枕経の由来や準備、お布施の渡し方

小林憲行【記事監修】
小林憲行

記事監修小林憲行

法要・法事で読経する僧侶
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枕経とは、臨終間近の人の心の平穏のため、または臨終後すぐに故人の浄土への旅の道しるべとするために、枕元でお経を読むことです。

現在では徐々に少なくなってきている枕経ですが、葬儀社や菩提寺に依頼することで、故人のために読経してもらうことができます。お布施は枕経単独ではなく、その他の読経や葬儀のお礼として、初七日の後にまとめて渡すことが一般的です。

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枕経とは?

枕経(まくらぎょう)とは、仏式の葬儀で納棺の前に故人の枕元で読経することです。

危篤の際に親族が家へ集まり、僧侶に依頼して危篤状態の人の枕元でお経を読むことで不安を鎮める。臨終後、霊が迷わず成仏するように導く意味を持って枕経があげるなど、枕経の意味については、諸説あります。古くはインドにもあった習わしで、キリスト教が禁止されていた江戸時代には、遺体の検査としての意味もあったようです。

ただ、宗派によっては死生観の違いから枕経を行わず、臨終勤行(りんじゅうごんぎょう)、または無常経(むじょうきょう)といった呼び名で読経が行われることもあります。

枕経があげられる場面

枕経を上げるタイミングは地域によって異なります

枕経は、以前は日本各地で見られる日常的な光景でした。自宅で臨終を迎える人が多かった時代、自宅に枕飾りを飾り、僧侶を呼んで枕経をあげてもらう方が多かったからです。

しかし今日では、ほとんどの人が病院で死を迎え、住宅事情の変化から自宅に遺体を安置する場所がないケースも多々あります。このような場合は遺体の安置も葬儀の会場も葬祭場が利用されるため、枕経をあげるシーンを見かけることも少なくなりました。

枕経をあげるタイミングは、亡くなった後、すぐに枕経をあげる、通夜の前にあげるなど、地域によっても異なります。時間帯などを決めてあげるものではないので、亡くなってからできるだけ早いタイミングで行われます。

枕経を依頼するときの準備

故人が亡くなってからの儀式として枕経を依頼する場合、まずは遺体を安置する場所を決定して、そこに故人を移動します。自宅の場合は広めの部屋、葬儀社であればスタッフの指示に従いましょう。

枕元には、水や一膳飯、枕団子などのお供えをします

祭壇は不要ですが、枕元には枕飾りを用意します。白布をかけた小型の机や白木の台の上に、香炉、ろうそく立て、花瓶の三具足を置いて飾ります。そのほか水や一膳飯、枕団子など、地域や宗派の習わしに従ってお供えします。これらは葬儀社で葬儀を行う場合、一式揃えてもらうことが可能です。また、自宅で安置をする場合、枕飾りに飾る仏具は日ごろ仏壇に置いて使用している三具足でもかまいません。

枕経の依頼先と枕経

枕経の依頼は、菩提寺にお願いします。菩提寺がない場合、または菩提寺の都合がつかない場合には葬儀社に確認しましょう。依頼する際には、故人の名前、生年月日、享年、死亡時間などを伝えます。

僧侶が到着したら、故人を安置している部屋へお通しして、枕経をあげてもらいます。時間はおよそ30分から40分ほどが目安です。このときに参列するのは遺族だけで、親せきや一般弔問客は参加しません。

服装については喪服である必要はなく、平服での参加になります。ただし、この場合も控えめな色味の服を選び、数珠以外のアクセサリーなどは避けましょう。遺族は枕経があげられている間、僧侶の後方にて故人の冥福を祈ります。

枕経のお布施はお葬式のお布施に含まれる?

地域の習わしや各寺院の考え方にもよりますが、お葬式に関するお布施は、通夜・葬儀のお布施、戒名のお礼。初七日法要を繰り上げてお葬式当日に行った場合などは、それも含めたお礼としてお渡しするケースが多いようです。

枕経単体としてのお布施だけでなく、葬儀全体のお布施を手渡します

このため、枕経をあげてもらったとしても、枕経単独でお布施を渡すことはあまりありません。お布施の目安を考えるときは枕経のみではなく、お葬式のお布施全体を考えると良いでしょう

のし袋の表書きは「お布施」「御布施」などとなります。宗派によっては注意が必要な場合があるので、事前に確認することが望ましいでしょう。使う墨は、僧侶へのお礼の意味なので、遺族への弔意を表す香典とは異なり、薄墨ではなく通常用いる墨で問題ありません。

お布施は直接手渡すのではなく、切手盆と呼ばれるお盆などに載せて渡すのがマナーです。お盆が準備できないときには、袱紗に入れて渡します。

枕経での服装

喪服である必要はありません。元々枕経というのは故人のために挙げるものではなく、まだ生きている段階で挙げるものだからです。また、枕経は訃報を受けてからすぐに行うものなので急な場合もあります。そのような時には、喪服が用意できない場合もあるはずです。

ただし、派手な服装はなるべく避けるのが常識的です。アクセサリー類では、身につけてよいのは結婚指輪のみです。ご焼香がある場合に備えて数珠を持参しておきましょう。

枕経の宗派ごとの違い

枕経の内容は宗派によって異なります。ここでは一般的な宗派の基本的な内容をご紹介いたします。

浄土宗の枕経

まずはじめに、勧請を行い「十方如来世尊・世尊・釈迦如来」を呼び、仏に懺悔をします。そして、剃刀を故人の頭に当てて十念を読み上げ、仏門に帰依させて戒名を授けます。

それが終わると読経に入りますが、その前に「開経偈」という偈を読みます。これは、教えのすばらしさを説くためです。

読経では、「四誓偈」や「阿弥陀経」「仏身観文」などを読み上げます。

読経後は、「聞名得益偈」「発願文」「摂益文」を順に読み上げていき、南無阿弥陀仏を繰り返して唱えます。最後にこれまでの工程の救いを他方に向けて、共に救われるという旨の「総回向偈」を読み上げます。

曹洞宗の枕経

「舎利礼文」や「遺教経」といったお経を3回読み、回向文を申し上げます。

臨済宗の枕経

「大悲心陀羅尼・観音経」を読経し、最後に和讃などで締めます。

浄土真宗の枕経

浄土真宗では、枕経とは言わずに「臨終勤行」と言います。お勤めも、故人の枕元では行わずに、仏壇や掛け軸に向かって行います。読経を読み上げる前に仏壇の燈明に火を灯して、故人に法名を授けます。読経では、「正信偈」や「仏説阿弥陀経」を読み上げます。

日蓮宗の枕経

日蓮宗は、浄土宗と似ている部分があります。読経の前に、勧請を行い諸仏や諸尊を招いて、「開経偈」を読み上げます。

読経後、「祖訓・唱題・宝塔偈」の順に読み上げて、回向します。

真言宗の枕経

「般若理趣経・慈救の呪・陀羅尼・光明真言・御宝号」の順で唱えていきます。

枕経とお車代

枕経では、自宅に僧侶を呼んで読経してもらうこともあります。その場合は僧侶に対して、交通費の意味でお車代を渡すことになります。

お車代の相場は、5,000円から1万円と言われています。用意する際は、「お車代」と書いた封筒に入れてください。こちらはあとでまとめて渡すお布施とは異なり、お経を読んでもらった当日に手渡すべきものですので、忘れないようにしましょう。

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