遺骨引き取りの義務は誰にある?引き取り拒否できる?法律上の観点で解説

小林憲行【記事監修】
小林憲行

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  • 遺骨を引き取る義務は、遺族から1人だけ選ばれる「祭祀継承者」にある
  • 祭祀継承者とは、祭祀財産の管理や、故人の年忌法要の主催を行う人
  • 相続放棄をしても、祭祀継承者の権利を放棄することにはならない

火葬場で故人の遺体を荼毘に付したあと、遺骨を引き取るのは誰でもいいというわけではありません。この記事では、遺骨の引き取り義務が誰にあるのか、遺骨の受け取りを拒否できるのか、法律上の定義を踏まえながら解説します。

遺骨の対応について遺族で揉めるケースも少なくないので、あらかじめ知っておきましょう。

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遺骨の引き取り義務は「祭祀継承者」にある

遺骨の引き取りは、遺族のなかの誰か一人が決定権を持ちます。なぜなら、遺骨は祭祀財産として認識されていて、分配すると祭祀の意味にそぐわないと考えられるからです。

祭祀財産の所有権は、祭祀継承者にあるというのが通説。民法上では、遺骨は祭祀財産として定義されていませんが、最高裁で「遺骨は祭祀財産であり、祭祀継承者に帰属する」という判決がでています。

遺骨を引き取る祭祀継承者とは

祭祀継承者とは、祭祀財産の管理や、故人の年忌法要の主催を行う人のこと。
祭祀財産は「家系図・位牌・神棚・仏像・仏壇・墳墓」などに当たるため、一族のこれまでの歴史を背負う人という意味があります。

祭祀継承者が亡くなった場合、再び遺族の誰かが継承者となり、脈々と歴史が受け継がれていきます。

遺骨を引き取る祭祀継承者はどう決まるか

祭祀継承者には「これまでの一族の歴史を背負う」という意味があるので、継承者を選ぶときは優先順位があります。

1番目に優先されるのは、故人が指名した人。故人が指名した人を後継者とするのは、民法上の第897条一項に記載があり、一番強い決定権を持ちます。この指名は遺言書だけでなく、口頭での約束でも効力を発揮します。ただ、亡くなってからだと確認できないため、証拠を残しておかなければなりません。

2番目に優先される継承者は、慣習上の祭祀主宰者。これも、同じく民法上で定義されていますが、慣習上という言葉は広義に解釈できるので、遺族同士で揉めてしまうかもしれません。解釈が難しいときは、家庭裁判所で家系やさまざまな事実を踏まえた上で決定されます。

遺骨の引き取り以外も?祭祀継承者の責任範囲

  • 遺骨の引き取り
  • 納骨
  • 墓地の建設
  • 法要の実施
  • その他、祭祀に関わること

祭祀継承者は、遺骨の引き取り以外に、祭祀に関する権利を受け継ぎます。
ですが、これらを行う義務は法的には定められていないため、祭祀継承者は「行わない」選択をすることも可能です。万が一、咎められても罪になることはありません。

しかし、祭祀を行わないことで他の遺族とトラブルになる可能性もあるので、注意しましょう。

遺骨の引き取り拒否はできるのか

遺骨を引き取る場所は、火葬場や市町村の役所、警察など。火葬場で引き取る場合は、荼毘に付したあとのため、祭祀継承者に遺骨が引き渡されるのが一般的です。

ただ不慮の事故や事件、孤独死などで家族が亡くなったときは、役所や警察から引き取り連絡が入ります。引き取り連絡があった場合は、家族や親族などの遺族に引き取りの決定権があります

火葬場で遺骨を引き取る場合

火葬場で遺骨を引き取り拒否できるかは、自治体によって違います
一番早く確認できるのは、各自治体が定めている火葬場条例を確認すること。自治体が対応しているのであれば、事前に役所で「誓約書」を記入すれば、火葬場で遺骨の引き取りを拒否できます。

また、関東と関西といった地域によっても、遺骨の引き取り方法は変わります。関東だと、遺骨は全収骨して祭祀継承者に渡されるのが通例。そのため、基本的に遺骨の受け取り拒否はできません。

一方で関西だと、遺骨は部分収骨で、残った遺骨は火葬場や自治体が供養をします。そもそも遺骨の一部を引き受けているので、引き取りを拒否できる可能性が高いかもしれません。

役所・警察から引き取り連絡を受けた場合

役所・警察から引き取り連絡を受けた場合は、火葬場と違って、遺族側に決定権があります
連絡を受けるまで故人の死を知らなかったのですから、長い間音信普通だったり、生前の関係性が良好でなかったりと、さまざまな状況が考えられるでしょう。遺族側の判断で、遺骨の引き取りを拒否して問題ありません

