独り暮らしの高齢者を見守る仏具をつくる。そんなプロジェクトが動き出そうとしています。仏具の”おりん”を使ったみまもりIoTプロダクト「みまもりん」。おりんを鳴らすことで、「元気でいる」ことを、離れて暮らす家族のもとに届けます。
日ごろの何気ない習慣が安心を届ける、仏壇仏具を活用した新しい見守りプロジェクトです。
おりんIoTプロジェクトとは?
高齢者の一人暮らしには、さまざまな「心配なこと」があります。中でも最も心配なことのひとつが、孤独死・孤立死と呼ばれるものです。
逝去されたときに近くに誰もいないために、亡くなったことに気付かれることなく、発見が遅れてしまうというもの。
遺族をはじめ、故人を知る人々にとって大きな精神的な負担となるだけでなく、遺体の損傷が進むと臭いや染みなど、部屋主をはじめ近隣の方々へも深刻な影響を与えてしまいます。
こうした事故を未然に防ぐという目的で生まれたのが、仏具×IoT「みまもりん」による見守りプロジェクトです。
おりんの下にセンサーを付けた台を置くことで、おりんを鳴らした時の音、または振動を感知し、離れて暮らす家族など、事前に登録した方のスマートフォンへと通知する仕組みです。難しい機械を操作する必要はなく、いつも通りにおりんを鳴らすだけでOKなので、年配の方にとっても使いやすい、優しいみまもりのかたちです。
背景にある孤独死という問題
このプロジェクトを発案、推進する作島寛さんは、京都で古くから続く仏壇店、株式会社作島を経営しています。
そんな作島さんが「どうしても実現したいこと」というのが、「独居老人とその家族全員に、仏具を通して、毎日安心を届けること」です。「日々の何気ない習慣を引き金に、ご家族に今日も元気にしているということがわかるお知らせが届いたら?」という思いから、このサービスを考案しました。
このプロジェクトのきっかけとなったのが、半年ほど前のある日、作島さんが仏具を購入してくれた独り暮らしのおばあさんの家に伺ったことにありました。
もともと知り合いのお坊さんから、「独居老人を救えないだろうか?」という相談を受けていたという作島さん。日ごろから年配の方々とかかわることは多い反面、正直あまりピンときては無かったそうです。
そんな中、そのおばあさんの家に伺うと「最近足を悪くしてしまい、外に出ることや人と会うことがめっきり減ってしまった」と、いつ何が起こるかわからない、漠然とした不安を打ち明けてくれました。おばあさんの出してくれた麦茶を飲んで話を聞きながら、ふと見ると、仏壇にあったおりんが目に入りました。ここから、おりんを使って独居老人をサポートするというプロジェクトが生まれました。
自宅で亡くなった高齢者が家族に発見されるのは3割未満
高齢者の独居生活に関わる問題は、このおばあさんだけに限った問題ではありません。
例えば、東京都23区で死因がわからず急に亡くなられた方々や事故などで亡くなられた方々の死因を明らかにしている東京都監察医務院のデータによると、2016年に65 歳以上の一人暮らしの者で自宅で亡くなった方は3,179人です。
さらに、死亡時の発見者を見ると、家族は3割未満にとどまります。
自宅で亡くなった高齢者の死亡時の発見者
また、孤独死の発見までにかかる時間は、平均17日(2018年3月2日 一般社団法人日本少額短期保険協会 孤独死対策委員会「第3回孤独死現状レポート」より)という調査結果もあります。この資料を見ると、およそ4割の方が3日以内に発見されていますが、もしもう少し発見が早ければ最悪の事態を避けることもできたかもしれません。また、発見されるまでに1ヵ月以上かかったというケースも16.5%と決して少ない割合ではありません。
クラウドファンディング「Makuake」で賛同者を募集
仏具×IoT「みまもりん」プロジェクトでは、このプロジェクトに賛同してくれる人をクラウドファンディング「Makuake」で募集しています。期間は2019年2月23日までで、目標金額は300,000円。集まった費用は全額、試作製品の開発・製作とします。
まとめ
独居老人、孤独死、孤立死といった問題は、決して他人ごとではありません。今は配偶者と暮らしていたとしても、将来、どちらかが先に旅立ったとしたら?遺された方は独りで暮らすことになるかもしれません。