関東と関西、違いはある?お葬式の風習・マナー

小林憲行【記事監修】
小林憲行

記事監修小林憲行

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お葬式のしきたりやマナーなどは、それぞれの地域によっても異なります。大きく関東と関西で比べてみると、お葬式の流れ自体に大きな差はありません。

しかし、お通夜が終わった後どのように行動するのか?香典の受け渡しや火葬の後、収骨の際の遺骨の拾い方など、細かな部分に風習やマナーの違いがあります。

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入り口に飾る花と樒の違い

葬儀では会場の入り口に花輪などを並べますが、関東では花輪、関西では樒を置きます

葬式では会場や自宅の入り口に花輪などを並べるのが一般的です。その数の多さで葬式の規模を感じられることもあります。東と西ではこの入り口に飾られるものに違いがあり、関東では花輪を、関西では樒(しきみ)を置きます。

樒とは主に関東以西の本州、四国、九州などで育つ常緑樹です。仏花として仏壇にお供えすることもあります。お葬式では、葉と実の部分を飾ります。見た目は花というより緑の葉であるため、花輪に親しみのある関東の方が、樒を見ると不思議に感じることが多いようですが、樒が葬儀で使われてきた歴史は古く、土葬の頃までさかのぼります。

昔は土葬するとき樒と一緒にご遺体を埋める習慣がありました。

樒には独特の香りがあり、動物が嫌がって近寄りません。当時は野犬が埋葬場所を掘り返してしまうことがあり、その対策として樒を一緒に埋葬するようになったのです。

野犬は悪霊に見立てられ、追い払う力のある樒は、魔除けや悪霊退散の意味も持つようになりました。

一方で樒の実には毒があり、悪しき実と呼ばれることもあったようです。樒が「シキミ」と呼ばれるようになった由来とも言われています。

やや意外な歴史を持つ樒ですが、花輪も含めて最近では入り口に飾る習慣も薄れてきているようです。代わりに祭壇にお花を供えたり、会場に一対だけ花輪、樒を置いたりするケースもあります。

お通夜の後の食事の違い

関東ではお通夜が終わった後、通夜振る舞いと呼ばれる食事を振る舞いますが、関西ではそのまま帰るのが一般的です。

関東ではお通夜の後、参列者全員に食事を振る舞います。これを通夜振る舞いと呼びます。
多くの人に料理をお出しするので、オードブルやお寿司などを大皿で用意することが一般的です。参列者は一口でも飲み物や食べ物に手を付けるのがマナーとされています。
一方関西では、参列者はお焼香などを済ませてお通夜が終わった後、そのまま帰るのが一般的です。食事は親しい知人や親せきのみで行うのが通常で、関東のような通夜振る舞いはありません。

お香典の違い

葬式では香典の受け渡しを行います。それは関東と関西でも同じです。

しかし、近年の関西では、香典の受領を断っているケースが増えていると言われています。その場合には、会場内に香典の受け取りを断る旨の表示がありますので、素直に香典の受け渡しを控えましょう。もちろん四十九日の香典返しもありません。

関西の葬儀では、お香典の受け取りを断っている場合が増えているようです

この香典お断わりの風習については諸説ありますが、興味深いものでは「香典をいただかなくてもお葬式ができる」ということを示すためにはじまったという説を聞いたことがあります。

お香典は本来、大切な方を失った遺族を経済的にも支える役割がありましたが、そのお香典を辞退することで「(他家の)手助けがなくても立派なお葬式を執り行うことができる」こと、ある意味その家の力を誇示するという狙いがあったのではないかという説です。このほか、後日の香典返しが大変だからということが関係しているとも言われています。

また、香典袋には水引がありますが、その色にも地域で違いがあります。香典袋の色は、関東では白黒、銀色で、関西は白黄、銀色です。しかし、関西の中でも奈良県は例外で、白黒を使用します。

地域よって水引の色に違いがあるので、香典を用意する前には親せきや地域の方、葬儀社などに確認をしておきましょう。

お香典の額の違い

参列した際、気になるのは香典の額ですが、関東と関西では香典の額にも差がみられます。香典の相場を主に通夜振る舞いのある関東と、通夜振る舞いのない関西で比較してみました。

関東関西
両親10万円5万円
兄弟姉妹5万円3~5万円
祖父母3万円1万~3万円
その他親族1万円5千~1万円
友人・知人5千~1万円3~5千円
上司5千~1万円5千円
同僚・部下5千~1万円3~5千円
勤務先(家族)5千円3~5千円
取引先(個人で)5千~1万円5千~1万円

