献体とは?登録条件と報酬、葬儀の内容を解説

献体の登録方法、報酬
記事を先読み
  • 献体とは死後、解剖学を学ぶための教材として遺体を提供すること
  • 献体は無報酬で自らの遺体を提供するのが基本で、謝礼は発生しない
  • 献体後は遺体を引き渡した後なので、遺体のない中で葬儀を行う

献体とは、死後、遺体を学生が解剖学を学ぶための教材として提供することです。従来の医学科、歯科に加え、近年では作業療法士などを養成する保健学科でも、解剖実習を行うようになってきました。

昔と比べて解剖への忌避感が薄れてきたこともあり、この実習に役立ててもらおうと、献体を希望する人は増えつつあります。その反面、実際の手続きなどについてはあまり知られていないのが現実です。この記事では献体について、申し込み方法から全体の流れまで詳しくご説明します。

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献体とは?何をされる?

公益財団法人日本篤志献体協会HPによると「献体とは、医学・歯学の大学における解剖学の教育・研究に役立たせるため、自分の遺体を無条件・無報酬で提供すること」をいいます。

医学部や歯学部には、人体の構造を学ぶための解剖実習があります。この解剖実習に用いるため、遺体を医学部などに提供し、医学の発展に貢献することが献体の目的です。医師だけでなく、最近では医療スタッフや福祉関連の教育にも、解剖実習を取り入れているところもあるようです。

また、2017年11月には、厚生労働省が、献体された遺体を用いてのサージカルトレーニング(手術の練習)を普及させるため、新たに導入する大学には財政支援をするというニュースも話題になりました。

献体による遺体は余っている?

献体登録数は最近になって増加しています

かつては献体をする人も少なく、身元不明者や引き取り手のない遺体を使って解剖実習を行っていた時期もありました。しかし、現在では献体登録数も増加しています。

一方で、献体登録の多い大学では登録を見合わせているのに対し、登録の少ない大学もあるというように、大学によって登録の状況は異なります。

なお、献体登録については、1983年11月に施行された法律「医学及び歯学の教育のための献体に関する法律」で定められています。

献体をした有名人の例として、夏目漱石が挙げられます。夫人の希望で遺体は大学に渡され、医学の発展に貢献しました。

献体をするには、あらかじめ献体を取り扱っている団体に登録し、死後に遺族から団体へ遺体を渡してくれるよう手配をしておきます。また、登録する団体や大学によって、登録の方法や条件、遺体の処遇について違いはあるようです。

解剖の種類と献体

解剖には大きく分けて、医学の研究のために行われる正常解剖、病気の研究のために行われる病理解剖、事件性のある遺体を解剖する司法解剖、死因がわからないときに行う行政解剖の4つの種類があります。献体された遺体の解剖は、このうちの正常解剖にあたります。

献体の報酬はいくらもらえる?

献体登録をしたり、実際に解剖を受けたとしても、そこで謝礼などが発生することはありません。また、献体登録をしたからといって、それぞれの大学病院などで優先的に入院できるなど、特別扱いをしてもらえるようなこともまずないようです。

というのも、献体は基本的に無報酬で自らの遺体を提供するものだからです。これによって、学生の倫理教育などにも貢献できるといわれています。

献体の火葬の費用は大学が負担。文部科学大臣の感謝状も

しかし、献体となる遺体の大学までの搬送費、ならびに火葬にかかる費用は、大学が負担します。また、遺骨は遺族に返却されますが、引き取り手がいない遺骨は大学が用意した合祀墓や納骨堂に納められます。さらに、遺骨を返却される際に、文部科学大臣感謝状が伝達されます。

献体をする場合の注意点

献体を希望する場合は、いくつかの注意点についてよく考えることが必要です

医学生の教育に役立つ献体ですが、遺族にとってはあらかじめ注意しておいた方がよいこともあります。

遺体がいつ戻るかはわからない

献体をすると当然ながら遺体は提供した大学に搬送されます。解剖が終わった後に遺骨になって帰ってくるわけですが、それがいつになるのかはわかりません。

遺体が医学部側にわたると、長期保存のための処理が施されます。その後解剖実習に回されることになります。解剖が行われ遺骨になるまでには、1~2年、ときには3年以上かかるケースもあるというのが、献体における注意点です。

