法相宗とは飛鳥~奈良時代にわたって興りました。奈良仏教系という呼び方もあり、日本で仏教が成り立っていく中で大きな影響を残しました。法相宗の原形はインドの思想にあり、中国の玄奘三蔵が持ち帰って開いたのが始まりです。総本山は奈良県にあります。法相宗は他の宗派と少し異なり、葬礼や法事をしませんでした。そのため、葬礼をする際は、他の宗派にお願いする必要があるのです。埋葬先、墓地についてもあらかじめ相談しておくのがいいでしょう。
法相宗の歴史
法相宗とは、飛鳥時代から奈良時代にわたって開かれた奈良仏教系の宗派のひとつで、日本の仏教の成り立ちに大きな影響を与えました。
法相宗の教義の原形は、7世紀初めのインドの思想にあります。まず初めに中国から、西遊記でも有名な玄奘三蔵がインドへ訪れました。玄奘三蔵は、当時のインドの思想である唯識教学を数十年かけて習得して、中国へ持ち帰りました。持ち帰った後、唯識教学を中国に伝えるため、法相宗を新たに開きました。日本に伝わったのは、飛鳥時代のころだと言われています。日本の僧侶である道昭が当時の中国である唐に留学し、法相宗の教示を学びました。数年後、道昭は法相宗に伝えました。大僧正の行基もこの教示を留学した僧侶から聞いており、後に行基が成し遂げた功績の根本の思想にもなったようです。
法相宗の宗派とは
奈良仏教は6つの宗派があり、合わせて南都六宗と呼びます。法相宗以外の宗派は律宗、華厳宗、三論宗、成実宗、倶舎宗です。現在まで続いているのは律宗と華厳宗、法相宗のみです。開基当時から南都六宗と呼ばれていたわけではなく、後の平安二宗(真言宗・天台宗)と対比する形でつけられた呼び名です。
法相宗の特徴とは
平安仏教、鎌倉仏教は民草の救済に比重が置かれていたのに対して、法相宗を含めた南都六宗は仏教の教示の追究に重きを置いていました。さらには教示の追究だけでなく、全国の各地で橋を架けたり、井戸を作ったりなど、慈善活動による布教行っていたことがわかっています。
また、キリスト教を排除する目的で江戸時代に檀家制度が設けられた結果、民衆はいずれかのお寺の檀家になることが求められました。しかし、法相宗を含め、南都六宗には檀家制度がありません。江戸より古いためと説明されることがほとんどです。しかし、実際は法相宗が学問や経典の研究を中心とする宗派であり、葬礼や法事といった儀礼や祭りなどの祭礼を一切執り行わなかったため、檀家が必要なかったというのが主な理由のようです。その証拠に、信仰と布教活動の一環で儀礼として葬礼も行っている平安仏教は、檀家制度を採用しています。
こうした歴史的背景から、法相宗の葬礼は他の宗派にお願いする形で執り行われるようになりました。
法相宗の総本山はどこなのか
法相宗は飛鳥時代から奈良時代にかけて広まった仏教なので、その総本山は奈良県に位置しています。総本山と言われているのが薬師寺と、五重塔で有名な興福寺です。法隆寺もかつては総本山のひとつでしたが、第2次大戦後に聖徳宗を名乗り、脱退しました。
唯識論とは
法相宗における、物の見方の原形である唯識論とは、インドの思想です。
言葉の通り、ただ心だけが世界にあるという意味です。人間は物質的な「物」だけではなく、心理的な現象もそこにある存在だと認識しているのではないか、という見方のことを指します。また、深層意識である「阿頼耶識(あらやしき)」「末那識(まなしき)」がが心の中にあるとしています。法相宗はこの教示を独自に発展させ、この世のすべての存在は心である、という考えを追究することを目的とするようになりました。このような考え方を「唯識無境」と言います。
具体的に言うと、いま私たちは同じ世界を共有していると考えていますが、実際は心の外側に具体的な存在はなく、それぞれの心が阿頼耶識(あらやしき)の生み出した世界を認識しているという解釈になります。
法相宗では、このような思索を経て仏教の教示の根源である無我の境地、自分は存在しないという悟りにたどり着くとされています。日本には多くの宗派が存在しますが、法相宗の考え方はあまり例がなく、哲学的で独特な考え方であると位置付けられています。
法相宗の葬礼は他の宗派より大変?
一般的に葬礼をする時は、その人の宗派に沿って執り行います。しかし、法相宗には檀家がないため、他の宗派に葬礼をお願いする必要があります。そのため、どこの宗派にお願いするのか、段取りはどうするのかの相談や確認が必要です。埋葬先も、葬礼をお願いした宗派の墓地か、宗旨不問の霊園になります。故人が法相宗の方である場合は、綿密に段取りをするようにしましょう。
まとめ
法相宗は奈良仏教のひとつで、独自の考え方を追究する宗派です。特に、葬礼関係の儀礼をまったく行っていないという点が、他の宗派と大きく異なります。そのため、葬礼は他の宗派に依頼して執り行わなければなりません。葬儀社を決めかねている方、見積もりがほしいとお考えの方は、ぜひお気軽にお問合せください。