全国初! 遺言実務の専門家になりたい人をサポートする「一般社団法人 全国遺言実務サポート協会」が発足

いい葬儀【記事監修】
いい葬儀

記事監修いい葬儀

スマホCTA(電話をかける)

多死社会の到来にともない、遺産相続をめぐって親族同士で争うケースが後を絶ちません。しかも、相続争いに金額の大小は関係なく、資産総額がそれほど多くはない一般の家庭であっても、頻繁にもめごとが起こっているといいます。

「相続争いを日本からなくしたい」という思いのもと、ファイナンシャルプランナー・相続診断士として3,000件以上の相続・お金の悩みを解決してきた実績をもつのが、笑顔相続コンサルティング株式会社 代表取締役の一橋香織さんです。

2019年11月15日には「一般社団法人 全国遺言実務サポート協会」を設立し、代表理事に就任しました。相続の第一人者である一橋さんに、協会を設立した理由や笑顔相続を目指したきっかけ、またもめない相続を実現する方法などを伺いました。

Adsense(SYASOH_PJ-195)

弁護士も高齢化。遺言執行者の不在をなくすために協会を設立

―― 一般社団法人 全国遺言実務サポート協会とはどのような協会ですか?

遺言執行や死後事務委任などをすでに業として受けている相続コンサルタントや士業の方、もしくはこれから遺言実務の専門家になりたいという方に向けて、遺言関係の実務に関する正しい知識と遂行ノウハウ、サポート体制を提供する協会です。

弁護士、司法書士、税理士などの士業者のほか、相続・終活の専門家、ファイナンシャルプランナーなど、さまざまな分野のスペシャリストが集まって当協会を立ち上げました。

―― 協会を設立されたのはなぜですか?

今後大量に出てくると予想される「遺言執行者難民」をなくすためです。高齢化社会と呼ばれるいま、遺言執行者である弁護士や士業の先生たちも高齢になってきています。

私自身も50代半ばになり、「自分が死んだらお客さまはどうなるのだろう」と考えるようになりました。

遺言が執行されるのは、お客さま本人が亡くなった後です。それが20〜30年後になった場合、自分で遺言を執行できない可能性は大いにあるでしょう。そうした場合、誰かに遺言執行を引き継げるような体制を整えておく必要があると思いました。

―― これまで遺言執行者が亡くなった場合、どうしていたのですか?

相続人が裁判所に申し立てをして、新しく遺言執行者を選任し直すか、もしくは相続人の誰かが事実上遺言執行者となって執行するしか方法がありませんでした。

遺言を残した本人は家族が困らないように遺言執行者をつけているのに、遺言執行者が亡くなってしまっては元も子もありません。業界としても避けなければならない事態ですし、「笑顔相続」という私の理念にも反しています。

―― 笑顔相続の理念はどこから生まれたのでしょうか?

自身の経験によるところが大きいです。20代の時に父が亡くなりましたが、亡くなってから義理の兄弟が出てきて遺産分割でもめました。

30代で母が他界した時も、やはり大変な思いをしました。この経験から、残された家族が困らないためにどうすればいいのか考えるようになり、勉強を始めました。

当時は相続に関する本がほとんどなく、インターネットで情報を得ることもできませんでしたので、弁護士事務所や税理士事務所でアルバイトしながら独学で相続に関する知識を身に付けていきました。

相続で苦労した経験から、相続でもめたりトラブルに見舞われる人を1人でも減らしたいという思いが強いです。そのためにも、当協会によって遺言執行者の不在をなくすとともに、安心して仕事をまかせられる相続のエキスパートを育成してきたいと考えています。

遺言は書き方を間違えるとかえってトラブルのもとになる

―― 多死社会を迎えたことから、相続マーケットが急拡大し、多くの人が業界に新規参入していると聞きます。

そうですね。現在、1年間で約136万9,000人の方が亡くなっており、その方たちが残している財産が50兆円にのぼります。

そして、団塊の世代の方たちが2025年に75歳の後期高齢者に突入することから、財産の総額は2030年までに累計で1,000兆になるといわれています。だからこそ、相続業界には儲かるというイメージがあり、さまざまな人が参入してきています。

長年、相続がメジャーになる前からこの仕事を続けていますが、現在の相続業界を見ていると、言わば“にわか相続コンサル”に市場を荒らされている状態です。お金儲けの手段として相続業に関わっている人も多く、相続にまつわるトラブルも絶えません。

―― 具体的にはどのようなトラブルがありましたか?

