パパへ

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今は亡き父へ

もう十年も会っていないなんて、正直、いまだに実感がわきません。

大学の卒業論文の提出日が間近で、あの日も朝まで論文を書いていました。やっと寝付いた明け方に電話が鳴って、わけもわからず始発の新幹線で帰ったら、パパは見たことのない服に包まれて、小さくなって、刀を抱えながら眠っていました。何をしているのかわからなかった。

おばあちゃんが泣きながら「何してるんだ!」って怒っていたよ。

私も、いつもみたいに「みかしゃん」って白く大きな八重歯を見せて笑ってほしかった。

でも、ピクリとも動かなかった。

クリスマスはパパに何のプレゼントを持って帰ろうかなって考えながらアルバイトをしていたのに、何も渡せなかったね。お正月は前みたいに二人でドライブに行きたいって思っていたけれど、もう二度とパパの隣に座れなくなってしまいました。

ママの涙をあの時初めて見ました。「だって、もう終わりだもん」って、最後のお別れの朝にママは泣き崩れました。悲しかった。

パパと私も、本当に仲良しの友達みたいだったけれど、娘の私から見ても、パパとママはいつも最高のカップルでした。こんなに仲の良い両親を私は他に知りません。

「パパはママを愛しているからね」って、照れもせず子供の前で告白するパパが大好きでした。

高校生の時、クラス全員の前で「理想の男性は自分の父です」って紹介したんだよ。パパは私にとってこの世で一番、あの日からはあの世で一番好きな男性です。

そんなパパに報告したいことがあります。

天国から見ていて知っているかもしれないけれど、私には今、この世で一番と言える男性がいます。車が大好き、運動も旅行も大好きで、ご飯をもりもりあっという間に平らげて、話が白熱してくると何時間でも討論会。パパにそっくりでしょう。

ママにも友人たちにも評判の良い自慢の人です。パパもきっとすぐに彼のことを好きになるよ。

もし会えたら、私のことそっちのけで二人でワイワイ車の話をしただろうね。

学生時代にブラスバンド部だったパパが、将来の結婚式のために私に内緒でトランペットの練習をしていたこと、知っています。ありがとう。その時には天国から飛びきりの音を響かせてね。パパとよく一緒に踊ったみたいに、私もとびきりの笑顔で応えるよ。

もうすぐパパの誕生日。おめでとう。

パパがこの世に生まれて、パパとママから私が生を受けたことに心から感謝します。

ありがとう。私は今、幸せです。

「今は亡きあの人へ伝えたい言葉」より

「今は亡きあの人へ伝えたい言葉」は、父母、祖父母、先生、友人、近所の人など。“あの人”とかつて一緒にいた時に言えなかったこと、想い出や、“あの人”が亡くなった後に伝えたくなったこと、感謝の気持ちなどを綴ったお手紙です。

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