ご家族を亡くしてすぐ…というときには、動転して気持ちが不安定になるものです。そんなときでも葬儀や火葬の手配はしなければなりません。しかし、どの葬儀場を利用すれば良いかわからず慌てて葬儀場を決めてしまい、後悔したという方も多いようです。
葬儀場にはいくつか種類があり、それぞれメリット・デメリットがあります。日頃から葬儀場の種類を理解しておくと、いざという時でも安心です。
今回は葬儀場の種類、選び方のポイントなどについて解説します。元葬儀場の人が教える葬儀場を選ぶ上での考え方も紹介。納得できる葬儀場選びの参考になれば幸いです。
葬儀場(斎場)の特徴とメリット・デメリット
葬儀場は大きく8つに分類することができ、それぞれ料金、設備面などに違いがあります。それぞれのメリット・デメリット把握して、適した葬儀場を検討しましょう。
公営斎場のメリット・デメリット
メリット
- 民営斎場に比べて料金が安い
- 火葬場併設の場合、霊柩車の手配が不要
- 宗教宗派が不問
デメリット
- 利用希望者が多く、予約が取りづらい
- 音響や演出の制限がある
民営斎場のメリット・デメリット
メリット
- 公営斎場と比べると設備が充実している葬儀場が多い
- 祭壇や装飾などの演出に柔軟に対応してもらえる
デメリット
- 公営斎場より料金が高い
- 設備環境は斎場によって差がある
寺院・教会のメリット・デメリット
メリット
- 自宅近くの菩提寺であれば、近所の人が参列しやすい
- 寺院や教会ならではの荘厳な雰囲気で葬儀ができる
デメリット
- 宗教宗派が限られるたため、利用できる人に制限がある
- 葬儀を行うための場ではないので設備面での利便性は低い
自宅のメリット・デメリット
メリット
- 利用料金がかからない
- 時間的制約を受けない
- 「自宅で家族に見送られたい」という故人の希望を叶えられる
デメリット
- 葬儀ができる環境が整わないと葬儀ができない
- 葬儀業者の出入りにより近隣の人々に迷惑がかかる可能性がある
ホテルのメリット・デメリット
メリット
- 宿泊設備やサービスが充実している
- 交通アクセスが良く、参列者が来場しやすい場合が多い
デメリット
- 火葬後でないと利用できない
- 線香を炊いたり焼香ができない場合が多い
集会所・公共施設のメリット・デメリット
メリット
- 利用料金が公営斎場より安い場合が多い
- 近所の方が参列しやすい
デメリット
- 葬儀場としての設備が不十分なことが多い
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葬儀場(斎場)の種類
次に、それぞれの施設について詳しく解説していきます。一般的に、公営斎場か民営斎場を利用する場合が多いですが、寺院、ホテルなどでも葬儀を行うこともできます。
公営斎場
公営斎場とは、市区町村などの自治体やいくつかの自治体が共同で運営する施設のこと。「○○市斎場」のように運営元の自治体名がついている斎場が多いです。
喪主か故人が運営市区町村の住民であれば、民営斎場に比べ料金が安いのが特徴。一方で、利用希望者が多く、予約が取りにくいというデメリットもあります。
利用する葬儀社は自由に選択できるため、特定の葬儀社を利用したい場合も公営斎場は利用しやすいと言えます。
また、通常の葬儀の流れでは、通夜、葬儀の後に火葬場に移動する必要がありますが、公営斎場には火葬場が併設されています。よって、通夜、告別式、火葬まで1か所で終えられるため、霊柩車、マイクロバスなどの手配が不要になります。
スムーズに葬儀を終えることができるため、小さいお子様やご年配の身体的負担をおさえることができます。
なお、東京は公営の斎場に火葬場が併設されていなかったり、複数の区で共同運営している斎場があったり、23区内の民営火葬場には斎場も併設されているなど、特殊性があります。
民営斎場
民営斎場とは、主に企業、宗教団体などが運営する斎場を言います。
民営斎場は公営斎場より斎場数も多く、予約が取りやすいメリットがあります。葬儀の日程を決めやすく、遺族の集まれる日時が限られる場合に便利です。
公営斎場に比べ葬儀料金は高額になります。葬儀社によってさまざまな料金プランが用意されており、希望のプランを選択可能です。「家族水入らずの葬儀がしたい」、「参列者を多く招きたい」などの要望にも個別に対応してもらえるのは民営斎場ならではと言えるでしょう。
