通夜やお葬式、法事では、喪服を着るのが一般的。ですが、喪服とはどんな服装なのか、礼服やスーツと何が違うのか、知っている方は少ないかもしれません。
この記事では、喪服の種類や特徴、着こなしのマナーなどを解説。間違いやすい礼服・スーツとの違いやオススメの購入場所も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
▼喪服のプロが解説!
礼服と喪服、実は違う?特徴や着用シーン
目次
喪服とは?喪服を着る意味と歴史
喪服とは、通夜や葬儀、法事などの弔事で着る衣服で、「喪に服している」ことを意味します。
現代では黒い喪服が一般的ですが、かつては白かったんだとか。日本でお葬式に参列するときに、黒い喪服を着るようになったのは、明治時代からです。
1897年、英照皇太后(えいしょうこうたいごう/明治天皇の嫡母)の大喪で、西欧化を推し進めていた明治政府が、西洋の葬祭儀礼にならって喪服を黒にそろえたのがきっかけ。
明治時代には、大喪や国葬、軍人の葬儀などで、西洋式の礼服や軍服とともに黒の喪章が着用されるようになりました。上流階級だけでなく、葬儀を目にした一般人にも「葬儀の色=黒」として黒い喪服が浸透していったようです。
礼服と喪服の違い
礼服とは、成人式や結婚式、葬儀、正月など、冠婚葬祭全般で着用するフォーマルウェアのこと。対して、通夜や葬儀、法事など、冠婚葬祭の「葬」にあたる儀式で着用する礼服を喪服と呼びます。
つまり、喪服は礼服の中の一部。
喪服は弔事のみですが、礼服は弔事を含めたさまざまな式典で着用します。
喪服とビジネススーツの違い
喪服 | スーツ | |
---|---|---|
色 | 漆黒・墨黒 | 明るめの黒 |
光沢 | 光沢がない | 光沢がある |
シルエット | ゆったり | スリム |
喪服とビジネススーツには、大きく3つの違いがあります。
1つ目は色。同じ黒色でも喪服は漆黒・墨黒、ビジネススーツはやや明るめ・グレー寄りです。
2つ目の違いは光沢。喪服は生地に光沢がなく、ビジネススーツは光沢があります。ビジネススーツは布の織り目が大きく、ポリエステルなどが混紡されているため、生地が光を反射します。
3つ目の違いはシルエット。喪服はゆったり、ビジネススーツはスリムなデザインです。日常的に着用するスーツは、体形にフィットするように作られています。一方、着る機会の少ない喪服は、ゆとりのあるシルエットにすることで、長く着用できるようになっています。
喪服とビジネススーツは、色、光沢、シルエットから一目で違いがわかるので、急なお通夜以外の弔事で着用するのは避けましょう。
礼服の種類。正礼装・準礼装・略礼装の違い
正礼装 | 準礼装 | 略礼装 |
---|---|---|
モーニングコート 燕尾服 | ディレクターズ スーツタキシード | ブラックスーツ ダークスーツ |
礼服は、正礼装・準礼装・略礼装(略礼服)の3つに分かれます。
ここでは、男性の礼服を例に、それぞれの特徴と違いを解説します。
正礼装
正礼装は、礼服のなかでもっとも格式の高いフォーマルな服装。結婚式・葬儀で人をもてなす主賓や、式典・パーティーの出席者が着用します。
具体的には、モーニングコートと燕尾服、2つの服装が正礼装です。
モーニングコートは昼間の正礼装で、結婚式の新郎や葬儀の喪主が着る礼服。後ろの裾が長く、斜めにカットされているジャケットが特徴で、白のウィングカラーシャツとストライプのズボンを合わせるのが伝統的なスタイルです。
燕尾服は、夜の正礼装とされていて、ジャケットの後ろの裾が2つに割れているのが特徴。別名「ホワイトタイ」とも呼ばれ、オーケストラの指揮者や演奏者がよく着用しています。燕尾服には、ホワイトベストと白い蝶ネクタイ、また胸当てのついた白のイカ胸シャツを合わせるのがマナーです。
