陰膳(かげぜん)とは?法事で精進料理を供える意味とマナー

小林憲行【記事監修】
小林憲行

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  • 陰膳とは、遠く離れて暮らす大切な家族のために用意する食事のこと
  • 陰膳に盛り付けるのは、仏教の教えに沿った「一汁三菜」の精進料理
  • 陰膳の置く位置と作法は、地域や宗派によって変わる

本来「陰膳(かげぜん)」とは、何らかの理由で遠く離れて暮らしている家族のために、その人の分まで食事を用意することです。「影膳」と書くこともあります。

「膳」とは1人分の食器を乗せる小さな台のことで、まだ連絡手段の乏しかった時代、大切な家族が旅先で危険な目に遭ったり飢えたりすることのないように、無事を祈って陰膳を用意していました。今でも故人の極楽往生を願って仏前にお供えしますが、食器の選び方や配置には決まりがあります。

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陰膳のマナー!仏膳の配置と選び方

陰膳で使用する食器のことを「仏膳椀(ぶつぜんわん)」といいます。「霊具膳(りょうぐぜん)」や「供養膳(くようぜん)」など呼び名は多いですが、霊膳を盛るための仏具のことで、「仏膳(ぶつぜん)」と呼ばれる小さな脚付き台の上に5つの食器と箸が収まって構成されています。陰膳では、毎日のお勤めに使用する仏飯器や茶湯器とは別に、大切な法要のお供えとして仏膳椀を用意します。

陰膳の食器類にはそれぞれ名称があり、仏膳に配置する場所が決まっています。まず、膳の中央に置かれるのが香の物(漬け物)を乗せるための「高坏(たかつき)」です。「坏(つき)」とはお椀よりも浅く皿よりも深い食器のことで、高坏には高めの高台(こうだい)が付いています。座席から見て手前の左側が飯を盛るための「親碗(おやわん)」で、右側が味噌汁や吸い物を入れる「汁椀(しるわん)」です。箸の位置は一番手前になります。次いで、座席から見て奥の右側にあるのが小ぶりで深めの「壷椀(つぼわん)」で、あえ物や煮豆を盛ります。奥の左側にある一番大きい器は、煮物やあえ物のための「平椀(ひらわん)」となります。

仏膳椀の色や素材はさまざまです。主流は軽量で手入れがしやすく、比較的安価なプラスチック製のものです。このほか、温かい質感が人気の木製や高級感のある漆塗りなどもあります。漆器は木で作られているものが多く、高温と乾燥に弱い食器です。熱い料理をすぐに盛り付けると傷めてしまいます。手入れの際にも強くこすらず優しく洗うなど、丁寧な取り扱いが必要とされます。

陰膳に盛り付けるのは精進料理

陰膳に盛り付けるのは、仏教の教えに沿って作られる「一汁三菜」の精進料理(しょうじんりょうり)です。特に決まった献立があるわけではなく、野菜のおひたしや煮物、ごま豆腐など、日本人が毎日のお惣菜として食べているものとほとんど変わりありません。

もともとは禅宗の僧が中国で仏教を学んだ際に習得した料理がベースになったとされています。ただし、仏教では生き物を殺すことを「殺生(せっしょう)」と呼んで避けることから、料理にも牛肉・豚肉・鶏肉をはじめ、魚や卵など動物性の食材を使うことはありません。また、「五葷(ごくん)」と呼ばれる臭いの強い植物(ニンニク・ネギ・ニラ・らっきょう・浅葱)には強壮作用があることから、煩悩を刺激して修行の妨げになるとの理由で使うことが禁じられています。

陰膳として用意した食事は、会食が済んだら「おさがり」として家族で残さずいただくことがマナーとなっています。「おさがり」をいただくことそのものが供養となるからです。会場が自宅以外の場合でも、大切な供養のひとつとして必ず持ち帰るようにしましょう。

仏事で陰膳のお供えするときの注意点【浄土真宗と陰膳】

法事をはじめとする仏事で霊膳に陰膳をお供えする場合に、気をつけるべきポイントがいくつかあります。

まず宗派による違いです。 多くの仏教宗派では、故人は49日間の旅を経て極楽に到着すると考えられているのに対し、浄土真宗では、 この世を離れた人は阿弥陀仏の導きによって確実に往生を遂げ、仏となって残された人たちを導くために再び戻ってくるという「即得往生(そくとくおうじょう)」の教えを説いています。そのため、「あの世へ旅立った故人が無事に極楽へたどり着けるように」と願う陰膳は、準備する必要がありません。

次に、料理の向きについては、陰膳は仏さまに召し上がっていただくために用意する料理なので、箸や親碗に近い方を仏壇や祭壇に向けて置くのが基本です。子どもの頃、家に仏壇があったという方の中には、「あの世はこの世と逆なのでお椀の置き方も逆」と聞いた記憶があるかもしれません。正しくは仏さまと向かい合って食事をする格好になるために、こちらから見ると逆になるということなので混乱しないようにしてください。会食の席では、会場の中央上座に故人の位牌と遺影を置いた壇を設け、そこに陰膳を供えます。

ただ、陰膳の置く位置やその作法は地域や宗派によっても変わる場合がありますので、事前に確認をするようにしてください。

故人を偲んで心のこもった陰膳を

古くから離れて暮らす家族の無病安全を願って行われていた陰膳は、今も仏事の慣習として残っています。故人を偲んで心のこもった陰膳を備えたいものです。ただし、宗派や地域によっても違いがありますので、事前に確認しておきましょう。

また、お葬式や法事法要について詳しい話を聞きたいという方や、専門家に見積りの相談をしたいという方は、いい葬儀までお問い合わせください。まだ葬儀社が決まっていないという場合でも、まずは気軽にお声かけください。

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