幼い子を残し、お母さんがどんなにか辛い気持ちで病に負けて逝ったのか

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今は亡き母へ

その日まで

あなたが亡くなって、今年で四十年になります。

私はあなたの年齢をとっくに超えて、四十一歳になります。小さい頃、継母との折り合いが悪く、何度あなたを恨んだでしょう。顔も覚える前に逝ってしまったあなたに向かい、何度空を見上げて泣いたでしょう。
朝も昼も夜も、ただ空を見上げていた私を、あなたも見ていてくれていましたか?

時は経ち、私も家族を持つことができました。

長女が十か月になった時、得も言われぬ気持ちになりました。あなたは、まだこんなに幼い子を残し、どんなにか辛い気持ちで病に負けて逝ったのか。どれだけ胸の引き裂かれる思いで逝ったのか。辛いのは残された自分だと思っていた、幼かった自分の愚かさも知りました。

そしてあなたの年齢を超えた日、心に決めました。ここからはあなたの生きたかった時間の分、強く強く生きていくと。あなたがくれた人生、辛いことがたくさんあったお蔭で、心が強くなりました。当たり前のことに感謝することも覚えました。人に優しくなれました。

私があなたの年齢の頃、祖父が亡くなりました。葬儀に出席した私はおばさま方に取り囲まれたのです。あなたの同級生だという方々でした。あなたが亡くなって三十数年が経過し、あなたそっくりに育った私を懐かしく眺め、私の手を握り、涙する方もいらっしゃいました。

少し気恥ずかしい気持ちもありましたが、亡くなって三十数年経っても懐かしんでくれる友人がいるあなたが誇らしかったです。

最後に一つだけ。孫を可愛がってくれる継母の手前、私の娘達にあなたの存在をまだ話せずにいます。お墓参りの時は「もう一人のおばあちゃん」と話しています。

娘が四~五歳の頃でしょうか、祖母宅であなたの遺影を見せたことがありました。すると娘が「この人知ってる、おばあちゃんだよ」と言いだしたのです。どういうことかと問うと、「お墓で何度も会ったよ、また来てねって」。

祖母と私は顔を見合わせ、言葉も出ませんでした。どうして私のところには一度も出てきてくれないのと、娘に嫉妬した私。このことは、いつかそちらでゆっくり聞かせて頂きますからね。

それまでは今まで通り、見守っていて下さいね。

「今は亡きあの人へ伝えたい言葉」より

「今は亡きあの人へ伝えたい言葉」は、父母、祖父母、先生、友人、近所の人など。“あの人”とかつて一緒にいた時に言えなかったこと、想い出や、“あの人”が亡くなった後に伝えたくなったこと、感謝の気持ちなどを綴ったお手紙です。

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