一膳飯と茶碗割り。現代にも伝わるお葬式のしきたり

小林憲行【記事監修】
小林憲行

記事監修小林憲行

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お葬式にはさまざまな習わしやしきたりがあります。現在にも残っているものもあれば、最近では見られなくなったもの。地域独特の慣習もあれば、全国的に見られるものもあります。もちろん、宗旨宗派によって異なる場合もあります。その中で、一膳飯や茶碗を割るというように、ご飯やお茶碗に関わる習わしは、今もなお、全国各地にあるようです。そこで今回は、お葬式とお茶碗について、ご説明します。

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一膳飯とは?

一膳飯というのは、故人にお供えするご飯のことです。枕飯ともいい、逝去後、安置している故人の枕元にお供えします。
古くは日ごろご飯を炊くのに使用するかまどとは別に、新しくかまどを用意して炊いたり、お米を炊くのに使用する鍋も日ごろ使っている鍋とは違う鍋を用いるなど、生きている人の食べるご飯とは区別して用意していたといわれています。お米も研がずに炊くなど、普通のご飯の炊き方とは違う炊き方があったようです。

一膳めしにお箸を立てる理由

故人が生前使用していた茶碗にごはんを盛って真ん中に箸をつきたてます。箸は日本で一番古い歴史書『古事記』にも登場するように、古くから日本人にとって生活に欠かせない、なじみのある道具であると同時に、呪術的な役割もあったようです。

一膳めしに箸を立てる際には、箸を1本だけ立てたり、普通のお箸もと竹の箸を1本ずつ立てたりと、箸の立て方にもいくつかバリエーションがあります。

箸を立てる理由には「お召しあがりください」を意味するというものや「他の人には分けない」という意味があるなど諸説あります。中には「この世とあの世の箸渡し」といった語呂合わせのような説もあります。

箸の立て方については宗旨宗派や地域によっても異なり、中には一膳めしを盛っても箸は立てない場合もあります。菩提寺やお葬式をお願いしているお寺に確認しましょう。

一膳飯を棺に入れる?

出棺の際、一膳飯の中のごはんを棺の中に入れたり、野辺送りが行われてた時代には葬列に一膳飯を持って行き、お墓にお供えするといった風習もあったようです。

仏教では、故人の魂は冥土に着くまで長い旅をすると考えられており、ごはんを棺に入れる行為には「お弁当をもたせる」という意味合いがあります。また、一膳飯に使用していた茶碗はお葬式の後に割るという慣習も見られます。

お葬式で茶碗を割るの意味

葬儀における茶碗の用途として一膳飯と同様に知られているのが、出棺の際の「茶碗割り」です。出棺に合わせて、故人の使っていたお碗を遺族が割る習慣は現在も受け継がれています。

茶碗割りが行われるようになった理由については、故人の魂をあの世へと送り出すことがあります。故人が生前愛用していた食器を割ることで食事をできない状態にし、故人の現世への未練を断つという考えです。また、故人の死出の旅路に愛用の品を一緒に持たせてあげたいという故人を思いやる気持ちもあったようです。

さらに、茶碗割りには遺族が気持ちを整理するという意味合いもあります。故人の遺品を割ることで、悲しみに一段落をつけるという訳です。土葬が主流だった時代、故人の持ち物を壊すことで、別れを意識づける意味合いもあったのかもしれません。

なお、浄土真宗では、亡くなった直後に極楽浄土に行くという考えがあるため、茶碗割りをする必要はないとされています。

茶碗を用意する際の注意点

通常、食器は同じものを長らく使い続けます。そのため、古くから「食器には人間の思いが宿る」とされてきました。また、食事は生きるための力を体に取り入れる行為であり、生の象徴でもあります。故人の生きた証を葬儀では一緒に弔いたいと遺族が考えるようになったのは、ごく自然な成り行きだったといえます。そのため、葬儀で使う茶碗は原則として「生前、故人が使っていたもの」を選びましょう。

一方で、事情によっては故人が愛用していたお碗が見つからないケースもあるでしょう。例えば、介護施設などに入居していたなら、自分の茶碗がない可能性もあります。何か困ったことがあった場合は、お葬式を施行する葬儀社に相談してみましょう。地域の風習などもよく分かっているので、相応しい対応を教えてくれるでしょう。

まとめ

一膳飯や茶碗割りの儀式は、お葬式のかたちが変化する今も、各地で行われています。お葬式と同様、少しずつ変化をとげながらこうした習わしやしきたりも、受け継がれていくのかもしれません。
風習を大切にした葬儀を執り行いたい方や、地域や宗教の伝統を重んじた葬儀を検討されている方は、「いい葬儀」にお気軽に相談ください。それぞれの地域のお葬式に詳しい葬儀社をご紹介いたします。

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