東京・世田谷区から、地域と社会福祉法人とが一体になって生まれた、新食感のお菓子が登場しました。
その名も「HOROHORO(ホロホロ)」。
スペインの伝統的な焼き菓子をヒントに生まれたこのお菓子。口どけが良くて、小さな子どもから高齢者まで、美味しくいただけます。
ちょっと上品で、食べやすくて、美味しくて。
そう、返礼品にもピッタリです。
オリジナルのパッケージや、オリジナルメッセージカードなども自由に組み合わせることができて、冠婚葬祭はもちろん、いろんな場面で活用できます。
今回はそんなホロホロをご紹介。
作っているところも見学させていただきました。
ホロホロってどんなお菓子?
「口の中にある間に、3回『ポロボロン』というと幸せが訪れる」言われるくらい口どけの良い、スペインの焼き菓子「ポルボローネ」をヒントに生まれました。
その口どけはもちろん、ホロホロにもしっかり受け継がれています。
味は全部で6種類。
素材感を楽しむことにもこだわっていて、例えば、カボチャ味にはかぼちゃのタネが入っていたり、ショコラ味にはクラッシュしたアーモンドが入っていたり。
生地にも織り込むし、外側もパウダーをまぶしています。
ホロホロの生みの親は、地域デザインブランドfutacolab(フタコラボ)。
作っているのは、世田谷区の等々力にある社会就労センター パイ焼き窯の利用者さんたちです。
パイ焼き窯は、障がい者が障害とうまく付き合いながら社会人として暮らしていくためのサポートを行っている施設です。
ワンランク上の返礼品に
近年では、お葬式に集まる会葬者の数も減っている反面、故人との関係が深かった相手だからこそ、お料理や返礼品などはありきたりのものではなく、その人らしいものを用意して、おもてなししたいという方もいます。
そのため、これまで返礼品と言えばお茶や海苔などが定番でしたが、最近は人気店のスイーツを選んだりする人も増えてきています。
ホロホロはそうしたお葬式の返礼品や法事、法要のお返しなどにもおすすめです。
パッケージもオリジナル!
ホロホロがこだわりの返礼品にぴったりな理由はもう一つ、パッケージにもあります。
手作りの少量生産だからこそ、パッケージも希望に合わせてカスタマイズできます。
障がい者が描いたイラストをモチーフに、プロのデザイナーがデザインしたパッケージが幾種類もありますし、手作りのメッセージカードもそろっています。
好みに合わせて組み合わせれば、オリジナルの返礼品が簡単に用意できます。
カードに遺族からのメッセージを添えれば、会葬礼状の代わりにも。“その人らしいお葬式”にもぴったりです。
障がい者が経済的に自立するために
ホロホロの生みの親、フタコラボの磯村歩さんはもともとフィルム会社でユニバーサルデザインを担当するデザイナーでした。
この時出会った障がい者の方々が、その後の人生を変えていきます。
例えば視覚障害のある方たちが、使い捨てカメラを目の見える人とのコミュニケーションツールとして活用していたり、聴覚に障害のある方が窓ガラス越しに手話で会話をするのを見たりする中で、「何かに気付かされた」といいます。
その時から、「ケアするのではなくて気付きをデザインに生かすと、きっと面白いことが起こる」とずっと考えていました。海外で障がい者と共に暮らしたり、さまざまな経験を積んで生まれたのが、地域デザインブランドのフタコラボです。
今、障がい者が経済的に自立できるためには、年金のほかに月5万円の収入が必要と言われています。それに対して、実際の収入は平均で1万4千円くらい。まだまだ自立には程遠いのが現状です。
障がい者が収入を得るためには、福祉作業所で作った商品が売れて、利益が上がらなければなりません。
しかし、福祉のプロは、商品開発や販促のプロではありません。
素人が一般企業の商品と闘っていかなくてはならないのです。
そのため価格競争に陥ってしまったり、中にはせっかく作った商品を、利益0円で販売しているところもあります。
手作りで、少ししか作れなくて、地域のバザーくらいしか販路がない……。
そんな福祉作業所が抱えているマイナス要因を、磯村さんは反対に、「手作りで少量生産だからこそお客さんに合わせてカスタマイズできる。地域密着の販路がある」とポジティブにとらえることで、可能性は一気に広がると考えました。
そんな磯村さんの想いにパートナーとして協力してくれるパイ焼き窯との出会いで、今のホロホロが生まれました。
ホロホロの作り方
ホロホロはパイ焼き窯の利用者さんたちが、全部手作りで作っていきます。
1日に作れるのは最大で1,700粒くらい。
朝から作業を始めて、生地を寝かせたり凍らせたり、夕方までかかります。
まず、材料を用意します。
国産の小麦やフランス産の塩など、一つひとつ良質の材料にこだわっています。6つの味ごとに材料も分量も変わってきますので、シートを確認しながらそろえていきます。
バターやお砂糖などをミキサーで混ぜます。
夏は大きく、冬は小さく。混ざりやすいように季節に合わせてバターの大きさも調整してカットします。
アーモンドパウダーなどを入れながらヘラでこねます。
パウダーの加え方など、コツも一つひとつ決めて、ルールにして共有していきます。
生地ができたら型にはめて、そこから1時間から1時間半、冷蔵庫に入れます。
固まったものを今度は、1粒が6グラムになるようにカットして、冷凍庫に入れます。
一粒ずつ計量して、決められた重さに満たないものは商品としては売れません。
失敗作が少なければ「やったー」と喜びますし、時にはパーフェクトの日もあります。
全部の粒が合格というのは、作っている利用者さんが、精神的にも落ち着いていなければなかなかできません。それだけに、達成感もとても大きいのです。
形が四角いので焼くときに倒れてしまって商品にならないものもありますが、それもやっているうちに「これは商品にはならない」とか、利用者さんからも「こっちのほうがやりやすい」というように意見が出たり、職員が何か指示をしなくても作っている利用者さんたち自身で気が付いてくれるようになったそうです。
最初から最後まで作れる人もいれば、生地は作れるけれど型にはめてカットするのは苦手とか、人によって得意不得意もあります。その辺も状況に合わせて「○○さんはカットが得意だからお願いします」とか、分業もできるようになりました。
いかがでしたか?
世田谷区の等々力から生まれた焼き菓子、ホロホロ。
ある遺族は、お葬式の返礼品にホロホロと、故人が生前趣味で描いた絵を印刷したメモリアルカードを添えて会葬者にお渡ししたところ、とても喜ばれたそうです(カードももちろん、フタコラボと福祉作業所の手作り)。
また、返礼品以外にも会館のおもてなし用のお菓子として採用してくれる葬儀社も現れたり、ホロホロの輪も少しずつ広がっています。
その人らしいお別れが、障がい者の自立にもつながる。
食べると心もちょっとあったまるのも、ホロホロの魅力です。
(小林憲行)