このように、通夜振る舞いのある関東では、通夜振る舞いのない関西より香典は高めとなります。上記に記した金額はあくまで参考ですので、故人との間柄や気持ちを考慮して包みます。また香典は多く包みすぎるのもマナー違反となりますので、相場を逸脱しない金額を心がけましょう。

葬式までの日数の違い

葬儀の日程は、関東では死亡の2~4日後に行うのに対し、関西では亡くなった翌日に葬儀を行うことが多いようです

関東では亡くなった後の2~4日に葬儀を行うのに対し、関西では亡くなった翌日に行う場合が多いと言われています。これには、首都圏は火葬場の空き状況が関係していると言われています。

お葬式の後に火葬を行う地域では、火葬場の予約がとれてから葬儀の日程が決まります。葬儀の開始時刻の都合などをから、東京など利用者が多い地域では、予約が集中する時間帯に火葬場の空きがない場合もあります。

このような時に火葬場の空いている日まで待って葬儀を行うという傾向があります。特に年末年始など火葬場が込みやすい季節には、葬儀を行うまで何日も待たなければならないということも起こります。

このほか、人気のある葬儀式場を使用したいという理由で葬儀の日程を遅らせることもあります。

全収骨と部分収骨の違い

関東では火葬の後、お骨をすべて骨壺に拾います。

一方、関西では主要なお骨だけ拾い、残りの骨は火葬場へ残して帰ることが多いです。

関西で拾われる主要なお骨は、本骨(喉ぼとけ)と胴骨(それ以外の骨)です。本骨は別の骨壺に収容し、胴骨は頭、胸、腰、腕、足などを収めます。

このように西と東ではお骨を拾う量が違うため、骨壺のサイズも違います。関東は大きめで直径約21cm、関西は小さめの直径約9~15cmの骨壺を使用するのが一般的です。

収骨での違いもあります。関東ではお骨をすべて骨壷に入れるのに対し、関西では主要なお骨だけ拾うようです

収骨に違いがある理由ですが、関西では奈良や京都を中心に宗派の総本山が多いことに由来すると言われています。亡くなった人を火葬した後、本骨と胴骨を分けて拾い、本骨は宗派の総本山に納めるという風習が古くにありました。本山納骨と呼ばれ、残りの骨はお墓に納めます。関西でお骨をすべて拾わないのはその名残と言われています。

また、明治時代、火葬する場所と納骨する場所を分けるようお触れが出た際に、関東と関西で対応違ったからという説もあります。関東ではお触れに従って火葬後すべての遺骨を拾って納骨場所に移動しました。一方、関西ではお触れに従わずに納骨もできる場所で火葬が行われました。そのためすべての遺骨を骨壺に納めなくても、仮にお骨が残ってもその処置が容易だったため、部分収骨が定着したという説です。

地域による葬儀の特徴

地域で特徴のある葬儀

ここまで大きく関東と関西に分けて、葬儀の違いをみてきましたが、全国にはまだまだ特徴のある葬儀があります。必ずしも県内すべてで行われているわけではありませんが、昔からの風習や慣習として今も大切に引き継がれています。ここではその一部をご紹介します。

北海道:香典に領収証が出ます。専用の領収書も売られています。

秋田:焼香に小銭を添えます。

岩手:六文銭の代わりに100万円と書いた紙をお棺に入れます。

山形:六曜だけでなく、干支も葬儀の日程を決める上で重要とされています。

茨城:清めの塩と一緒に鰹節をかけます。

石川:お清めの塩と一緒にぬかをかけます。

福井:お葬式でお赤飯を食べます。

和歌山:火葬炉のスイッチを喪主が押します。

京都:友引の日の葬儀では「友人形」と呼ばれる人形を一緒に焼きます。大阪にも同じように人形を入れる風習があり、こちらは「いちま人形」と呼ばれています。

奈良:位牌を二つ用意します。

鳥取:故人の枕元に備える枕飾りである枕団子ですが、一般的には6個とされている場合が多いのですが、鳥取では4個となります。また、会葬者にあんぱんを配ることも。

岡山:妊婦さんがお葬式に参列する時には、お腹に鏡を入れるそうです。

島根:会葬者におまんじゅうを配ります。

佐賀:枕団子が49個です。

沖縄:枕飾りに豚の三枚肉を供えます。

関西・中国・九州地方:出棺時に茶碗を割ります。

宮城・愛知・鹿児島など:お棺をかつぐ際、額に宝冠をつけます。

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