供物とは、葬儀や法要の場で故人への感謝、遺族への弔意を表すためのお供え物のことです。適切な供物を送り、失礼にならないためには宗教ごとの習慣や考え方に合った品物を選び、マナーを把握しておくことが大切です。
そこで、供物の意味を知り、葬儀や法要での供物の選び方や送り方、宗教別の適した品物、費用の相場、注意点など迷いがちな点について紹介します。
目次
供物とはどんな意味?
供物は、親族や近親者など故人と親しくしていた方が、葬儀などで故人への感謝やご遺族への弔意を形にして送るお供え物です。香典も同じような意味合いを持つため、基本的には香典を送れば供物は必要ないと言えます。ただし、「従業員一同」など連名で供物を送った場合、参列する際には供物とは別に個人で香典を持参するのが一般的です。
香典辞退されたとき供物はどうする?
最近は簡素な葬儀が多くなり、葬儀の案内に「供物・供花を辞退する」旨の文言が記載されていることがあります。この場合、供物は必要ありません。ただし、あくまで供物の辞退であって、香典の辞退ではありません。香典の辞退が明記されていないのであれば、香典は持参しましょう。
反対に「香典辞退」と書かれている場合は供物を送っても失礼にあたりません。弔意・感謝の気持ちを形にして表すことが大切なので、案内状を隅々まで読み、ご遺族の意向を確認してから供物や香典について考えるようにしましょう。
葬儀の供物の選び方【故人の宗教別】
葬儀で、祭壇の隣などに菓子・果物、缶詰などを籠に盛ったものが供えられているのを見たことがある方は多いでしょう。これは盛籠と言い、1万~1万5千円程度で購入できる供物です。ただし、盛籠は高価で大きいため、香典を出す場合は送らないことが多いようです。
香典だけでなく供物も送りたいという場合は、盛籠よりも小さい供物を直接持参するとよいでしょう。
ただし、好きなものを送ればよいというわけではありません。供物として適するもの、適さないものが宗教や地域によっても異なります。失礼にあたらないように、できれば遺族に宗派を確認し、基本的な内容を押さえて選ぶようにしましょう。
仏教のお葬式の供物
果物、日持ちするお菓子、缶詰などが適しています。これらの中で個人が生前好んだものを選んでもよいでしょう。供養に用いるための線香、ろうそく、お香なども送ることができます。
キリスト教のお葬式の供物
供物の習慣はありませんが、生花を送ることがあるようです。
神道のお葬式の供物
果物、日持ちのするお菓子、五穀などが適しています。ただし、仏教とは異なり、海産物などは神の恵みと考えられているので送ってもマナー違反ではありません。お酒も神聖なものとして考えられているため送ることができます。
しかし、知識はあっても突然の訃報を聞いてから供物を準備するのは大変です。個人的に準備する場合でも、担当の葬儀社に依頼すると適切な供物を選んでくれます。重い供物を会場まで持っていく必要もないため、遠方からの参列やご高齢の方におすすめです。
供物で送ってはいけない品物とは
一方、供物として送るのは避けた方がいいといわれる品もあります。
例えば仏式の場合、海産物や肉類など生のものは、殺生を連想させるためタブーだといわれています。アルコールも供物には向きません。
神式の場合、ろうそくや線香は、神前に供えるものとしてふさわしくないとされているため、避けたほうがよいでしょう。
たとえ、故人の好きなものであったとしても、宗教によって禁止されているものは、遺族が不快な思いをすることもあるため、送らないほうが無難です。
葬儀の供物でよく使われる落雁とは
落雁には、葬儀やお盆の時に仏壇に供えられている、花の形をしたお菓子をイメージされる方も多いのではないでしょうか?しかし、実際には、日本各地に名物の落雁が存在します。また茶席で振る舞われることでも知られています。
落雁の作り方
落雁の主な原料は、米粉に代表される麦や豆などの穀物から出来たでんぷん質の粉と、砂糖や水飴と言った糖類です。このふたつ(色を付ける際には食紅も一緒に)をよく練り合わせ、型にはめて成型したら、型から外して乾燥させます。
製造元によって原料選びから型のデザインまでさまざまです。特に、糖類に和三盆(四国の徳島県や香川県で作られる、四国原産の竹糖というサトウキビから製造される砂糖)を使用した落雁は、最高級品とも言われています。
現在では、形だけでなく大きさや色、フレーバーまでバリーエション豊かな商品が販売されています。
落雁が供物として選ばれる理由と由来
仏教では、蓮は泥水の中でも美しい花を咲かせる慈悲や知性の象徴とされ、極楽浄土に咲く花と言われていました。そこで、仏壇に蓮の花を供えるのですが、生の蓮では花が開いている時間も短くお供物には向きません。
そのため、生花の代替品として日持ちのする花の形をした落雁が供えられるようになったと考えられています。
葬儀では、白い落雁が供えられます。白色が仏の世界と縁深い色であることや、日本では元来「弔いの色」であることがその理由と考えられます。
一方、お盆でカラフルな物を供えるのは、仏教でのお盆の由来に関わりがあります。
葬儀の供物の相場
籠に入れて送る供物の場合、金額は10,000円~15,000円が相場だといわれていますが、香典を持参するのであれば、遺族側の負担になりすぎないよう、供物は数千円程度のものにしておくとよいでしょう。
葬儀の供物を送る際の3つのマナー
供物を選び終えてから、参列して供物を送るまでの間に気をつけるべき3つのマナーについて紹介します。
盛籠は相談の上で
盛籠は場所を取るので、葬儀を担当する葬儀社の担当者に相談の上、直接依頼して送るようにしましょう。故人や遺族の意向や式場の規模、雰囲気などを考慮して適切な内容と装飾のものを準備してくれます。
盛籠は深い縁のあった故人に送るものだからこそ、ご遺族の立場に配慮して送るようにしましょう。
のし紙と水引について
のし紙のかけ方には2通りあります。包装紙の外からのし紙をかける「外のし」は、直接持参するお供え物に使われます。のし紙をかけた箱を包装紙で巻く形式の「内のし」は、郵送する供物に使用されることが多い方法です。
基本的にはどちらのかけ方でもマナー違反ではありませんが、葬儀では多くの供物が並ぶため、外から見て分かる「外のし」が好まれます。葬儀社に尋ねるか、供物を選ぶ際に店員に相談するのもよいでしょう。
仏教ではのし紙に「御霊前」「御供」など、神道では「御玉串料」と記します。「御霊前」は喪家の宗教が分からないときにも使えるため便利です。また、関東は黒白5本の結びきり、西日本は黄白5本の結び切りの水引を用いることが多いようです。こちらも地域によって異なる場合があるため、葬儀社に確認しておくと間違いがありません。
供えるタイミングと渡し方
参列者が勝手に祭壇に供物を供えるのはマナー違反です。郵送の場合は、葬儀社のスタッフに頼み、通夜の前日か当日の午前中に届くように手配しましょう。
持参する場合は、受付で「ご霊前にお供えください」と言い、供物を渡します。