧侶が複数名来てお経をあげる地域も。家族葬を依頼したときは、何名のお坊さんが来るか事前に確認しておきましょう。
戒名へのお礼(戒名料)
戒名料とは、故人の死後の名前(=戒名)をつけてもらうための費用。家族葬でも戒名をつけていただくなら、戒名料の準備が必要です。戒名は、浄土真宗では法名、日蓮宗では法号と呼ばれており、菩提寺との関わりや故人の社会的な地位によって付け方が異なります。
また戒名料は、宗派や戒名の位によって戒名料が変動するのが特徴です。戒名の最後に位号(いごう)があり、ランクを示しています。ちなみに、浄土真宗では生前に戒名をつけることが多いため、葬儀で戒名をつける必要はありません。
家族葬でお布施とは別に用意する費用
- 御車代
- 御膳料
家族葬でお坊さんに渡すのは、お布施だけではありません。御車代と御膳料も事前に準備して、お布施と一緒にお坊さんに渡しましょう。
御車代
御車代とは、お坊さんが会場に自家用車や公共交通機関で来たときに、交通費として渡す金銭のこと。喪主側で送迎手段を手配したり、遺族がお寺に出向いて家族葬を行ったりするなら、御車代は不要です。
御車代の相場は5千円〜1万円ですが、お坊さんに遠方から来てもらうときは1万円ほど多く渡す場合もあります。御車代を包む際は、お布施と一緒の封筒ではなく、別の封筒を用意して入れてください。
御膳料
御膳料とは、お坊さんが通夜・葬儀後の会食に参加しない場合、会食代として渡す金銭です。家族葬の後に遺族の意向で会食をしない場合も、御膳料を準備する必要があります。
御膳料の相場は5千円〜2万円ですが、お坊さんが精進落としに参加したり、お弁当を渡したりする場合は、御膳料を渡す必要はないので注意しましょう。
家族葬でお布施を包むときのマナー
- 新札を用意する
- 白無地の封筒を選ぶ
- お札の表側を向けて封筒に入れる
- 奉書紙を用意できる場合は奉書紙でお札を包む
- お布施と御車代、御膳料は別々の封筒に準備する
家族葬のお布施を包むときには、5つのマナーを守るようにしてください。
新札を用意する
お布施に包むお札は、新札を準備します。故人を悼んで渡す香典とは異なり、お布施はお坊さんやお寺へのお礼を意味するため、新札を包むのがマナーです。
お布施として包む金額には、香典のようにダメな金額やお札の枚数はありません。お坊さんが数えやすいよう、キリの良い数字で用意しましょう。
白無地の封筒を選ぶ
お布施を包む封筒は、白無地の封筒を用意しましょう。封筒に郵便番号欄がないことを確認し、厚手でお札が透けない封筒を選ぶようにしてください。
魔除けの意味を持つ水引は基本的に必要ないものの、地域によっては白黒や黄色、銀の水引がついた香典袋(不祝儀袋)を使用します。水引が必要かどうか不安な場合は、事前にお寺や親戚に確認しておくと安心です。
お札の表側を向けて封筒に入れる

お札は、肖像画のある面が表・ない面が裏です。
お布施のお札は、封筒の表側に対してお札の表面を向け、肖像画を上向きにして入れましょう。封筒を開けたとき、お札の肖像画が最初に見えるように入れるのがポイントです。
ちなみに香典を包むときは、故人への追悼を表すために、香典袋の表面に対してお札を裏面・肖像画を下向きに入れます。
奉書紙を用意できる場合は奉書紙でお札を包む

奉書紙(ほうしょし)を事前に準備できる場合は、お布施のお札を奉書紙に包んで渡してください。お札を包む際には、奉書紙のツルツルした面が表になるようにしましょう。
奉書紙は、室町時代には公文書にも使用されていた高級和紙の一種です。大型の文房具店や書道用品を扱う店、デパート、紙の専門店や通信販売などで取り扱っているので、手に入る場合は封筒ではなく、奉書紙にお札を包んでお布施を準備してください。
奉書紙が手に入らない場合は、白無地の封筒にお布施を入れて渡しましょう。
お布施と御車代、御膳料は別々の封筒に準備する
お布施の封筒と御車代、御膳料は別々の封筒に分けて準備します。御車代と御膳料を包む封筒は、お布施と同様に白無地の封筒を使用してください。
読経と戒名への謝礼は宗教的儀式へのお礼を意味するため、お布施として同じ封筒に一緒に包んで問題ありません。お布施と御車代、御膳料を別の封筒に準備したら、お布施の封筒が一番上になるように重ねます。
家族葬で渡すお布施の封筒の書き方

