告別式の一般常識/流れやマナーについて

小林憲行【記事監修】
小林憲行

記事監修小林憲行

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告別式では、受付から出棺までさまざまなマナーがあります。昔からのしきたりに準じた作法を事前に確認し、参列した際に失礼のないようにしましょう。

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告別式とは

告別式とは、亡くなった人に別れを告げる儀式です。

葬儀と混同されることが多いですが、葬儀は僧侶が中心となって執り行う故人を弔う儀式なのに対し、告別式は喪主が中心となって行われます。

地域によって通夜や葬儀の後、火葬前に行われる、または先に火葬をし、後から葬儀式、告別式を行うところに分かれます。

告別式は宗教性のない儀礼として明治時代に生まれました。
葬儀・告別式では、焼香から閉式までが「告別式」とされるのが一般的です。

告別式の成り立ち

近年は「葬儀・告別式」とされていることがほとんどですが、江戸時代の頃は、故人の自宅で通夜を行い、出棺すると、葬列を組んで寺院や墓地へ向かい、そこで僧侶が読経し、引導を渡して、そのまま埋葬まで行うのが葬儀でした。

告別式の始まりとされる儀礼を行うきっかけを作ったのは、中江兆民という人物です。

明治時代、思想家であり政治家であり新聞記者である彼は、ルソーの『社会契約論』を翻訳しました。54歳の頃、咽頭がんで1年半の余命宣告を受け、「葬儀をせず火葬のみとすること」「医学発展のためには解剖すべし」と遺言を残して亡くなりました。そのため、遺族や友人などが宗教性のない形での儀礼を考案し、葬儀の代わりに行ったのが告別式です。

中江兆民の告別式は、読経の代わりに、演説、弔辞、弔歌、弔詩を行い、参列者による焼香の代わりに、棺の前で敬礼するという、死者への哀悼と告別を述べることを中心とした儀式でした。

葬儀と告別式の違い

現在では一般的に、開式から遺族や親族の焼香までが「葬儀」。一般参列者の焼香から閉式までが「告別式」とされています。そのため、一般の参列者にとっての告別式は、火葬場へ向けて出棺した段階で終了です。

一方、遺族や親族は、出棺後に火葬場へ移動し、収骨(拾骨)などを行い、繰り上げ初七日法要などを経て、精進落としを食べるまでが告別式となります。

告別式の流れ

葬儀・告別式の流れ

葬儀または告別式 流れ
葬儀・告別式会場到着
受付(香典・記帳)
着席
葬儀 僧侶入場・読経・引導
弔辞・弔電の奉読
読経・遺族親族焼香
告別式
(遺族・親族・一般参列者)
読経・参列者焼香
花入れの義
釘打ちの義
出棺
告別式
(遺族・親族)
火葬
収骨(拾骨)
繰り上げ初七日法要
精進落し

*東京近郊の例です。葬儀・告別式の流れは地域によっても異なります。詳細は葬儀社の担当者にご確認ください。

告別式の始まる時間帯

葬儀・告別式の開始時刻については、多くの場合、午前中に始まるようです。

地域にもよりますが、例えば東京など、葬儀・告別式の後に火葬が行われる地域では、その開始時刻は火葬場の予約時間から逆算して決められているのが一般的です。

告別式への参列のマナー

告別式に参列する場合に押さえておきたいマナーについて。告別式の流れにそってご説明します。

受付

親族や会社関係者など、受付が関係者別に分かれている場合があるので、自分が並ぶべき列を確認しましょう。

受付ではお悔やみの言葉を述べ、すでに通夜に参列して香典を渡している場合は、受付でその旨を伝えます。通夜で香典の用意ができていなかった場合は、翌日の告別式で渡します。

いずれの場合も、香典を持参していなければ、記帳だけで構いません。
他の人からの香典を預かっている場合は、受付で人数分の香典を手渡した後、自分の名前と香典を預かってきた人の名前を記帳します。

代理として参列する場合は、先に来られなかった人の名前を書き、その下に「代理」。さらにその後に、小さく自分の名前を書き添えます。仕事関係や、会社の代理で参列する場合は、名刺を渡しましょう。

