【終活映画】記憶の中の思い出がドラマチックな出来事に!『フォードvsフェラーリ』

誰かの人生を、自伝ではなく隣にいたもう一人の目から見てみる、そんな映画『フォードvsフェラーリ』。観客を圧倒するスピード感で人生を駆け抜ける。

舞台はイタリアのフェラーリ社とアメリカのフォード社の対決のようにタイトルされていますが、実在したレーシングドライバー、ケン・マイルズの伝記的なストーリーになっています。その彼の半生を共にチームとしてフォードのル・マン優勝を創り上げたキャロル・シェルビーの目線で追いかけているような映画でした。

「私」といった自伝的なものではなくて、友人から見た「スピードを愛した男の生涯」といった感じでしょう。その生涯のあらゆるシーンでシェルビーもまた、スピードに酔いしれている。ともにスピードを追い求めた二人の物語です。

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この映画の見どころ

さて、映画の見どころは爆音轟くレースシーンではあるのですが、彼らはレースを楽しむと同時に、一瞬でも気を抜くことが、命のやり取りにつながってしまうことにとても敏感で、生活の一つひとつに繊細なやり取りがあるようです。マイルズがシェルビーの誘いを受けレースに復帰するかどうかと妻のモリーとの口論するシーンでは、自分自身も心の整理が付かないままの様子も見え、そんなレーサーだからこそ常に家族に対する優しさを感じることができるのだと感じさせてくれます。

歴史的に実在したヒーローを取り上げた映画では、アフタードラマが字幕で入ったりしながら、故人の功績を光らせるものが多いように感じますが、この映画においてはマイルズが練習走行のレーシングコースでの事故で亡くなる場面もきちんと映像にしています。それも、彼が本番のレースの間にずっと心配していたブレーキの故障が原因だったようにも見える映像でした。彼を失った後のシェルビーの心の痛みが表現されたシーンは、大切な友人であるマイルズの事故が防げたのではないかという思いが、伝わってくるのです。

マイルズとシェルビー、彼ら二人がまるで青春映画のように喧嘩をするシーンがあります。ベタベタした仲良しなシーンが無いだけに、心がつながる二人の関係を感じることになり、後のシェルビーの悲しみを感じるには十分な関係性でした。

作品を生み出す、アメリカの懐の深さ

こんな風に鑑賞をしたので、映画のタイトルはもっと人間臭いタイトルでも良かったのかなとも思いましたが、原題もやっぱり”FORD v FERRARI”なのですね。むしろこのタイトルに合わせたフォード社とフェラーリ社のやりとりには若干の創作も感じてしまうほどに、二人のスピードマニアをあおるには十分に練り上げられたストーリーでした。

もしもこの二つの会社のやり取りのすべてが真実であれば、自動車ではなくて経営組織でフォードという会社を好きになる人はいないのではないかな?と心配になるほど、とても嫌な人たちに描かれています。そんな映画を創ってしまうのも、さすがエンターテイメントの国アメリカなのだと感じてしまうのです。

1966年のル・マン24時間耐久レースの思い出

さて、私自身の遠い記憶とシンクロしますと、1966年のル・マン24時間耐久レースにて、1・2・3位フィニッシュで圧倒的勝利を収めたのは、その頃小さな子供だった私でも、その後到来するスーパーカーブームでの伝説のような話として聞くことがあり、今でも記憶の中にあります。

劇中にその記憶のシーンを感じて、その当時の裏側まで知ることになるのと同時に、この二人のスピードマニアの存在と人生を知ることになりました。記憶の中の出来事や、普通の日々の普通の出来事が視点を変えるだけで、なんともドラマチックな記憶に変化させてゆくことができるのです。

普段は終活目線でついつい映画を観てしまう私も、鑑賞後に改めて振り返ってようやく「終活映画」ナビゲーションが出来上がりました。今回はこんな振り返りをしておりますが、とにかく理屈抜きで、楽しめた映画でした。まだまだ上映中、大画面での鑑賞をお勧めいたします。ぜひ映画館にお出かけください。

今回ご紹介した映画 『フォードvsフェラーリ』

2020年1月10日(金)全国ロードショー

監督:ジェームズ・マンゴールド

出演:マット・デイモン / クリスチャン・ベイル / ジョン・バーンサル / カトリーナ・バルフ / トレイシー・レッツ / ジョシュ・ルーカス

配給: ウォルト・ディズニー・ジャパン

©2019 Twentieth Century Fox Film Corporation

この記事を書いた人

尾上正幸

(終活映画・ナビゲーター / 自分史活用推進協議会認定自分史アドバイザー / 株式会社東京葬祭取締役部長)

葬儀社に勤務する傍ら、終活ブーム以前よりエンディングノート活用や、後悔をしないための葬儀の知識などの講演を行う。終活の意義を、「自分自身の力になるためのライフデザイン」と再定義し、そのヒントは自分史にありと、終活関連、自分史関連の講演活動を積極的に展開。講演では終活映画・ナビゲーターとして、終活に関連する映画の紹介も必ず行っている。

著書:『実践エンディングノート』(共同通信社 2010年)、『本当に役立つ終活50問50答』(翔泳社 2015)

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