初盆にいらしたお弟子さん方が母さんの遺影に、今も厳しい言葉が飛び出て来そう…と口を揃えて言っています

今は亡きあの人へ伝えたい言葉
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今は亡き母へ

一服のお茶と

拝啓

「もう飲んでもいいよ」

ずっと飲めなかった好物のワインを、出棺の時、姉さんが泣きながらお母さんの口に湿らせましたね。ほろ酔いで三途の川を渡れるかしら? などと皆で案じていましたが、一年たっても何の音沙汰もありませんから、無事に向こう岸へ渡れたのでしょうね。

お父さんとの二十年ぶりの再会はどうですか?今頃、二人してお点前の一服を味わっていることと思います。棺に入れた茶道具、ほらやっぱり役に立ったでしょう?一緒に、茶道教室の看板も持たせましたが、そろそろ天国教室の準備も整いつつあるのではないでしょうか。

この初盆はお弟子さん達がたくさん来てくれました。遺影を眺めながら、今でも厳しい言葉が飛び出て来そうな気がする……と口を揃えて言っていますよ。

葬儀の遺影に使ったスナップは、お母さんが心待ちにしていた初孫のあやちゃんの結婚式で撮ったもの。式の翌日から急に体調を崩し、そのまま逝くなんて……。花嫁姿を見るまではと、踏ん張っていたのですか?こんなことがあるのだろうかと、皆で神がかりを感じました。

古い茶道具の数々が遺りました。不思議なもので、一番遠くにいた東京の末孫が遺志を継ぎましたね。お母さんを継ぐには、にわか仕立てでまだまだ荒削りですが、お陰で、あの山のように遺された茶道具の行方に、悩まずに済みました。当分の置き場にって、姉さん夫婦がわざわざ倉庫を建ててくれましたよ。

あっと、それから、家の契約書……。有ると無しとでは、税金が驚くほど違うので、生前から探していましたね。結局見つけることが出来ませんでした。やはりあの未曽有の水害で我が家が水没した際に、流されてしまったのでしょう。税金をたんまりと払うことになりましたが、お母さんの大好きだった祖国日本に貢献できましたね。

もう四年もすれば私も退職です。ちょうど東京オリンピックの年です。お二人で天国の特等席から見下ろしながら、一服のお茶と共に、全種目を楽しんでくださいな。

敬具

「今は亡きあの人へ伝えたい言葉」より

「今は亡きあの人へ伝えたい言葉」は、父母、祖父母、先生、友人、近所の人など。“あの人”とかつて一緒にいた時に言えなかったこと、想い出や、“あの人”が亡くなった後に伝えたくなったこと、感謝の気持ちなどを綴ったお手紙です。

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