お前がお父さんと同じ道を進むと聞いて、本当に嬉しかったんだ。言っておけば良かったな、「嬉しいよ。ありがとう」って

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今は亡き、息子へー

何となく気恥ずかしかった。だけど、素直に自分の気持ちを伝えておけば良かった。

お父さんはね、お前が高校の体育の先生になるんだと言って頑張る決意を話してくれた時、少しびっくりしたのと同時に嬉しかったんだ。自分と同じ道を歩もうとする高校三年生になったお前を改めて愛おしく思えた。一緒に大学の話をしたね。試験のことも話したね。それなのに、これからという人生の夢や希望は突然の病に閉ざされてしまった。

通夜の晩、三年間同じクラスで共に過ごした友人が突然私の前に立って「お父さんに伝えたいことがあります」と、お前が言っていたことを教えてくれた。

「俺のお父さんは、イケメンじゃないけどカッコイイんだ」

「いつかお父さんを超えるんだ」

と言っていたと教えてくれたとき、声を出して泣いてしまった。私の背中を追ってくれていたお前の気持ちがすべて理解できた気がした。本当はお父さんが支えてあげなければならないのに、逆にお父さんがこれから生きていく上で支えになる言葉を残してくれた。ありがとう。

今でもお前が居ないのが信じられないけど、あれから九ヵ月が経った三月一日の卒業式にはお父さんとお前のお兄ちゃんとで参加したけど、歩いて入場してくるはずの体育館にお前の写真だけが移動してきて椅子の上に静かに置かれた。ただただ泣けた。

だけどね、お父さんとお兄ちゃんは頑張って参加して卒業証書をもらってきたよ。

校長室で受け取ったその卒業証書には卒業生番号はなかったけど、それでも、お前が青春を過ごした証としての卒業証書だから、お父さんもお兄ちゃんも泣きながらも気持ちをおさえてお前の代わりに受け取った。見てただろ?

でもさ、泣いてばかりのお父さんはカッコワルかったかな。入院中のお母さんに見せたら「卒業できたんだね。良かったね」って言って顔をくしゃくしゃにして泣いていたね。

これからお前は、顧問と一緒に柔道の先生として道場に下がっている柔道着を着て、後輩たちに教えてあげるんだ。夢は一足早く叶ったね。頑張れよ。お父さんとお母さんや兄弟たちはいつでも応援しているから。

嗚呼、お父さんは馬鹿だね、気恥ずかしいだなんて思わずに言ってあげれば喜んでくれただろうに。お父さんの生き方を理解して、共感してくれていることに感謝の気持ちを込めて、心から素直に出る言葉で気持ちを伝えておけば良かった。

「嬉しいよ。ありがとう」って。

「今は亡きあの人へ伝えたい言葉」より

「今は亡きあの人へ伝えたい言葉」は、父母、祖父母、先生、友人、近所の人など。“あの人”とかつて一緒にいた時に言えなかったこと、想い出や、“あの人”が亡くなった後に伝えたくなったこと、感謝の気持ちなどを綴ったお手紙です。

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