観音経と観音菩薩

小林憲行【記事監修】
小林憲行

記事監修小林憲行

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観音経(かんのんぎょう)とは、法華経(ほけきょう)の中の「観世音菩薩普門品第二十五」という一章の別名です。法華経は大乗仏教の経典の一つで、天台宗や日蓮宗をはじめ、禅宗でも重視されています。

観音経は、一心に慈悲深い観音菩薩を心に念じその名前を唱えることで、苦しみのときに菩薩が人々を救うと考えられています。観音経が唱えられる場面には、臨済宗の遺骨安置の際などが挙げられます。

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観音経ってどんなお経?

仏教の経典は多数あります。どの教えを大切にするかによって宗派が分かれています。では観音経とはどのようなお経で、仏教のどの宗派で重視されているのでしょうか?

観音経と法華経の関係

観音経は昔から般若心経と並び日本人に親しまれてきた経文です。法華経の中の一章で、詳しくは「妙法蓮華経観世音菩薩普門品偈」といいます。元は単独で読まれたものが法華経に一度取り入れられ、後代に再び人気のある経典として、別出して読まれるようになりました。

法華経とは大乗仏教の最も重要な経典の一つで、「諸経の王」ともいわれています。お釈迦様が晩年に説いたもので、以後アジア諸国に広まりました。日本には聖徳太子の時代に伝わっています。全八巻二十八品で構成されていて、漢訳として伝わっているものに「正法華経」「妙法蓮華経」「添品妙法蓮華経」の三種があります。現在日本で一般的に『法華経』と呼ばれているのは、中国の仏典翻訳僧・鳩摩羅什(サンスクリット名:クマーラジーバ)が訳した「妙法蓮華経」です。

今日の仏教は多くの宗派がこの法華経に基づいており、特に天台宗・日蓮宗は法華経の教えを主としています。禅宗においても曹洞宗や臨済宗などの宗派で重視され、古くから宗派の垣根を越えて読まれてきました。

法華経においては平等思想を示す「万人の成仏」の概念があり、誰もが平等に成仏できるという仏教思想の原点が説かれています。成仏とは、一般的には死んでこの世に未練を残さず仏となることや、死ぬことをいいますが、仏教の成仏では、煩悩を断ち仏教の究極の目的である悟りに到達することを意味します。

観音経の教えとは

では、観音経はどんな内容の教えなのでしょうか?

観音経は詩的な文章(韻文)が用いられ、観世音菩薩の偉業が記されています。はじめに、観世音菩薩の優れた修業については、「広い誓願で、清らかな願いを起こした」とあります。

観音経には、「観世音菩薩はその神通力をもって三十三の姿を現して教えを示し、人々を救う」と説かれています。これは、観世音菩薩の『三十三身』といわれており、京都にある三十三間堂の名称の由来にもなっています。

観音経では、「南無観世音菩薩」と唱えます。観音経の理念は、「心から観世音菩薩をたたえれば、必ず救われる」という精神です。

経文の中に観世音菩薩を疑うことなく、一心に念ずるようにという文があります。苦しみのときに、一心に菩薩を念じその名前を唱えることで、人々は救われると説いています。観世音菩薩は現世利益を人々にもたらすとあります。

また、「観世音菩薩は、苦しみや死の苦難が訪れたときに、最後のよりどころになる」として、観世音菩薩の功徳と慈悲深さを説いています。現世に生きる人々の苦しみのときに、観世音菩薩が救いに来ると考えられているのです。

観音経の観世音菩薩とは

観音菩薩は、観世音菩薩の略称です。観自在菩薩ともいわれています。観音菩薩は、音を観る菩薩と書きますが、この由来は観音経にあります。観音経の中で、観世音菩薩は「衆生の苦悩の音声を観じて救う」とあり、人々の苦悩の声や音を観て、救う菩薩とされています。

菩薩とは、「悟りを求める人」のことで、如来のように完全に悟った存在ではなく、仏の悟りに向かって努力している人です。仏の位の次にあり、悟りを求め、衆生を救うために多くの修行を重ねる者を指します。観世音菩薩は、阿弥陀如来から遣わされ、三十三の姿で現世の人々を救うといわれています。

観世音菩薩を念ずるお経には、延命十句観音経という短いお経もあります。その名の通り、十句からなる経文です。

葬儀と観音経を用いる仏教の宗派

通夜や葬儀で読まれるお経は数種類あり、必ず読むお経が決まっているわけではありません。ですが、宗派ごとによく用いられるお経、というものはあります。

観音経は、天台宗で用いられることの多いお経の一つです。天台宗の葬儀では、「法華経」を読んで懺悔します。本尊や唱える経文に特別な定めはありません。臨済宗では、観音経が枕経として用いられることもあります。遺骨を安置する際の法要でも唱えられます。

日蓮宗は「法華経」を最も重要な経典とする宗派です。葬儀の読経は、「法華経」の中でも特に重要とされる諸品を唱えます。

曹洞宗も、観音経をよりどころとする宗派の一つです。

このように、多くの宗派で観音経は用いられているため、葬儀など、さまざまな機会に耳にすることがあります。

>>【仏教宗派とお葬式】天台宗・真言宗・浄土宗・浄土真宗・臨済宗・曹洞宗・日蓮宗の違いとお葬式について

まとめ

観音経は広く親しまれているお経です。葬儀などで耳にすることもあります。お葬式は個人との別れを惜しむ、大切なひと時です。最後は、故人の親しみのあるお経で見送りたいという方もいらっしゃることでしょう。

このような葬儀に関して規模や流れを相談したい方や、葬儀のお見積りをしたい方、葬儀社にお悩みの方は、「いい葬儀」までお気軽にご連絡ください。

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