今は亡き夫へ
貴方変わりないですか。そちらの冬はどうでしたか。寒くなかったですか。
こちらの冬は今までにない厳しい寒さで、雪も沢山降りましたよ。
貴方の旅立ちの日も十二月の寒い日でしたね。
今はお彼岸も過ぎて、春らしい日差しが見られます。
桜の莟みも春を待ちかねるかの様に日々膨らんでますよ。
貴方が、旅立って一年三ヵ月が経ちました。早いですね。
貴方が退職して間もなく病に倒れて十三年、最後の五年間は、家に戻ることのない長い寝たきりの闘病生活でしたね。私も一日も休むことなく貴方の所に通いました。
日々変わりはてて行く貴方の姿。それでも貴方は最後まで頑張りましたね。
私には貴方の好きな唄を聴かせてあげることぐらいしか出来ませんでした。貴方のところに毎日行っていたのに、最後は、家族に看守られることなく、一人で息を引き取ってしまいましたね。
淋しかったでしょう。苦しかったでしょう。
側に居てあげることのできなかった悲しさ、悔しさで、泣きました。辛かったです。
今でも五年間の過去が見え隠れして、時々涙してます。
いつまでも泣いていられないですものね。これからは前向きに進んで行きます。
貴方にどうしても伝えなければならないことがあります。
貴方に伝えてあげないと、いつまでもわからずにいますものね。
貴方と共に仕事をしてきた何人かの皆さんも、貴方より先に天国に旅立ちましたよ。
貴方の悲しむ顔を見るのがつらく、伝えることができなかったの。
私が貴方の代わりにお悔やみに行ってきても、貴方には、遅くなってご免ねとしかいえなかった。
貴方が現役時代にお世話になった先生が、東京に戻って病院を開院する時、一緒に行って力になってほしいとお願いされましたよね。
貴方は、一緒に行って、少しでもお役にたちたいと思ったでしょうね。
お断りして、家を離れることなく家族を守ってくれました。
その先生も貴方が旅立ってから八ヵ月後、天国に旅立たれましたよ。
遠方よりお祈りさせていただいてますよ。
貴方の月命日にも欠かさずお墓参りしてますよ。
五年間の毎日を思えば、月に一度のお参りなど何でもないことよ。
これからも私の行ける限りお参りしますね。
孫娘も今年は大学を卒業して社会人になりました。
遠い空から家族を見守って下さい。
私も貴方の分まで頑張って家もお墓も守ります。
安心して長い間の疲れを心身共に癒して下さい。
向かった先で仲間の皆さんとお会いできるといいですね。
お会いできることを願っています。
まだまだ書ききれないけど、名残おしいけど、ペンを置きます。
また会える時まで待ってて下さい。
「今は亡きあの人へ伝えたい言葉」より
「今は亡きあの人へ伝えたい言葉」は、父母、祖父母、先生、友人、近所の人など。“あの人”とかつて一緒にいた時に言えなかったこと、想い出や、“あの人”が亡くなった後に伝えたくなったこと、感謝の気持ちなどを綴ったお手紙です。