今は亡き母へ
あのとき母が作ってくれたインスタントラーメンが食べたい。
母が聞いたら、気にすることはないと言いそうですが、時々思い返します。
高校生の頃、大好きなロックバンドのコンサートがあって、友達とわたしの部屋で準備をして行くことになりました。ロックは不良という時代でしたが、当時いちばん好きなバンドだったし、地方の小さい会場に来てくれることはもうないだろうと、なんとしても行きたかったのです。
出発する時、厳しい父には挨拶をしなくていいからと友達には言ったのですがそうもいかず、ライブ用にドレスアップした友達が父に挨拶をし、その向こうに、出来上がったインスタントラーメンをお盆にのせた母が見えたのに、バツのわるいわたしは「いいよもう行くから」と言って出掛けました。
あの後父母はどんな雰囲気になったのか、二人分のラーメンはどうしたのか、まったく思いやることもせずわたしは、母の影に隠れて勝ち取った自由に喜ぶだけでした。
わたしが子供の頃から入退院を繰り返していた母が、病院への出入りがなかった小春日和のようなほんの数年の高校時代くらい、母を思いやって、大事にして、やさしく接することがどうしてできなかったのだろうと思います。
母に対してできることは、今いる継母、義父母に対して返して行くこと、わたしが元気に活躍できることだと思って頑張っています。
見守っていてくださいね。
「今は亡きあの人へ伝えたい言葉」より
「今は亡きあの人へ伝えたい言葉」は、父母、祖父母、先生、友人、近所の人など。“あの人”とかつて一緒にいた時に言えなかったこと、想い出や、“あの人”が亡くなった後に伝えたくなったこと、感謝の気持ちなどを綴ったお手紙です。