準礼装
準礼服は、正礼装の次にフォーマルな服装。主催者の親戚や上司など、一定以上の立場がある方が着用します。
具体的な準礼服は、ディレクターズスーツやタキシード。
ディレクターズスーツ、昼間の準礼装で、黒無地でピークドラペルのジャケットにグレーのベストを合わせます。ズボンは、モーニングスーツと同じ、黒とグレーのストライプを履くのがマナーです。
タキシードは準礼服とされていますが、最近は夜の正礼装としても着用されています。別名「ブラックタイ」と呼ばれ、白のウィングカラーシャツに黒の蝶ネクタイを合わせるのが基本。ジャケットは、下襟が尖ったピークドラペルか、へちまのような形をしたショールカラーを選びます。
略礼装(略礼服)
略礼装(略礼服)は、礼服の中でもっともカジュアルな服装。具体的な衣服としては、ブラックスーツとダークスーツを指しています。
ブラックスーツは、光沢のない漆黒のジャケットとズボン、白シャツを合わせるのが定番。ダークスーツは、濃いネイビーやグレーなど、暗くて落ち着いた色合いのスーツを選びます。
慶弔どちらでも着用できますが、結婚式では白やシルバーのネクタイ、葬儀では黒のネクタイを選び、場面に応じてスタイルを変えましょう。
喪服の種類。正喪服・準喪服・略喪服の違い
正喪服 | 準喪服 | 略喪服 |
---|---|---|
モーニングコート 紋付羽織袴(和装) | ブラックスーツ | ダークスーツ |
礼服と同様、喪服も正喪服・準喪服・略喪服の3種類に分けられます。
男性の喪服を例に、それぞれの違いと特徴を解説します。
正喪服
正喪服はもっとも格式高い喪服。着用するのは、喪主や三親等以内の遺族など、葬儀の主催者です。
男性の場合、洋装なら黒のモーニングコート、和装なら黒の紋付羽織袴を着ます。モーニングコートは黒のジャケットに、黒とグレーの縞模様のズボンを合わせるのが基本。またワイシャツは白色で、ネクタイやベルト、靴下、靴などの小物類はすべて黒色で統一します。
準喪服
準喪服は正喪服の次に格式高い喪服で、世間一般でいう「喪服」は準喪服を指しています。葬儀に招かれて参列する場合は、準喪服を着用しておけば問題ありません。
また、男性の準喪服はブラックスーツです。光沢のない漆黒のジャケットとパンツ、白いワイシャツを身に着けます。正喪服と同様、ネクタイやベルト、靴下、靴などの小物類は黒色に揃えましょう。
略喪服
略喪服は、「平服」とも呼ばれる略式の喪服のこと。急な通夜や弔問、遺族から「平服」の指定があったときなどに着用します。
男性の略喪服は、黒や濃紺、グレーなどのダークスーツ。正喪服・準喪服と同じく、白いワイシャツを合わせ、小物類は黒でまとめるようにしてください。
【男性】立場・場面別の喪服マナー
喪主・親族(招く立場)
通夜
葬儀の主催者側は、参列者より格式高い服装をするのがルール。喪主・親族として通夜に出席する場合は、準喪服のブラックスーツを着用しておくのが無難です。
ただし突然の訃報で喪服を用意できなかったり、身内だけで通夜をしたりする場合は、略喪服(平服)のダークスーツを着用しても問題ありません。
葬儀
喪主・遺族などの主催者側として葬儀に参列するときは、正喪服を着用するのが正式なマナーです。和装なら紋付羽織袴、洋装ならモーニングコートを着用します。
ただ最近は正喪服をもっている人が少なくなり、喪主・遺族が準喪服のブラックスーツを着用する例も珍しくありません。ブラックスーツを着てもマナー違反にはなりませんが、参列者をおもてなしする立場にふさわしい服装を心がけましょう。
参列者(招かれる立場)
通夜
一般の参列者として通夜に出席するときは、略喪服のダークスーツを着るのが好ましいです。通夜で準喪服を着ると、遺族から「故人の死を予期していた」と捉えられる可能性があるため、タブーとされています。ただしネクタイや靴下が派手な色柄だと目立つので、黒で統一するのがマナーです。