斎場名は「○○セレモニーホール」、「○○会館」など多岐に渡ります。自社斎場の場合、ある程度統一された斎場名であることが多いようです。
民営斎場はスペースとしての貸し出しのみを行っている貸し斎場と、葬儀社が自ら保有する斎場の2種類に分けられます。
貸し斎場
貸し斎場とはスペースとしての貸し出しのみを行っている斎場です。出入りする葬儀社に制限がなく、音楽の演出や装飾などの自由度も高めと言えるでしょう。
自社斎場
葬儀社が運営する斎場を自社斎場と言います。自社斎場を利用する際にはその葬儀社に依頼するのが基本です。エリア内に複数自社斎場がある場合も多く、交通アクセスや葬儀の規模に応じて選ぶことができます。
寺院・教会
寺院や教会でも葬儀を行うことができます。ただし、寺院の場合は基本的に檀家のみ、教会であれば信者の方でなければ利用できません。寺院葬によっては祭壇が必要なく、葬儀料金がおさえられることがあります。
寺院や教会ならではの荘厳な雰囲気で葬儀ができるのが特徴。日頃からお世話になっている菩薩寺で葬儀を行いたい、という方も多いです。
もともと葬儀を行うための施設ではないため、葬儀のための設備が整っていない場合があります。
自宅
自宅で葬儀を行う場合、ある程度条件が揃っていることが必要です。いくつかの条件がありますが、例として以下があげられます。
- 自宅内に祭壇を飾り、棺を安置し、少なくとも家族が参列できる広さの部屋があること
- 棺の出入りができること
- 霊柩車など必要な車両を止めるスペースがあること
自宅での葬儀は式場利用料が発生しないため、最も安く葬儀を行うことができます。
ホテル
ホテルも選択肢のひとつとして挙げられます。しかし、ホテルに遺体を持ち込めないことが多く、火葬後に告別式の代わりとして「お別れ会」、「偲ぶ会」として行われるのが一般的です。有名人の「お別れ会」として利用する場合が多いようです。
集会所・公共施設
集会所や公共施設などでも葬儀を行うことが可能です。しかし、葬儀場としてつくられた施設ではないため、設備の利便性に欠ける傾向があります。利用の際には事前見学に行き、控室の有無や動線などを確認することが大切です。民営斎場や公営斎場よりも利用料金は安めです。
集会所
集会所での葬儀は団地やマンションなどの集合住宅に付随している集会所で行われます。マンションの利用規則に従って葬儀を行う必要があります。
公共施設
地域のコミュニティの場として使用される「○○地域センター」のような公共施設でも葬儀を行うことが可能です。施設によって利用できる設備に差があり、葬儀場としての使用に特化されている公共施設もあります。
葬儀のプロが教える、いい葬儀場の選び方
それでは、葬儀場を選ぶときのポイントについて説明していきます。急な葬儀だからこそ落ち着いて、希望に合った葬儀場を選ぶことが大切です。
あらかじめ事前相談や内見に行くのも有効的な手段と言えます。わからないことは葬儀場のスタッフに質問してください。
ここからは、葬儀業界10年以上のプロKさんに、いい葬儀場の選び方について教えてもらいましょう。
- 利用料金
- 設備の充実度
- 葬儀の規模(斎場のサイズ)
- 交通アクセス、駐車場の有無
- 宿泊が可能かどうか
利用料金
葬儀場の利用料金は公営斎場か民営斎場かで大きく異なります。公営斎場の場合、3万円~5万円程度の施設利用料に加え、葬儀社に払う料金を合わせると10万円を超えることがほとんどです。
また、民営斎場の場合、参列人数や内容によりいくつかの料金プランが提示されます。最もシンプルなプランで20万円~40万円程度です。
葬儀の規模やスタイルによって「家族葬」、「一日葬」、「一般葬」など呼び方が変わり、料金も大きく異なります。また、オリジナルの生花祭壇や生演奏などのオプションによっても料金は前後します。
料金だけを見て安いプランを予約してしまい、「故人をきちんと見送れなかった」と後悔することもあるようです。いくつかの葬儀場を比較して、希望にあった葬儀場を選びましょう。
設備の充実度
葬儀の会葬者は高齢者が多いことが特徴。斎場内の段差やエレベーターが狭くないかなど、できれば内見に行き確認しましょう。
