【プロが語る!】民間保険会社の民間介護保険について

今回も、平成30年4月に改正される「介護保険法」のお話ししたいと思います。

2016年8月6日の読売新聞に、「社会保障給付 最高112兆円14年度」という記事が載っていました。

医療が36兆3257億円(前年度比2%増)、介護が9兆1896円(同4.6%)だった。介護の伸びが大きかったのは、介護の受ける人の増加や、14年度の介護報酬引き上げが影響したという

このように、うなぎ登りに上がっていく社会保障給付を、今後どのように緩やかなカーブに変えていくのか?介護保険制度を維持するために、どのような改革が必要なのか?という議論がされています。

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どの様な検討がなされているか?

現在、検討されている大雑把な内容としては、次の3つです。

  1. 軽度者向け居宅サービス(在宅サービス)は地域支援事業へ移行する
  2. 軽度者の生活援助、福祉用具、住宅改修は原則自費となる
  3. 2割負担の対象者を拡大する

ここで議論される軽度者は要支援1・2だけではなく、要介護1・2も含まれています。

もし、これが本決まりとなると、現在618万人の認定者のうち、2/3の400万人の方々が地域支援事業に移行するという、前代未聞な話になっています。

実際には、軽度者の全サービスがいきなり地域支援事業に移行するとは考えにくいですから、今後移行するサービスを選定しながら、徐々に進んでいくと思います。

とはいえ、公的な介護保険が、対象者を限定することになると、その分、利用者の自己負担の金額が上がっていくことは間違い有りません。

介護保険でさえ、③のように2割負担者を増やそうとしていますから、地域支援事業でもその流れを阻むことは難しいと思います。

「現物給付型の民間介護保険」について

また、ここ数年、民間介護保険のサービスの提供方法について変化が見られます。「現物給付型の民間介護保険」の検討です。

平成24年6月から金融庁で「保険商品・サービス提供等の在り方に関するワーキング・グループ」の会合が開かれました。この会合の第16回 平成25年6月7日(金)の資料の4ページに、

「他方、保険会社が特定の財・サービスを提供する提携先の事業者(以下「提携事業者」という。)を顧客に紹介し、顧客が提携事業者からの財・サービスの購入を希望した場合に、保険金を受取人ではなく当該事業者に対してその代金として支払うこと(以下「直接支払いサービス」という。)については、法令上、特段禁止されておらず、当該サービスによっても、上記ニーズに一定程度応えることができると考えられる」

とあります。

結論としては、「生命保険契約等における現物給付の解禁については、引き続き、将来の検討課題とすることが妥当である」と結んでいるのですが、現行でも上記の様に「保険会社が直接現物サービスを提供しない」という条件で、事実上現物給付が解禁されることになっています。

ちょっとわかりにくいですよね。

これは、民間保険会社と保険契約者は、通常「金銭給付」のやりとりしか認められていません(直接サービスや物品を提供することは禁じられています)。

しかし、保険会社と保険契約者の間に、他の特定の財・サービス提供する提携先の事業者(以下、提携事業者)を挟んで、保険契約者が提携事業者からサービスを受けることを希望した場合、保険金を受取人ではなく、提携事業者に対して代金を払うこと(これを「直接支払いサービス」と言う)ことは、現在の法律を変えなくても、実施可能ということを確認したわけです。

ということは、今後民間介護保険の保険料を払い、保険会社の支給決定がされると、金銭給付を受ける代わりに、提携事業者Aからデイサービス、ホームヘルプサービスを利用したり、提携事業者Bの有料老人ホームに入居できたり、もしかしたら提携事業者Cの介護用品のレンタルなども可能になるかもしれません(その民間保険会社の保険商品のアイデアによります)。

ここ数年、大手の介護チェーンが、保険会社のグループ傘下に入り、社名が変っていますが、将来を見越して、着々と準備を進めているように感じます。

今後は、金銭給付の他に、上記の現物給付のようなサービスが受けられるとなれば、介護保険の対象者を重度者に限定することによって制度から漏れてしまう軽度者の方々の受け入れ先の1つになるのではと期待されます。軽度者は、地域支援事業と民間介護保険のサービスで、対応することになるでしょう。

ただ、現時点で、民間保険会社は、支給決定の条件が独自基準ですし、サービス内容も異なりますので、今後は、どこの保険に加入すると、より自分のニーズを満たすのか?という、悩ましい問題も生まれることになると思います。

今後、議論の方向性によっては、この民間介護保険をより活用することになるかもしれません。介護保険部会の議論に注目しましょう。

この記事を書いた人

橋谷創(橋谷社会保険労務士事務所代表、株式会社ヴェリタ/社会保険労務士・介護福祉士)

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