記帳を済ませたら返礼品(即返し品・粗供養品)を受け取り、式場内の所定の椅子に座るなどして、焼香の順番が来るまで待機します。ただし、遺族のところへ行って挨拶するのは控えましょう。会葬者同士の挨拶も、黙礼程度に留め、必要なら式が終わった後にします。

焼香

焼香は遺族、親族、友人、知人の順に行います。

会葬者が多い式の場合は、焼香の長い列ができることもあります。前の人が終わったら進み出て焼香し、故人の冥福を祈ります。焼香で遺族と向かい合ったときは、黙礼だけ行うか、短くお悔やみの言葉を述べるだけにしましょう。

特に親しい間柄でない場合は、焼香が終わったらそのまま失礼しても構いません。

出棺

焼香が終わると、花入れの儀や釘打ちの儀などといったお別れの儀式があります。お別れの儀式が終わると、棺が霊柩車に乗せられます。一般会葬者の場合でも、出棺が故人を見送る最後の場なので、出来る限り出棺まで立ち会うのが望ましいです。霊柩車が火葬場へ向けて出発する直前になったら黙礼し、合掌して故人の冥福を祈ります。

火葬

親しかった関係者は、火葬に立ち会うことを遺族に勧められる場合もあります。その場合は、指定された車に乗り、火葬場へ向かいましょう。 火葬場まで同行するのは遺族から依頼された人だけで、自分からは申し出ないようにしましょう。

火葬場では、火葬炉前に棺を安置し、僧侶による読経と関係者による焼香を行った後、棺を火葬炉に納めます。火葬中はお茶や食事をしながら待機します。火葬が終わったら収骨(拾骨)を行い、遺骨を骨壷に納めます。

初七日法要と精進落し

火葬が終わると、多くの場合は再び葬儀場に戻り、還骨法要や精進落とし、繰り上げ初七日法要などが行われます。

精進落としの席では、食事やお酒が振る舞われますが、遺族に配慮して、あまり長居はしないようにしましょう。

葬儀・告別式にかかる時間

お通夜の翌日に行われる葬儀・告別式は、多くの場合1〜2時間で執り行われます。もちろん参列者の人数や故人の宗派などによって、長くなったり短くなったりと目安よりも前後する可能性はありますが、およそ2時間程度と考えておくのがよいでしょう。

葬儀・告別式にかかる時間は2時間程度です

また、さまざまな理由でどうしても葬儀・告別式に最後まで出席することはできないときは、焼香だけに伺って、その後退出しても失礼にはあたりません。

ただし、喪主の方や親族の方など、親しい人がいれば、事前に用事などの理由で最後まで見送れない旨を伝えられると丁寧です。お葬式の当日は喪主をはじめ遺族はとても忙しい中で動いています。様子を見て判断しましょう。

告別式の服装や靴、身だしなみについて

告別式の服装はきちんとした喪服を着用しましょう。

最近では葬儀の形も変化し、以前と比べるとしきたりや慣習より、故人らしさを大切にする風潮がみられます。

しかし参列する場合にはお別れ会や偲ぶ会など、特別な形のお別れでない場合には、服装、身だしなみには気を付けたいものです。

男性の服装

黒色やそれに近い地味な色のスーツとネクタイ。ワイシャツは白色が望ましい。

男性の靴

靴は光沢のないシンプルなデザインの革靴。靴下も黒色やそれに近い地味な色が無難。

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子どもの服装

学校の制服があれば、制服が正式な礼装となる。制服がない場合は、シャツやブラウスは白色、ブレザーやカーディガンなどの上着や、スカートやズボンは、黒色やそれに近い地味な色を選ぶ。

靴は出来る限り黒色。靴下も黒色やそれに近い地味な色、もしくは白色が無難。
幼児や乳児に関しては、なるべく黒色や、それに近い地味な色の服装を選べば特に問題はない。

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女性の靴

黒色やそれに近い地味な色で、ヒールがあまり高くない、フォーマルな印象のものがベター。

スカートやワンピースには、黒色のストッキングを合わせる。バッグを持つ場合は、光沢や金具のない布製のものが好まれる。

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女性の服装

黒色やそれに近い地味な色で、無地のスーツやワンピースに、アクセサリー類に関しては、結婚指輪以外は付けないのが正式なマナー。付けたい場合は、真珠や黒色の一連ネックレスや、一粒タイプのイヤリングなど、華美にならないものをひとつだけ選ぶ。