- 濃い墨の筆や筆ペンで表書きと裏書きを記入する
- 表書き:縦書きで「お布施」と記し、喪主の氏名を記載する
- 封筒の裏面:左下に住所・金額を記入する
- 中袋:封筒の表面に金額、裏面に住所・氏名を記入する
家族葬のお布施を入れる封筒の書き方にもマナーがあります。お布施を入れる封筒の表書き・裏書きの4つのポイントを紹介します。
濃い墨の筆や筆ペンで表書きと裏書きを記入する
お布施はお坊さんへの感謝の気持ちを表すため、封筒への記入は濃墨の筆または筆ペンを使用します。香典袋に使う薄墨は、渡す相手に対して哀悼の意を表すときに使用するもので、お布施には適切ではありません。
また、ボールペンや鉛筆を使って記入するのはマナー違反です。必ず濃墨の毛筆か筆ペンを使用して丁寧に記入しましょう。
表書き:縦書きで「お布施」と記し、喪主の氏名を記載する
お布施の封筒の表面には「お布施(御布施)」と縦に記入し、下に名前を記します。名前はフルネームか、家名(◯◯家)と書くのが基本です。すでに「お布施」と書かれている封筒を使用する場合は、名前のみ記入します。
封筒の裏面:左下に住所・金額を記入する
お布施に使用する大字(旧漢数字) | |
一 | 壱 |
二 | 弐 |
三 | 参 |
五 | 伍 |
十 | 拾 |
千 | 阡(仟) |
万 | 萬 |
円 | 圓 |
お布施を入れる封筒裏面の左側下部に、喪主の住所と金額を記入します。
金額の前に「金」と記入し、改ざんを防ぐために大字(旧漢数字)で書いてください。住所や郵便番号については、通常の漢数字を使用しても問題ありません。使用する大字は、事前にしっかりと確認しましょう。
包んだ金額が10万円以上の場合は圓の後に「也」をつけますが、省略もできます。中袋がついている封筒を使ったり、奉書紙を使用してお布施を包んだりするときは、封筒の裏面には何も記入する必要はありません。
中袋:封筒の表面に金額、裏面に住所・氏名を記入する
中袋がついている不祝儀袋や奉書紙を使用する場合は、表面にお布施金額、裏面左側下部に住所・氏名を記入します。表書きや裏書きと同様に、濃墨の筆ペンや毛筆を使用してください。
家族葬でお布施をお坊さんに渡すときのマナー
- 葬儀の開始前か終了後にお布施を渡す
- お布施を渡すときは切手盆か袱紗に乗せる
- お布施と一緒に御車代や御膳料の封筒も渡す
家族葬でお布施を渡すときのマナーを紹介します。
葬儀の開始前か終了後にお布施を渡す
お布施は、葬儀の前後の落ち着いたタイミングでお坊さんに渡します。葬儀中のようにバタバタしたときではなく、お坊さんも遺族も時間に余裕があるタイミングが適しています。
万が一、家族葬当日に渡しそびれたら、後日お寺に出向いてお布施を渡してください。
お布施を渡すときは切手盆か袱紗に乗せる
- 切手盆にお布施を乗せて渡す
- 袱紗にお布施を乗せて渡す
お布施の封筒をお坊さんにそのまま手渡しするのはマナー違反です。そのため、切手盆か袱紗にお布施を載せて、感謝の気持ちを伝えながら、丁寧に渡しましょう。
切手盆にお布施を乗せて渡す
切手盆(きってぼん)とは、冠婚葬祭などで金封を渡す際に用いられるお盆で、祝儀盆とも呼ばれます。切手盆を使用してお布施を渡す際には、以下の手順を守ってください。
- お布施を自分に向けた状態で、切手盆に置く
- お盆の右上を右手で、左上を左手で持つ
- お盆を右回りにまわして、お布施の正面をお坊さんに向ける
- お坊さんに切手盆ごとお布施の封筒を渡す
- お坊さんがお布施を受け取ったのを確認し、切手盆を返されたら盆を受け取る
袱紗にお布施を乗せて渡す
お布施のもう1つの渡し方は、袱紗にお布施を乗せる方法です。お布施の入った封筒や奉書紙は、お坊さんへの敬意を表すために袱紗に入れて持参するのがマナーです。
袱紗からお布施を取り出して渡す際は、以下の手順を守ってください。
- 畳んだ袱紗にお布施が入った封筒を乗せて、お坊さんに差し出す
- お布施が入った封筒が、お坊さんから見て正面に来るように置く
- お坊さんがお布施を受け取ったのを確認したら、袱紗を片付ける
お布施と一緒に御車代や御膳料の封筒も渡す
お布施と一緒に、御車代や御膳料が入った封筒もお坊さんに渡してください。切手盆でお布施を渡す場合も袱紗から渡す場合も、お布施の封筒を一番上に置き、その後に御膳料と御車代が続くように配置します。
家族葬でもお坊さんを呼ぶならお布施の準備を
家族葬でも、お坊さんを呼んで通夜や葬儀を行うなら、お布施を渡さなければなりません。金額や封筒の書き方、渡し方のマナーを理解したうえで、失礼にならないようきちんと準備しておきましょう。
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