引き取りを拒否した場合、ご遺体は火葬されて、無縁墓などの墓所へ埋葬されます。

遺骨の引き取りを拒否・処分する理由

  • 納骨スペースに入らないから
  • 納骨するお墓がないから
  • 墓じまいをするから
  • 手元供養以外の遺骨を手放したいから
  • 故人と関係性・交流がなかったから

遺骨の引き取りを拒否する理由は、ご家庭によってさまざま。遺骨の引き取り拒否や処分が必要になる状況を知っておくと、いざというとき判断しやすいかもしれません。

ここでは、遺骨の引き取りを拒否する主な5つのケースをご紹介します。

納骨スペースに入らないから

お墓の納骨室や納骨堂がいっぱいで、収蔵スペースが足りないと、遺骨の引き取りができません。新たな遺骨を納めるために、古い遺骨を粉骨したり、合祀墓や永代供養墓、樹木葬などに切り替えたりすることも検討しましょう。

納骨するお墓がないから

先祖代々のお墓に入れない、後継者がいない、購入資金がないといった理由から、お墓を持たない方もいらっしゃいます。お墓がない=遺骨を納める場所がないので、遺骨の引き取り自体が難しいです。

墓じまいをするから

墓じまいとは、持っているお墓を撤去して区画を更地にし、墓地の管理者へ返すこと。墓じまいをするときは、納骨されていた遺骨を処分しなければなりません。

一般的には、遺骨の供養を続けるために、永代供養墓や納骨堂などに移す方が多いです。

手元供養以外の遺骨を手放したいから

手元供養とは、故人の遺骨の一部を保管して供養すること。小さな骨壺に入れて自宅に置いたり、ペンダントやブレスレットなどのアクセサリーにしたりして、故人を身近に感じられるのが魅力です。

手元供養に必要なのは、故人の遺骨の一部だけ。手元供養以外の遺骨を埋葬する方もいますが、引き取りを拒否したり、散骨したりする方もいらっしゃいます。

故人と関係性・交流がなかったから

一人暮らしや身寄りのない方が亡くなると、警察や役所が戸籍をたどって親族を探し、引き取りを依頼します。そのため、疎遠になっていた家族や面識のない親戚など、生前交流のなかった故人の遺骨を引き取らなければならないケースがあります。

故人と関係性や交流がない場合、遺骨を一緒のお墓に入れたり、自宅に置いたりするのに抵抗があるかもしれません。遺骨の引き取り拒否や処分を考える方も少なくないでしょう。

引き取り手のない遺骨はどうなる?

引き取り手のないご遺体は「無縁仏」、遺骨は「無縁遺骨」と呼ばれ、近年ニュースで話題になっています。

故人に身寄りがいなかったり、引き取りを拒否されたりした場合は、自治体が遺体を引き取り、地域の火葬場で火葬されるのが一般的。基本的に葬儀は行われません。また、遺骨は一定期間保管されたあと、自治体や寺院が管理するお墓に合祀されます。

自治体は無料の遺骨処分を行っていない

ちなみに、自治体が無料で遺骨を引き取ってくれることはありません

前述した通り、自治体が遺骨を保管するのは、地域内で亡くなった身寄りのない方や旅行者など、祭祀承継者がわからない場合だけ。祭祀承継者が決まっているなら、遺骨の引き取りや対処まで行わなければなりません。

相続放棄をした場合の遺骨の所有権

故人に借金や相続税の問題があって、相続を放棄するご遺族もいらっしゃるでしょう。

ただ、もし相続放棄をしても、祭祀継承者の権利は放棄することにはなりません。なぜなら、遺産の相続と祭祀継承は別に扱われているから。祭祀財産を分割すると祭祀の意味合いにそぐわなくなるため、民法では相続と分けて考えられます。

もちろん「位牌・仏壇・墓地」などの祭祀財産は相続対象にならないので、遺産相続を放棄しても祭祀財産を放棄することにはなりません。遺骨も遺産に当たらないため、相続放棄しても引き取ることが可能です。

遺骨の対処にまつわるお悩みは「いいお墓」へ

故人の遺骨は、一族の歴史の一部として祭祀継承者が敬意を持って引き継いでいく必要があります。ただ、ご自身が祭祀継承者になったら、葬儀やお墓、納骨など、やることがたくさんあって戸惑ってしまうかもしれません。

遺骨の引き取りやお墓にお悩みの方は、いい葬儀の姉妹サイト「いいお墓」におまかせください。遺骨の散骨やお墓のお引越し(改葬)、墓じまいなど、お墓にまつわるさまざまなお悩みに親身にお答えいたします。

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