「親が亡くなったときの話」というのは縁起が悪い話題なので、家庭によっては避けているかもしれません。しかし、葬儀の事前準備や当日対応など、親が亡くなった後はさまざまな対応により息をつく暇もないほど忙しくなります。
いざというときにスムーズに動くためにも、きょうだいがいる場合は「誰が葬儀費用を払うのか」を話し合っておくことが大切です。
ここでは事前に話し合っておくべき内容と、親の葬儀費用と香典の扱いについて解説します。
目次
親の葬儀費用は誰が負担する?
親の葬儀を執り行うにあたって、避けては通れないのが葬儀費用の問題です。
親が亡くなったときの葬儀費用を「この人が負担しなくてはいけない」と定めた法律や明確なルールはありません。
喪主が支払うケースが多い
葬儀費用は、一般的に喪主が負担するケースが多いようです。喪主は葬儀を取り仕切るという立場上、費用についても把握しており、そのため喪主が費用を負担するという考え方が主流です。
一般的には喪主が負担するため、親の配偶者や子どもたちの中で喪主となった人が負担しますが、家庭の経済状況はさまざまです。全員で分担して負担する場合や親の遺産で賄う場合もあります。
兄弟で親の葬儀費用を話し合っておく
子どもが複数いる場合、事前に葬儀費用の負担について話し合っておくべきでしょう。
しばしば問題になるのは、喪主はきょうだいで葬儀費用を折半したいと希望するのに対し、喪主以外はそれに応じないといったケースです。
きょうだいとはいえ、それぞれ事情は異なります。さらに遺産の配分なども絡むため、何をもって平等とするのか、悩ましい問題です。金銭の話し合いは揉め事になりやすいので、話し合いで全員が納得できることが好ましいです。各自の経済状況を把握してから負担する割合を話し合いましょう。
一方で、子どもたちだけで葬儀費用を負担することが困難な場合は、親せきを頼ることになります。しかし、親族間でも葬儀費用と埋葬費用の負担を争って裁判まで発展した事例もあります。どのような結果になったとしても、親せき付き合いが冷え込む可能性もあるので注意が必要です。
遺言書に記載されている場合
生前に故人との間に葬儀費用に関するお互いの同意があり、それが遺言書に残されていた場合は、遺言書に従って葬儀費用を支払います。
一般的に故人の財産を相続した人が、葬儀費用を負担するということで合意するケースが多いようです。
相続人が複数の場合は、金銭の配分と合わせて葬儀費用の配分も触れられていることが多いようです。故人が生前にトラブルを避けるために準備しておくことも。
また、故人が生前死後事務委任契約などを行っている場合があります。これは、亡くなった後に必要な手続きを代理人が行うというものです。
親の葬儀にかかる費用はどのくらい?
まず、葬儀にはどのくらいの料金がかかるのか、調査データをもとに見ていきましょう。
第4回お葬式に関する全国調査(2020年/鎌倉新書)より葬儀の種類別に見た葬儀費用の平均については上記のとおりです。葬儀の種類によって葬儀にかかる費用は大きく異なります。いずれにしても大きい金額であることは間違いないため、支払える目処がついてから引き受けるようにします。
さらに葬儀場の広さやプランの内容によっても費用が変わるため、あくまで相場は参考程度に考えましょう。
親の葬儀の香典は誰がもらう?
また、費用の負担だけではなく、香典の扱いについても話し合っておく必要があります。
香典は喪主が受け取るのが一般的ですが、例えば、「葬儀費用はきょうだいで分担したのに、香典は喪主が受け取った」といったことがトラブルにつながる場合もあります。
さらに、香典の額が葬儀費用を上回った場合、どうするのかといったケースもあります。ここで悩ましいのは、親の死によってかかる費用は葬儀だけではないという点です。葬儀費用ということだけであれば、香典が葬儀費用を上回れば利益と感じますが、その後の法事・法要やお墓にかかる費用、墓地の管理費などを誰がどのように負担していくのかといったことまで考える必要があります。
とはいえ、トラブルを避けるために香典を辞退するというのも短絡的です。香典があろうがなかろうが、将来的な費用負担については、いずれにしてもきょうだい間で決めなければならない問題だからです。
親の葬儀に香典は持参する?
両親が亡くなったときは、結論としては基本的に香典を出す必要はありません。喪主として葬儀を執り行う場合は香典をもらう立場にあります。
そうはいっても、用事などのなんらかの理由で葬儀に出られない場合や、手伝いができない場合は、香典を出したほうが無難です。また、葬儀費用を負担しないときや、親族間で取り決めなどがあれば渡す場合もあるでしょう。
もしくは、未成年や失業中などの理由があれば、無理に香典を出す必要はありません。
親の葬儀費用をおさえるための方法は?
一般的な葬儀を執り行うのであれば、数十万から100万円程度は必要になります。決して安いものではないので、なるべく金銭的な負担を軽減したいと考える人も多いでしょう。ここでは葬儀費用をできるだけおさえる方法を紹介します。
葬祭費の補助・扶助制度
葬儀が終わった後、特定の手続きをすることで各保険や組合から葬祭費用の給付金がもらえる制度です。例えば、健康保険に加入している場合は、加入者本人または被扶養者に対して上限を5万円として給付されます。申請時期が設定されているので、事前に確認しておきましょう。
葬儀保険への加入
加入できる年齢に制限を設けている葬儀保険や、保険の適用まで一定の期間が必要になる保険もあるので、各保険のホームページや資料で保険が利用できる条件をチェックしておきましょう。親が保険に入っている場合は、その保険の特約も確認しておくことをおすすめします。
葬祭扶助制度
この制度は生活保護を受けていて葬儀費用の捻出ができない場合に活用できる制度です。支給額は地域によって変わるので、住んでいる地域の市役所に問い合わせてください。また、この制度は葬儀後に申請することはできないので、葬儀前に対応しましょう。
親の葬儀費用の支払いを円満に解決するには
葬儀にかかる費用は決して少額ではなく、両親の生前に十分な話し合いが行われていなかった場合、葬儀費用の負担先をめぐってトラブルになる可能性があります。できるだけ円満に解決するには、やはり親が生きているうちに葬儀に関する話し合いを終わらせておくことが一番です。特に香典は葬儀後にトラブルになるケースも多いので、扱いについて決めておくようにしましょう。
実際に葬儀の事前相談を行うなど、葬儀費用がどの程度かかるのか見積もりをもらってみるのもひとつの方法です。