前回から著名・有名人の葬送スタイルから学べるエピソードについてご紹介しております。
今回は女優の田中好子さんです。
元キャンディーズの「スーちゃん」として一世を風靡、その後、女優の道に進み、平成元年に主演した映画『黒い雨』で数々の主演女優賞を受賞されました。
私は光栄にも式典の司会進行をつとめさせていただきましたが、実は出棺前に流れた田中好子さんの肉声テープは私たち式典運営側の関係者にもその存在を知らされていませんでした。
進行を仰せつかった私へは、喪主をつとめたご主人から「私の挨拶のあと、すぐに閉式のコメントを入れず少し間を取ってください」とお話をいただいていただけでした。
田中さんが大切にされた感謝の気持ち
肉声テープが放送されることを知っていたのは、ごく限られたお身内だけだったのです。まさに田中好子さんから、ファンやご友人、業界関係者への感謝のサプライズでした。
そこには、田中さんが常に大切にされてきた「多くの人に感謝の気持ちを伝えたい」という強い想いがあったのだと拝察します。
有名・著名人を葬送する式典の場合、通常は身内だけの密葬を経て数週間の時間を置き、準備を整えてから本葬(お別れの会)という流れで運営されます。
密葬を行うことでご遺族がゆっくり故人とお別れができるためです。
また、著名な方の場合、参列者数が数千名という規模も珍しくないため、業界関係者への対応や式典の席次などの決定に時間を要することから後日改めて本葬(お別れに会)にするケースが多いのです。
ところが、田中さんはファンの方々も一緒にお見送りをして頂けるよう、密葬形式にせず、多くの方に見守られる中、通夜、告別式を行うことを生前から強く希望されていました。
素敵なお別れを実現させた「もしもの時の事前準備」
そこで、著名・有名人から学ぶ葬送スタイル、今回は「事前相談と準備」です。
田中好子さんの葬儀が多くの人の心に感銘を与え、田中さん自身のご希望が叶った式典になったのは、ガン闘病と同時進行で進められた「もしもの時の事前準備」にありました。
闘病時より、ご家族のサポートを受けながら自ら最期の事前相談を重ねていらしたのです。
参列されたVIPの方々、ファンの方々、ご友人、関係者の皆さんが静かに別れの時を過ごせるよう生前から心配りをされてきたと思うと今も胸が熱くなります。
テープで流れた肉声コメントは皆さんへの感謝の言葉で溢れていました。
最期までご自身と向き合い、しなやかに生涯を全うされた田中好子さん。
本当に美しい方でした。