また、設備の充実度は斎場によって差があるため、葬儀場を選ぶ際に確認しておきたいポイントのひとつです。1日1組限定、ワンフロア貸切など、それぞれの葬儀場の特徴を把握した上で、希望の葬儀ができるか検討しましょう。
また、葬儀中に過ごす親族控室はできるだけ快適なお部屋が正解。葬儀中はなにかと身体的・精神的負担が大きいからです。和室、洋室があるか、浴室に湯船があるか、アメニティの有無なども把握しておきましょう。
それだけでなく、参列者が待ち時間に過ごせるロビーの有無、会食室の広さなどもチェックしたいところ。なかにはフリードリンクコーナーを設けている斎場もあります。
小さなお子様がいる場合は、キッズコーナーや授乳室があると参列者から喜ばれます。遺族、参列者どちらも気持ちよく過ごせる斎場を選択しましょう。
葬儀の規模(斎場のサイズ)
葬儀を行う場合、まず参列者の人数を検討し、参列人数に対応できる葬儀場を選択します。広すぎる会場は寂しい印象を与えてしまいます。また、そのために大きい祭壇に変更するなどの追加料金がかかる場合も。
それに対して、思ったより葬儀場が狭かったということもあるようです。葬儀規模に合わせた葬儀場かどうか確認することも大切です。
交通アクセス、駐車場の有無
遠方からの参列者や高齢者がいる場合、最寄り駅やバス停からの距離や駐車場の有無も重要。実際の道のりに段差があるか、丘の上かなどで来場しやすさも変わるので、できるようなら実際に訪れてみるのが良いですね。
また、民営斎場の場合、火葬場までの距離も検討したほうが良いでしょう。10キロメートル圏内が目安です。火葬場までの距離が遠いと移動にかかる身体的負担が大きくなるだけでなく、渋滞により火葬が間に合わない場合もあります。
地域によって自家用車の所有率や交通利便性も異なるでしょう。車を多く使用する地域では駐車場の有無も確認します。地域性、季節、天候なども考慮する必要があります。
宿泊が可能かどうか
葬儀場によっては、通夜のときに宿泊ができないところもあります。その場合近隣のホテルを利用しなければならないので、あらかじめ確認が必要です。
また、宿泊可という紹介がされていても、シャワーがあるか、湯船に入れるかなどは葬儀場によって異なります。寝具のみレンタル可能でも浴室がない場合もあります。
その場合、自宅で入浴を済ませてから葬儀場に向かうか、近くの温泉施設などを利用しなければなりません。宿泊を検討している場合は、入浴設備が必要かどうかも確認しましょう。
葬儀社と斎場はどちらを先に選ぶといいの?
葬儀社と斎場、どちらを先に選んだ方がいいのか? 結論から言うと、まず、葬儀社を選んだ方がよいです。
自社斎場を含め、その斎場に精通している葬儀社を選ぶということが最も重要です。 斎場の場所は、日程などの諸事情によって、別の場所に変更せざるを得なくなることが起こりえます。そのような場合、地域の事情に精通し、地域にどのような斎場があるか把握している葬儀社であれば、混乱なく対応してもらえます。
ただし、希望の斎場が確定している場合、もしくは、特定の地域のみで葬儀を行いたい場合は、斎場を決めた上で、その斎場で葬儀を行なっている葬儀社を選択するというのもよいでしょう。
「いい葬儀」では、葬儀社や斎場からだけでなく火葬場からでも葬儀(プラン)を検索するということも可能です。
葬儀場を選ぶうえで大切なこと
葬儀場を選ぶうえで、まずは内見に行くことをおすすめします。その上で交通アクセス、施設設備などを自分の目で確認しましょう。葬儀の会葬者はご年配の方が多いので、バリアフリーは特に重要です。内見なしに急いで予約してしまい、思っていたのと違うことが往々にしてあります。
葬儀にはネガティブなイメージを持つ方も多く、家族の葬儀について考えることは少ないでしょう。しかし、残された遺族が後悔することがないよう、早いうちから話し合い、納得できる葬儀のあり方を検討しておくことが大切です。
また、いくつかの葬儀場を比較したい場合、「いい葬儀」などの第三者機関に相談することも有効な手段です。ひとつの葬儀場での話を鵜呑みにするのではなく、葬儀場を利用した人から話を聞いたり、インターネットの口コミを見るなど、客観的な意見を参考にすると良いですね。