ひとつ例をあげると、遺言執行など相続に関する手続きを信託銀行が行う「遺言信託」にまつわるトラブルが増えています。私のお客さまにも遺言信託を選んでいた方がおり、トラブルになる寸前だった事例がありました。

そのお客さまには、奥さまとご子息、ご息女がいらっしゃいます。奥さまとご息女はお客さま名義の家に一緒に住んでおり、ご子息は結婚してマンションに住んでいました。

ところが信託銀行が作成した遺言書には、「奥さまとご息女が住んでいる家をご子息に相続させ、ご子息が住んでいるマンションを結婚していないご息女に相続させる」と書いてあったのです。

この遺言では家とマンションの相続がねじれているうえ、ご子息が亡くなったら家がお嫁さんのものになってしまいます。「これはまずい」と遺言をやり直そうとしていたのですが、お客さまが急死してしまい、遺言を書き直すことができなくなりました。

結局、弁護士を立てて信託銀行さんに遺言執行者からおりてもらい、相続人総意のもとで遺産の分け方を決める「遺産分割協議」をやり直しました。あまり知られていませんが、相続人の総意であれば遺産分割協議によって遺言をくつがえすことは可能です。

今回のケースは生前にお客さまが相談してくださったおかげで遺言執行前に気づくことができましたが、信託銀行によって遺言が執行されていたら大変なことになっていたと思います。

―― なぜこのような事態が起こったのですか?

信託銀行はあくまで遺言信託を受任するのが仕事であり、遺言の中身まで精査していないからです。相続の専門家が間に入っていないため、遺留分(相続人に法律上保障された一定の割合の相続財産のこと)を侵害している遺言を作成する信託銀行もあります。

―― 遺言も書き方を間違えるとかえってトラブルのもとになるのですね。

その通りです。私もよく言っていますが、「もめる遺言」と「もめない遺言」があり、残すならもめない遺言でないと意味がありません。

私は遺言を作成する際、遺言作成者本人の思いや考えが書ける「付言」を遺すことを推奨しています。付言に法的効力はありませんが、遺産分割の理由や思いが遺っているだけで防げるトラブルが山のようにあるからです。

たとえば「家は長男に相続させる」と遺言に書いたなら、なぜそうしたのかを付言で説明してください。子どもはもらえる遺産額を親の愛情の差だと感じてしまいます。

金額よりも「長男との愛情の差」が納得できないのだと考慮し、次男への愛情も言葉で遺しておくことをおすすめします。

相続でもめないためにもエンディングノートを活用してほしい

―― 協会の今後の展望についてお聞かせください。

当協会の会員を募っており、有料会員になっていただければ、動画やテキストなどの有料コンテンツを視聴いただけます。また、希望者は遺言執行実務に関する個別サポートを受けることも可能になります。

「笑顔相続」の理念に共感していただけるという方は、ぜひ一緒に円滑な相続の実現に向けて取り組んでいきましょう。

―― 最後に、相続でもめないためにできることを教えてください。

一番簡単な方法はエンディングノートを書くことです。エンディングノートというと「死が間近に迫っている人が書くもの」というイメージがあるかもしれませんが、私としては子どもから高齢者まで、日本人全員に書いていただきたいという思いがあります。なぜならエンディングノートとは家族のコミュニケーションツールであり、家族全員で書くことに意味があるからです。

相続でもめる家族は例外なくコミュニケーションが不足しています。だからこそエンディングノートを書き、身近にいる家族とのコミュニケーションを大切にしていただきたいと思います。

エンディングノートなら相続にかぎらず、さまざまなことが書けます。「遺言書はハードルが高い」という方は、ぜひエンディングノートからはじめてみてはいかがでしょうか。

―― ありがとうございました。

(取材・文 八木麻里恵)

橋香織 氏  プロフィール

笑顔相続コンサルティング株式会社 代表取締役
相続診断士事務所『笑顔相続サロン®』本部 代表

外資系金融機関を経て、ファイナンシャル・プランナーに転身。これまで3,000件以上の相続・お金の悩みを解決した実績を持つ。講演・メディア出演(TBS「Nスタ」「ビビット」テレビ朝日「たけしのTVタックル」など)多数。システムダイアリー社の『エンディングノート』監修。著書には『家族に迷惑をかけたくなければ相続の準備は今すぐしなさい』(PHP出版)、『終活・相続の便利帳』(エイ出版)、などがある。2019年12月には新刊『相続コンサルタントのための初めての遺言執行』を協会理事の木野綾子弁護士と共著で上梓した。
相続コンサルタントを育成するための「一橋香織の笑顔相続道」主宰。

一般社団法人 全国遺言実務サポート協会
所在地:東京都足立区千住東2-1-6 プリモ北千住3F
フリーダイヤル:0120-591-115

葬儀・お葬式を地域から探す