献体する遺体ははやめに提供

また、献体の場合はできるだけはやめに大学側に遺体を提供することが望まれます。

目安は48時間以内といわれています。このため献体できる大学は近場にある、地元の大学に限られる傾向があります。

献体できない遺体も

臓器提供のためのドナー登録をしている場合、献体できない場合があります。

詳しくは登録先の大学まで問い合わせる必要がありますが、臓器提供と献体の両方に登録している場合はどちらか片方しか実行されません。

また、事故などで亡くなった場合、遺体の損傷によっては献体できない場合も多くあります。

さらに、病気や障害があったり、なんらかの手術をしていたりした場合は、献体の登録をする際に事前に大学との相談が必要になるかもしれません。健康な身体と比較するために問題なく受け入れてもらえることが多いのですが、断られる可能性もあります。

献体をしたら葬儀はどうなる?

献体が決まっている場合、遺体を大学側に引き渡す前に葬儀をするのか、それとも引き渡した後に葬儀を行うのかで葬儀の内容が変わります。

登録者が亡くなった場合には、葬儀を行うかどうかを決定し、登録先の大学に連絡します。

詳細については献体登録先によっても異なりますが、死亡届を出す際には、火葬の日時を未定として、献体に出すということを伝えます。発行された火葬許可証は、登録先の大学関係者に渡します。

献体前の葬儀

献体前に葬儀を行う場合、遺族の元に遺体があります。

この場合はお通夜や葬儀・告別式は通常通り行いますが、葬儀が終わったときには、葬儀場から火葬場へ向けて出棺するのではなく、献体した遺体を保存する場所に向けて出棺することになります。このため、出棺後はそのまま会食に移るか解散するかになります。火葬や骨上げは行われません。

数ヵ月、または数年後に故人が遺骨として帰ってきたら、お墓へ納骨することになります。この場合は納骨のために僧侶等に頼んでお経をあげてもらい、地方の風習や霊園の決まりなどに従って納骨を行います。

献体前の葬儀はかなり慌ただしくなることが予想されます

献体する場合、死後48時間以内に遺体を引き渡すことが望ましいため、かなり慌ただしくなることが予想されます。場合によっては通夜を行わない一日葬を検討する必要があるかもしれませんし、通夜の後、葬儀・告別式を行わずに献体に出すこともあります。

また、葬儀までに日数がかかる場合、大学などで遺体を引き取り、防腐処置を施す場合もあるようです。

献体後の葬儀

献体後に葬儀を行う場合、すでに遺体を引き渡した後なので、遺体のない中で葬儀を執り行うことになります。棺などはなく、祭壇に遺影を添えて焼香や献花などを行い、故人を偲ぶ形式の葬儀となります。

この場合、48時間以内というタイムリミットがなくなるので、葬儀を慌てて行う必要はなくなります。数ヵ月後あるいは数年後に故人が遺骨となって帰ってきたら納骨します。この時に法要を行うことも多いようです。

献体の後、気を付けたいこと

献体前後、どちらの場合もある意味「最後のお別れである」火葬場でのお別れがなくなるという欠点があります。これがないため「しっかりお別れできなかった」と感じる参列者がいる可能性がありますし、喪主や遺族自身もそう感じてしまうかもしれません。

故人の意思を汲んで献体したとはいえ、大切な人が使っていた身体を解剖されてしまうことに拒絶感を覚える人もいるようですし、遺骨が帰ってきてもそれが本当に故人の遺骨なのかどうか疑う人もいます。

献体には故人と遺族、双方のさまざまな思いが絡み合います。本人の意思だけでなく家族、近親者の思いも考慮して決めるようにしましょう。

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