この世にひとつだけの写真

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今は亡き友へ

一枚の写真がある。

私の過去はここに凝縮されている。

 

一九九五年に起きた阪神大震災からまもなく二十年になろうとしている。

あの日、私は家屋全壊という体験をした。

思い出の品も家と共に崩れ落ちた。

一ヵ月後、家屋の本格的な解体のときに一枚の写真が見つかった。

その写真は私の七五三で撮影したものだった。

撮影したのは、近所にあった小さな写真屋のおばちゃん。

幼かった私は写真を滅法嫌がっていたそうで、おばちゃんは泣いている私に大きな飴玉を渡してあやしてくれたそうだ。

そのおばちゃんは、家屋の下敷きになり亡くなった。

震災で過去の写真が残っていない中で、この写真は大切な宝物となった。

ありがとうの言葉と同時に、おばちゃんのカメラからみえた風景はどんなものだったのだろうかと考えることがある。

人の生い立ちを撮り続けることができるカメラ。

おばちゃんが残してくれた一枚の写真をきっかけに、私は子ども達の写真を撮り続けることが趣味となった。

カメラからみえた風景は違うかもしれないけれど、おばちゃんのことを想いながら、今日もシャッターを押していこう。

「頑張るよ!」

「今は亡きあの人へ伝えたい言葉」より

「今は亡きあの人へ伝えたい言葉」は、父母、祖父母、先生、友人、近所の人など。“あの人”とかつて一緒にいた時に言えなかったこと、想い出や、“あの人”が亡くなった後に伝えたくなったこと、感謝の気持ちなどを綴ったお手紙です。

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