わが家の絆、三本の桜

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今は亡き夫へ

あなた、今年も桜の美しい季節になりました。わが家の「三本の桜」は今も見事な花を見せてくれています。

長男が生まれた時、あなたは喜んで庭に桜の苗木を植えてくれました。翌年、次男が誕生した時も並んで苗を植えましたね。

二本の桜はスクスク育ち、やがて二、三輪の可愛い花をつけるようになりました。

少し離れて長女が生まれた時は、あなたは仕事が忙しく、私は子育てで手が一杯で、桜の苗を植えることなどスッカリ忘れてしまっていました。

娘が一年八ヵ月の時、あなたは思いもかけぬ突然の事故で、「あっ」と言う間に天国へ行ってしまいました。

その後、娘は物心が付くと、お父さんが植えた兄たちの桜のことを聞き、「どうして私の桜は無いの?」と尋ねるようになりました。私はその度、言い分けをしなくてはなりませんでした。

あなたが亡くなって数年後、不思議なことに、二本の桜の間から枝分かれするように細い幹が出て、それは見る見るうちに伸び、まるで二人の兄の間で手をつなぐ妹のように、三本の桜の木のように見えて、可憐な花を咲かせるようになりました。きっと、あなたが長女のために植えてくださったのですね。

あなたのお顔を覚えていない娘も「お父さんにもらった私の桜」と言って、大切にしていました。

今では三本の桜も立派な大木になり、毎年、見事な花を咲かせています。満開のころには結婚して家を離れた子供や孫たちも集まり、賑やかに「お花見」を楽しんでいます。

あなたが植えてくださった桜が、五十年以上も経った今も、家族を結ぶ大切な絆となっていることを、とてもうれしく思っています。

あなたもきっと、喜んで見守ってくださっていることでしょう。

私が、そちらへ行く時には、「三本の桜」の写真を持って行きたいと思っています。

「今は亡きあの人へ伝えたい言葉」より

「今は亡きあの人へ伝えたい言葉」は、父母、祖父母、先生、友人、近所の人など。“あの人”とかつて一緒にいた時に言えなかったこと、想い出や、“あの人”が亡くなった後に伝えたくなったこと、感謝の気持ちなどを綴ったお手紙です。

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