【プロが語る!】地域包括ケアシステムとは?

今回は、新聞TVなどでよく取り上げられている「地域包括ケアシステム」についてお話ししたいと思います。

介護保険が2000年から始まって、15年が過ぎました。この期間に、介護保険も大きく変っています。特に、対象者やサービスについては、いろいろと議論されています。

福祉の世界では、「困った人達全てを助けたい!」という気持ちはあります。

しかし、現実には資源(人的、サービス提供場所、金銭など)に限りがあるため、福祉サービスを受ける対象者を限定することで、成り立っているところがあります。

それ以外は、サービスがまだ存在しないか、ボランティアが頑張っている状態でしょうか。

どのように限定するかというと、困っている人達の、そのお困り具合を確認して、客観的に支援するかどうかを決めるのです。

介護保険であれば、「要介護度・要支援度」を決める介護認定が、お困り具合を判断する指標の1つになります。

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介護認定を受けるには?

要介護度・要支援度を判断するときは、全国統一の基準に基づいて、

1)市区町村のケアマネさんが自宅訪問して、申請者の話を聞く
2)医者が申請者を診察をして、介護が必要かどうかの主治医意見書を提出する
3)介護認定審査会で、1)・2)の内容を審査する
4)市区町村が要介護度を認定して、保険証に記載する

という形になります。

介護保険では、この認定を受けられている方が、全国で618.6万人(平成28年2月)となっています。これは、65歳以上の第1号高齢者3375万人の17.9%です。
対象者を限定することで、介護保険の財源を必要な人に提供できるようになります。

▼介護認定について詳しく知りたい方はこちらもご覧ください

要介護認定とは|申請方法と手続きの流れ、必要な書類について - 日刊介護新聞 by いい介護
実際に介護を受けようと思ったら介護認定を受けなければいけません。介護認定は誰が申請するのか、どんな書類が必要な

ところが、ここ15年で、当初の予定よりも、介護保険の支出である保険給付費が増え続け、このままでは制度自体がなりたたなくなる! ということが心配され、ここ数年、「対象者を減らそう」「今まで提供していたサービスを他に振り替えよう」「代替案はあるか、ないか?」ということが、継続的に議論されています。

その中から生まれた1つの考え方が、この「地域包括ケアシステム」となります。

2025年までに、できる限り、住み慣れた地域で自宅での生活を続けられるように、中学校区を1つの生活範囲として、自宅でのケアを支援する拠点を複数作り、「医療・介護・介護予防・生活支援・住まい」の5つのサービスを、一体的に受けられるような体制を作っていくという考え方です。

これにより、今後増加する認知症の人達も、施設ではなく、自宅でケアをするという流れが作れるのでは?と期待されています。

街中の介護拠点

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このシステムを作るのが市区町村、コーディネートするのが、地域包括支援センターの職員やケアマネジャーになります。

この拠点の1つとして紹介されているのが、メディカルモールのような形で、福祉サービス事業者を集め、例えば1Fにデイサービス、2Fに訪問看護ステーション、訪問介護ステーション、ケアマネ事業所、3F以降は高齢者専用の賃貸住宅として整備し、近隣のクリニックと医療連携がとれる体制を構築した拠点になります(もしくは近隣の介護事業者と業務提携をして、サービスを相互に提供できるようにします)。

このように整備をすると、街の中に施設のような機能をもった、介護の拠点が生まれます。

バラバラに存在している資源を集中させることで、利用者は相談先を探すストレスが減り、介護職員がご自宅への訪問も行きやすくなり、自宅に住みながらさまざまなサービスを受けることが可能になります。

中学校区であれば、片道30分程度の距離になりますので、1日数回の巡回型訪問もより使いやすくなります。

また、今後増加する独居世帯へのケアをどうするのか?についても、もしこの拠点の3F以降に引越が可能であれば、安心して地域で暮らし続けることができます。

このようなケアが行なえると、自宅ケアから施設ケア(特別養護老人ホーム、老人保健施設、有料老人ホーム等)に移行する時期を、遅らせることが可能になります。もしくは、自宅で最後の日を迎えるという選択肢が増えるかもしれません。

▼地域包括ケアシステムについて詳しく知りたい方はこちらもご覧ください

地域包括ケアシステムとは?|その定義と4つの課題【取り組み事例あり】 - 日刊介護新聞 by いい介護
住み慣れた地域でいつまでも自立した生活が送れるように、地域の包括的な支援やサービス体勢の構築を進める仕組みのこ

住みやすい地域をどうやって作っていくか?

15年かけて、作り上げてきた介護保険制度を、この「地域包括ケアシステム」を通して再整備し、新たに「選択と集中」を行うことで、さらに制度を発展させていくことができます。

一方、資源を集中させすぎると良いことばかりでもなく、実質的な「利用者の囲い込み」となって、サービスの選択がしにくくなる、さまざまなアイデアをケアに活かしている、面白くて優秀な小規模事業所が、単独では存在しにくくなり、連携を取らないと、サービスが提供しにくくなることが予想されます。

とはいえ、居住する地域によって、さまざまな事情がありますから(都市部や地方の違いも大きいでしょう)、市区町村が中心となり、地域の実情に合ったシステムを、それぞれの市区町村で構築することになります。

その内容によっては、新たな「介護の地域格差」を生み出すかもしれませんが、お互いを支え合いながら、住みやすい地域を、どのようなアイデアで構築していくか?という、街作り、福祉作りの面白さが味わえるのではないか?と思います。

ぜひ、みなさんの地域の介護について、考えてみてください。

この記事を書いた人

橋谷創(橋谷社会保険労務士事務所代表、株式会社ヴェリタ/社会保険労務士・介護福祉士)

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