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告別式の持ち物

数珠

数珠は、仏教徒でない人は持つ必要はないが、日本の葬儀・告別式のほとんどが仏式で行われているため、数珠を用意する人が多い。

宗派ごとに玉の数や持ち方が異なるが、喪家の宗派に合わせる必要はない。

ハンカチ

黒色やそれに近い地味な色のもの、もしくは白色。なければ華美でないものを選ぶ。

袱紗

絹や縮緬(ちりめん)などで一重もしくは二重に縫製された四角形の布。物を包むのに用い、主に進物や祝儀袋、不祝儀袋などを包む。

香典袋

香典用のお金を入れる不祝儀用の袋です。葬儀に持参することができない場合は、現金書留などで郵送する。

香典

死者の霊前の供える金品。急な不幸で出費がある喪家への、助け合いの意味が込められている。

告別式でやってはいけないこと

告別式に参列する時にやってはいけないこと、気を付けたいことをまとめました。また、葬儀・告別式はそれぞれの地域や宗旨・宗派によって受け継がれてきたしきたり、慣習もあります。

迷ったときはお近くの葬儀社、お寺など地域の方に尋ねてみるのもひとつの方法です。

香典に新札を使う

香典に新札を使うと、死の準備をしていたような印象を与えるため、良くないとされています。使用したお札が用意できない場合は、新札に折り目をつけて使っても構いません。また、死や苦を連想させるため、香典の金額は4や9を避けるのが一般的です。

香典袋は袱紗に包んで持参し、受付で開いてお渡ししましょう。

私語を控える

遺族や友人、知人との挨拶は控え、黙礼する程度に留めましょう。故人や遺族と親しい関係だったとしても、葬儀・告別式の前後や最中は遺族に配慮が必要です。必要なことは手短に話し、長話をするのは避けます。

友人、知人との私語も慎みます。どうしても話がしたい場合は、葬儀場を出てからにしましょう。

通夜と告別式はどちらに出席すれば良い?

通夜と告別式療法に参列するのが好ましいですが、仕事の関係などで通夜のみ参列するケースもあります。

一般の参列者の場合、お通夜に参列して翌日の葬儀・告別式には参列しないという方も増えてきました。仕事の関係などで、夕方から始まるお通夜にのみ参列するというケースです。

通夜の成り立ち

告別式よりも歴史の古い通夜は、もともと「夜を通す」という意味があり、死者に寄り添うことが一番の目的でした。死者とともに過ごして死者を慰め、死者の冥福を祈るため、読経や念仏などが行われ、地域によっては食事をし、酒を飲みながら、最期の別れとして故人の死を惜しみ、故人にまつわる思い出話をするのが通夜でした。

昭和初期までは、通夜に参列し、夜通し故人と過ごすのは、近い親族や故人と特に親しい友人知人などの限られた人のみでした。

両方とも出ても良い

特に最近では、平日の昼間に行う告別式よりも、夜間に行う通夜の方が参列がしやすい人が多いため、故人とそれほど親しい関係者ではなくても、通夜にだけ参列する人が増えています。

そのため、どちらかに出席すれば、礼を尽くしたと考えられるようになってきました。

もし遺族から、通夜の日時だけ連絡を受けた場合は通夜に。告別式の日時だけ連絡を受けた場合は告別式に参列するのがベストですが、そうでないなら、通夜に都合がつけられない場合は告別式に参列し、告別式に出られない場合は通夜に参列すれば良いでしょう。

もちろん、両方参列したとしても、全く問題はありません。マナーや礼儀を守ることも大切ですが、一番重要なのは、故人を偲ぶ気持ちです。

告別式化していく通夜

やがて戦時下になると、夜通し行う「丸通夜」が全時代的で無駄であるとされ、酒や飲食が少なく、限られた時間内で終わる、「半通夜」が推奨されるようになります。さらに、時代の流れとともに、故人と親しい関係者以外の参列も認められるようになっていきました。

死者に寄り添うことが第一目的だった通夜ですが、告別式の普及と、通夜への近親者以外の参列が認められるようになったため、告別式の代替として考えられるようになってきました。

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