在宅で看取りをするための準備について

在宅での看取りとは、病人を自宅で介護し、親しい家族や親族と一緒に最期を見届けることを指します。各種調査などでは、高齢者の半数以上が「最期は自宅で迎えたい」と回答する結果も出ています。しかし、近年自宅で亡くなる件数は微増しているものの、多くの方が病院で亡くなっているのが実情です。

在宅での看取りは医療体制を整えることが難しく、精神的にも肉体的にも介護する側に負担が掛かってしまいます。家族が在宅死を望んだ場合に希望に応えられるように、ここでは在宅で看取りをするときの準備や心構えについて紹介していきます。

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厚生労働省の調査資料に見る「自宅で最期を迎えたい人」

厚生労働省の「人生の最終段階における医療に関する意識調査」(調査時期:2017年12月5日~12月29日)の中で、人生の最終段階でどのような状況になっているか、その状況ごとに、医療・療養を受けたい場所、最期を過ごしたい場所について調査結果が公表されています。

ぞれぞれの状況によって、「人生の最終段階において、医療・療養を受けたい場所」に対する希望はまちまちですが、「最期を迎えたい場所」はいずれも6割を超えています。

在宅看取りは、家族や親族の理解から

在宅看取りで最も大切なのは、本人と家族が全員「自宅での最期」について理解をし、それを望んでいることです。

具体的には、在宅での医療や介護、現在の病状や今後起こり得る病状の変化についてしっかりと理解する必要があります。

本人の意思であることはもちろん大事なのですが、それ以上に、負担が大きくなる家族全員の同意を得ることが在宅での看取りにおいてはとても重要です。

かかりつけ医とケアマネージャーを明確にする

在宅介護や看取りを希望する場合、在宅医師、訪問介護・看護についてアドバイスをもらえるケアマネジャー(介護支援専門員)が欠かせません。

在宅での介護や看取りを希望する場合、かかりつけの在宅医師と、訪問介護や看取りについてアドバイスをもらえるケアマネージャーが欠かせません。

在宅医師については、往診を行なっており、24時間(夜間や休日を含む)対応している医師を探す必要があります。本人のかかりつけ医がいる場合には、それらの対応が可能か確認してみましょう。

もし対応ができないという場合や、かかりつけ医がいない場合には、地域包括支援センターや市町村の在宅医療相談窓口で相談すると紹介していただけます。

ケアマネージャーは、在宅での看取り経験のある人がおすすめです。こちらも地域包括支援センターや市町村で紹介していただけるので、在宅医と併せて探しましょう。

看取り体制を整える

看取り体制を整えるために、必要なスタッフを手配します。訪問看護師、ヘルパー、必要に応じて医師・薬剤師・管理栄養士などを探しておくと安心です。

かかりつけ在宅医とケアマネージャーが決まったら、看取り体制を整えていきます。本人の意思も汲みながら、どのような療養生活を送りたいか相談していき、必要なスタッフを探して体制を整えます。訪問看護師・訪問ヘルパー、必要に応じて歯科医師や薬剤師・管理栄養士なども探しておくと安心です。

訪問介護は、在宅で看取るためにはとても重要なサービスです。

訪問介護とは、入浴や食事・排泄の介助、医師の指示下での医療処置、医療機器管理、病状の観察、家族への精神的ケアなどを自宅で看護師に行っていただくものです。家族だけでこれらのケアを行なうのはとても大変ですので、自宅で看取る際には訪問介護の利用をおすすめします。

その日を迎えるまで、家族・在宅医・訪問看護師・ケアマネージャーなどで協力して介護をしていきましょう。

死亡前・死亡後の心構え

急な容態の変化が起きる可能性もあります。

在宅での看取りは、家族にも覚悟が必要です。夜中に何度も起きて様子を確認しなくてはいけないこともありますし、急な容態の変化が起きることもあります。大変なことや辛いと感じることがたくさんあると思いますが、できることは事前に準備し本人にしっかりと寄り添っていきましょう。

死亡直前になると、さまざまな変化が訪れます。急に容態が変化するとパニックを起こす可能性もあるので、死亡前に起こり得る状態についてあらかじめ確認しておきましょう。

在宅看取りで起こり得る体調の変化について

  • 声をかけても反応が薄くなる
  • 脈拍がどんどん弱まる
  • 血圧値が低くなる
  • 手足が冷えてくる
  • 冷や汗をかく
  • 顔の血色が悪くなって青紫色に変化する
  • 呼吸をすると喉がゴロゴロ鳴る(死前喘鳴)
  • 排泄の失敗

このような変化が現れるのは、最期が近い状態です。すぐに医師に連絡をし、今までの感謝を伝えるなど後悔のないように寄り添ってください。

看取り後の流れ

死亡している可能性が高いかどうかは、以下のような様子から確認することができます。

  • 胸の動き(呼吸)が止まる
  • 呼んだり体を動かしたりしても反応がなくなる
  • 手足が冷たくなる
  • 皮膚は暗紫色になる
  • 心臓の音や脈がなくなる

家族で看取った後、医師が死亡確認をして死亡診断書を交付します。医師が死に際に間に合わない場合もあるので、その場合は死亡時刻をメモしておいてください。

家族とのお別れが終わった後、訪問看護師もしくは葬儀社がエンゼルケアをします。その後に通夜や葬儀を行います。可能であれば、「自宅での最期」という希望以外にも、葬儀やお墓についての希望も生前に本人と話をしておくとよいでしょう。

亡くなる前に葬儀について考えるのはつらいと思いますが、そのときが近づいてきたら、同時に葬儀の準備も行っておくことをおすすめします。事前に準備をしておけば、看取り後、落ち着いて葬儀を行うことが可能です。事前に葬儀の準備をすることで、看取りをする覚悟ができることもあります。

介護施設での看取りという選択肢

一方で国の定義によると、在宅の看取りの中には介護施設も含まれています。こうした施設であれば医師が勤務しており、病状が急変しても対応することができます。

また、家族の側の負担も大きく減ります。このような介護施設での看取りは現在増加しており、病院での看取りに代わって主流になろうとしています。このことから介護施設でも医療機関との連携や、常駐の医師の配置など、看取りを行うことに積極的になってきています。

今では年中無休、24時間対応で在宅医療を行う病院や、住み慣れた環境で平穏に最期を迎えるまで寄りそうための「看取り介護」という介護の形も注目を浴びています。

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