また訃報をもらってから通夜まで時間がある場合は、ブラックスーツを着て参列してもマナー違反になりません。
葬儀
葬儀に参列する場合は、準喪服のブラックスーツを着用するのが最適。喪主より格式の高い正喪服や、略式の略喪服を着用するのは、遺族に対して失礼にあたります。
黒無地のジャケットとパンツ、白いワイシャツを着て、小物類はすべて黒にしてください。
【女性】立場・場面別の喪服マナー
喪主・親族(招く立場)
通夜
喪主・親族として通夜に参加する場合、準喪服を着用するのが基本です。
女性の準喪服は、黒無地でツヤのない生地のワンピースやアンサンブル、セットアップなど。いわゆる「ブラックフォーマル」と呼ばれる服装で、靴やバッグも黒色で統一します。
また、弔事では過度な露出は厳禁とされているため、足元は黒で30デニール以下のストッキングを履いてください。その他、スカート丈やジャケットの袖丈、襟元まで気を配りましょう。
葬儀
喪主・親族として葬儀に招く立場の場合、正喪服を着ておもてなしするのが正式なマナー。女性の正喪服は、和装なら染め抜き五つ紋で黒無地の着物、洋装ならブラックフォーマルです。
和装のときは、着物だけでなく、帯や草履、バッグなども黒色で統一してください。洋装は準喪服と同じブラックフォーマルですが、参列者より格式高い服装になるよう注意します。
参列者(招かれる立場)
通夜
通夜に参列するときは、略喪服を着用するのが一般的。女性の略喪服は、黒・紺・グレーなど、落ち着いた色のワンピースやスーツが適しています。また素足はタブーとされているので、黒で薄手のストッキングを忘れず着用しましょう。
準喪服のブラックフォーマルを着用しても問題ありませんが、遺族側より格式が高くならないよう気を付けてください。
葬儀
一般参列者として葬儀に参加する場合は、黒のワンピースやアンサンブル、セットアップなど、準喪服のブラックフォーマルを着用します。漆黒で光沢のない生地で、派手な装飾のないデザインを選びましょう。
また、足元は薄手の黒ストッキングを履き、靴やバッグなどの小物類も黒色で統一します。ちなみに、葬儀でつけてよいアクセサリーは、結婚指輪とパールの一連ネックレス、パールの一粒ピアス(イヤリング)です。それ以外のアクセサリーは必ず外して参列するようにしましょう。
センスのいい喪服を買うなら紳士服専門店
ひとくちに喪服といっても、色やデザイン、サイズはさまざま。また最近は専門店だけでなく、ユニクロやしまむら、イオンなどの量販店でも喪服を扱っていて、どこで購入するか悩んでしまう方もいるかもしれません。
ですが、喪服を購入するなら紳士服専門店を選ぶのが一番。
紳士服専門店は、質が高いのはもちろん、流行のデザインからベーシックな喪服まで、幅広く取り扱っています。品があり、長く大切に着られる喪服ばかりなので、失敗する心配がありません。
着る機会が少ない喪服は、長く愛用できるよう、センスのいい上質なものを選ぶべき。喪服の購入や買い替えを検討されている方は、紳士服専門店を利用してみるのがオススメです。
立場と場面に合った喪服を正しく着こなそう
喪服は、ご自身の立場や場面によって、ふさわしい種類が変わります。状況に合わせて最適な喪服を選び、正しい着こなしで通夜や葬儀に参列しましょう。
もし喪服を持ってなかったり、古びたりしているなら、新しく購入するのがオススメです。1着手元に置いておくなら、汎用性の高い準喪服を選ぶとよいでしょう。男性ならブラックスーツ、女性ならブラックフォーマルを買っておけば、葬儀で困る場面が少ないです。
お近くの紳士服専門店に行くか、紳士服専門店のネット通販を利用してみてはいかがでしょうか。