おばあさんの味

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今は亡き祖母へ

両親の離婚がきっかけで、五歳から一緒に暮らした母方のおばあさん。

仕事が忙しく家にいる事の少ない母に代わって、小さいころから母よりも長い時間一緒に過ごしましたね。

幼稚園のお迎えに来てくれたこと。

字を教えてくれたこと。

月に一度、バスに乗ってお寺にお参りに行ったこと。

高校受験、短大受験の時、「これを食べれば合格するんよ」と言って、二つ玉の目玉焼きを作ってくれたこと。

毎朝起きたらいつも朝ごはんが食卓に並んでいる……。

朝の弱い私は未だにご飯の用意がままならず……。

おばあさんはすごかった! と思います。

結婚式前に突然施設に入り、結婚式に来てもらえなかったのは残念でした。

それから私は実家から遠くへ嫁ぎ、主婦となり母となり、子育てに忙しく、なかなか面会に行けませんでした。それでも、施設の行事の盆踊り大会やお出かけ喫茶、運動会などで、一緒に過ごすことができましたね。

子供たちも「大きいばあちゃん」と言って、七五三の時は必ず施設へ寄って着物姿を褒めてもらったのを今でも覚えていますよ。

そしておばあさんの腎臓の調子が悪くなり、施設から病院へ移り、毎日の付き添いに誰も行けない時、主人や義母が「一緒にいてあげたらいいよ」と送り出してくれ、一晩一緒に過ごすことができたのを覚えていますか?

八年ぶりに過ごせたあの病室での一晩、今でも忘れません。

特に何も話さなくてもそばにいるだけで心地良い安心感がありました。

数日後、意識がなくなり、静かに天国へ逝ってしまって悲しかったけど、一晩一緒に過ごせた事で、受け止める事が出来ました。

あの一晩は、主人や義母のおかげです。

優しい家族のところへ嫁いでいるので安心してください。

おばあさん、天国へ旅立ってから一度、私の夢に現れましたね。

はっきり覚えていますよ、長女の肩から顔を出していたのを。

初ひ孫の長女は早産の超未熟児で産まれたので、今でも見守ってくれているんだなと思いました。

おばあさんがいるから心強いです。

これからもよろしくお願いしますね。

でも実は一つだけ、後悔している事があります。

おばあさんの味、もやしと鶏肉で作ったすまし汁。

酒や塩、みりんなど、何度か試したものの、同じ味にはなりません。

あの味を知っている母や叔母にも分かりません。

あのお汁、聞いとけばよかったなぁ。

あのお汁、また飲みたいなぁ。

「今は亡きあの人へ伝えたい言葉」より

「今は亡きあの人へ伝えたい言葉」は、父母、祖父母、先生、友人、近所の人など。“あの人”とかつて一緒にいた時に言えなかったこと、想い出や、“あの人”が亡くなった後に伝えたくなったこと、感謝の気持ちなどを綴ったお手紙です。

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