今は亡き母へ
お姑さん、あなたが種から育てたグレープフルーツが、たくさん実りました。畑の隅に植えてあるその木がグレープフルーツということは、あなたから聞いていましたが、本当に実ができるとは思ってもみませんでした。
でも、あなたが亡くなったその年に一個だけ実ができました。あなたが亡くなったのは、平成十六年の六月、 その年の十一月頃には、どこから見てもりっぱなグレープフルーツの実ができたのです。
もう少しいてくれていたら、実を見て喜んだだろうにと、家族のみんな悔しがっていました。そして、その後は、全くできなかったり、二、三個できたりでしたが、昨年の秋、もう数えきれないくらい実りました。
枝もしなっていました。突然の大豊作、びっくりです。
皮をむいて食べてみましたが、やはり産地でできたものと違って、すっぱくて生で食べるのは、無理があります。
こんなにたくさんの実をほっておくのはもったいないので、ジャムにしてみました。
そうしたら、とってもおいしいジャムができたのです。
そのジャムを、いろいろな人におすそわけしました。
あなたがかわいがっていた姪の和子さん、私の東京のおばさん、私の友達・・・そして、あなたが亡くなった次の年に結婚した孫の致のお嫁さんの真代ちゃん。
みなさん、とても喜んでくださいました。お姑さん、あなたは、いつも少々のことでは、怒らずいつもにこにこしていましたね。
結婚以来いっしょに暮していてどんなに助かったことか。
私が、仕事のことや子育てでイライラすることがあっても、温かく見守ってくれていましたね。
そんなあなたの人柄が、グレープフルーツのジャムをよりいっそうおいしくしてくれているように思えてなりません。
今朝もパンにこのジャムをぬって味わっています。
今日一日またがんばろうという思いになります。
お姑さん、ありがとう。
グレープフルーツの木、大事にしますからね。
「今は亡きあの人へ伝えたい言葉」より
「今は亡きあの人へ伝えたい言葉」は、父母、祖父母、先生、友人、近所の人など。“あの人”とかつて一緒にいた時に言えなかったこと、想い出や、“あの人”が亡くなった後に伝えたくなったこと、感謝の気持ちなどを綴ったお手紙です。