今は亡き夫へ
あなたと別れて、七八八日、もうそんなに会ってないのですね。
今でも間仕切りのカーテンを、一枚そっと開けて、「まだ早いなー、もうちょっと寝るわ」と言って、寝室へ消えた姿が思い出されます。
「徹さん御飯ですよ」
と呼ぶと、必ず
「何御飯や」
とあなたは聞いたよね。
「お昼御飯やで」
と私が言うと、
「そうか」
毎回同じ事を言って、ニッと笑って、素知らぬ振りをして、昼はビールを、夕食は燗酒を、美味しそうに、口をつぼめてはまた少し開いて飲んでいましたね。
今、私は毎日、あなたと暮らした日々と同じ事をして、それなりに酒の肴を工夫して、あなたは好まなかった、ワインを頂いたりしております。
日本酒にチーズが合うと言って硬いチーズをかんでましたね。
私は今は柔らかいチーズをいただいております。
あなたとのお別れの日に、「五十年のラブレター」を読み上げて、お棺に入れましたが、あなたに聞き忘れた事があります。
五十年添い遂げて、あなたは幸せでしたか、
お返事は聞いていません。
あなたの最後の言葉は、「何か言う事ない?」と聞いた私に「何も言う事ない」でしたね。
主治医の先生には、「先生ありがとう」と言って、握手をしましたね。
いつになるか約束はできませんが、そちらに行った時の私の居場所をどの星にするか、出来る事なら、予約をして置いてくださいませ。
また必ず会いましょうね。それまで御機嫌様!!
「寄り添って、つれ添って」
何て素敵な言葉でしょう。
「今は亡きあの人へ伝えたい言葉」より
「今は亡きあの人へ伝えたい言葉」は、父母、祖父母、先生、友人、近所の人など。“あの人”とかつて一緒にいた時に言えなかったこと、想い出や、“あの人”が亡くなった後に伝えたくなったこと、感謝の気持ちなどを綴ったお手紙です。