今でも日本の一部地域で行われている、洗骨とは?

小林憲行【記事監修】
小林憲行

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洗骨(せんこつ)とは、風葬や土葬した遺骨を、何年か経過した後お酒などで洗い清め、お墓に埋葬する習わしのことです。

日本では現在、沖縄県や鹿児島県奄美群島の一部にしか残ってない風習ですが、世界的にみるとオセアニア、東南アジア、中国、アフリカ、インド洋諸国など、広い地域で行われている風習です。今回は洗骨が行われる理由や日本における歴史、儀式の仕方などについて、詳しく解説していきます。

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洗骨の意味

洗骨とは風葬や土葬した遺体が何年か経過して骨だけになったころに掘り起こして、お酒や海水などを用いて洗い清めて、お墓に埋葬することをいいます。世界でも、オセアニア、東南アジア、中国、アフリカ、インド洋諸国など、広く行われている風習です。

では、何のために洗骨を行うのでしょうか。

世界中にさまざまな説があるようですが、有力な説としては、遺体を埋葬しただけでは子孫に災いをもたらす、危険な存在「死霊」の状態のままであり、その状態を回避するために第二の葬儀という形で洗骨を行うそうです。そして骨を洗い清められた死霊は、子どもや孫に幸福や豊穣をもたらす「祖霊」に昇華すると考えられています。このような場合、洗骨によってはじめて死が完了するともいわれています。

日本での洗骨の歴史

日本でもかつて沖縄や奄美諸島あたりで、洗骨をする風習がありました。沖縄では「洗骨(シンクチ)」、奄美諸島では「改葬(カイソウ)」と呼ばれ、実は現在でも、一部の離島などでは、洗骨の風習が残っています。

これらの地域でも洗骨を実施する理由には違いがあるそうなのですが、主に「死者(洗う前の骨)はけがれているもので、神や仏の前に出られない」という信仰から、洗骨が行われているようです。この「骨を洗う」という儀式は、琉球王朝の王室でも戦前まで執り行われていたという文書が伝えられています。

また、与論島では元々共同墓地で風葬を行うのが一般的でしたが、明治時代になり「風葬は死体遺棄罪に該当する」との理由から、風葬が廃止となりました。そのため土葬をしてから、3~7年後に遺体を掘り起こし、洗骨を行うという「洗骨葬」の形式に変化したといわれています。洗骨葬を行う頃合いは、地域や島ごとに違いがあるようですが、ほとんどの場合、七夕の日に実施されていました。

一般的な洗骨葬の流れ

では実際、洗骨葬はどのように執り行われていたのでしょうか。

沖縄の洗骨葬の場合では、洗骨の日になると遺族や故人関係者が集まり、まずはお墓を開ける前にお香をたきます。そして男性が中心となって土葬されている棺を取り出し、女性が棺のふたを開け、故人の親族の女性が遺体を焼酎などで洗い清めます。万が一、骨に皮が付いている場合は、丁寧にはがしながら洗っていきます。その際、遺体が日差しに当たらないように、日傘や幕で日差しを遮ります。

最後に、遺骨を甕に納めてお供え物を添え、洗骨の儀式は終わります。

洗骨後は、男性のみがお酒を飲むことができる宴会が行われ、女性は宴会の準備や参列者の接待、片づけをします。このように洗骨の儀式は、故人の肉親の女性や特に長男の嫁が行うものとされており、女性にとって残酷かつ過酷な儀式であったようです。

しかし、洗骨葬は衛生的にも問題があり、なおかつ身近な人の骨を洗うという残酷な風習であったため、沖縄県の女性解放運動と火葬の広がりも影響し、戦後には特定の地域以外、洗骨の風習は姿を消していきました。ですが、現在でも年配の人の中には、この形で葬儀を望む方がいるようです。

改葬や墓じまい、散骨する際に行われる「洗骨」

風習として実施される洗骨以外にも、納骨や改葬、墓じまいのためにお墓から骨壺を出した際に、汚れた遺骨を洗骨することがあります。

改葬に伴う洗骨

遺骨が汚れる原因としては、骨壺のふたが外れていた、骨壺が割れていた、土砂が流入した、雨水が骨壺に溜まっていたなど、さまざまです。

また、遺骨をさらしの袋に入れてお墓に納めていたり、お墓の中に直接撒く方法で納骨していたりすると、遺骨が土まみれになっている場合があります。これらの遺骨は、単に汚れているだけではなく、カビが生えている、湿っている、悪臭があるなど、衛生的にもよくありません。

一般的なお墓への引っ越しであれば洗骨の必要はないですが、納骨堂や永代供養墓などに遺骨を納め替える場合は、遺骨をきれいにし、乾燥させてから納めることが求められていることがあります。

散骨の準備で行う洗骨

さらに、お墓にある遺骨を散骨する場合も、粉骨の際に洗浄して乾燥させる必要があります。

比較的きれいな遺骨であれば、ご自身で洗骨することも可能ですが、洗骨に抵抗がある方や周りの目が気になる方、納骨堂や永代供養墓などに遺骨を納めようとしている場合であれば、専門の業者にお任せするのが望ましいでしょう。中には特殊な機械を駆使し、洗浄・乾燥以外にも、除菌や消臭処理を行ってくれる業者もあります。

まとめ

今でも日本の一部地域で行われている「洗骨」について、その目的や歴史、一般的な洗骨の流れなどを中心にご説明してきました。あまりなじみのない言葉(儀式)ですが、改葬や墓じまい、散骨する際に行われる「洗骨」に関しては、興味のある方もいらっしゃるかと思います。「どこに依頼したらいいの?」「いくらくらいでできる?」など、ご質問、ご相談がありましたら、お気軽にお問い合わせください。

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