結界とは?葬式で見かける幕やしめ縄の意味について

小林憲行【記事監修】
小林憲行

記事監修小林憲行

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結界とは、ある特定の場所へ不浄や災いを招かないために作られる、宗教的な線引きのことです。仏教用語ですが、日本の神道にも同様の考え方が見られます。お葬式などで見かける幕やしめ縄は、結界をつくるために飾られています。

ここでは、結界とは一体どのような意味を持つものなのか、また、葬儀を含めた日本の文化とどのような関わりがあるのかについて、歴史を紐解きながら詳しく解説していきます。

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結界は浄不浄の線引き

ある場所において、浄不浄の線引きをすることを「結界を作る」と言います。

この考えは仏教をルーツとしており、仏道の修行に障害にならないよう、一定の区域を区切って居住の場所を区切るなど、さまざまな制限を設けたことがはじまりといわれています。仏教の寺院では結界の内側と外側に分け、内側となる特定の場所を聖域として定めます。また、神道や密教においても、同様の考え方があります。

葬儀における結界

仏式の葬儀に参列した際、幕が張ってあるのを目にした方も多いと思います。

神道では、しめ縄が張ってあります。これらは、その空間が浄化された領域であることを示しています。これが結界です。また、盛り塩にも特定の場所から不浄をはらう役割があります。

仏教における結界

結界の語源は、古代インドのサンスクリット語やパーリ語に由来すると言われています。初期の仏教では、俗と聖域を分けることで教団の僧が戒律を守れるように工夫したのです。

密教では、手で仏を一体化するために印を結びます。これも修行者と仏がつながるため、結界を作る方法とされています。また、密教では、修法を行う場所に結界を張ることで魔障が入り込まないようにします。この場所を結界地と呼びます。比叡山や高野山などがその代表です。

戒律としての女人禁制も伝搬しており、明治期まで密教や山岳信仰の聖域は女人禁制でした。そのため、女人高山として室生寺などの信仰が盛んになりました。

今なお信仰上の理由から女人禁制を守るのが、大峰山の「山上ヶ岳」です。また、大相撲の土俵も女人禁制となっています。

神道の結界

神道における結界を説明するとき、まず穢れ(けがれ)という思想について知る必要があります。

穢れとは、気が枯れているという状態です。つまり物理的な汚れに加え、生命力が枯れたもの、死や流れが止まった血に接することを忌み嫌うという観念です。

新築時には、土地のお祓いをしてもらうことがあります。また、神式の結婚式や各種祈願においても、お祓いをします。お祓い、とはさまざまな穢れを取り除くための儀式です。神道においては、不浄なものを清めるために結界を作ると考えられます。

次は、穢れの思想を背景に、大陸から伝搬した仏教と融合しながら独自に展開していった日本文化と結界の関係について解説します。

お箸も結界

古来日本には、「この世と冥界」、また「神々の領域と穢れた俗世界」とを分けるという思想がありました。そこから、川や岩、樹木を信仰上の禁足の境界として捉える文化が生まれました。

また、自然信仰と密教の融合から生まれた日本独自の修験道(山岳信仰)においても、 修行の妨げとなる物を断ち切る目的で、結界が用いられました。女人禁制がその例です。

現在目にする神道の神社でも、鳥居、しめ縄、神社の階段といった形で結界が示されています。

神道では、八百万の神、米粒の一つにも神様が宿ると考えます。神様の宿る食べものを口に運ぶお箸には、橋渡しの意味があるとされています。

いただきます、と手をあわせることは、食物の神へ感謝して結界を解き、食べ物を口に運ぶということとも考えられています。

茶道と結界

日本の茶道は静謐(せいひつ)を重んじます。そのため、もてなす側と客人の間に暗黙のルールがあります。これも結界と呼ばれています。

例えば、客の立ち入りを禁じたい場所に関守石と呼ばれる石を置きます。また、茶室の出入り口は「にじり口」と呼ばれる狭い入り口になっています。これらも、茶室内の神聖さを示していると考えられています。客畳が道具畳に接続している時「炉屏」を用いるのも、茶道における結界といえるでしょう。

地域と結界

時の権力者が、特定の地域を守護するために結界を用いることもありました。

1580年、北条氏を滅ぼした徳川家康は京都に匹敵する都市計画を構想しました。

やがて、江戸幕府が開府され、徳川家を中心に、江戸は何十年もかけ整備され巨大都市になります。徳川家康に仕えた僧侶の天界は神道、密教、風水に精通しており、寛永寺や増上寺、神田明神や日枝神社など神社仏閣や地形などで、江戸を守護するため、都市に結界を作ったとされています。また、畿内地方にも複数の地域を線で結ぶと正五芒星になる場所があります。

正五芒星は、古代メソポタミア文明でも魔除けとして用いられていたシンボルです。このように、地域を災いから護るために都市計画にも宗教的な結界が用いられることがあったようです。

生活の中に残る結界

家を見ても、日本文化では「空間を仕切る」というより、「不浄を入れない」という意識が強かったことがうかがえます。

私たちの生活において、頻繁に目にする「のれん」も、もともとは浄なる場所と俗なる場所を隔てるために使われたものといわれています。少し昔まで、日本の家庭では台所にのれんをつけ仕切る光景が見られました。台所は、火を扱う場所なので、「のれん」という結界を設けることで災を避ける、という意味があったようです。

このように、浄と不浄を分ける文化は、今の私たちの生活にも溶け込んでいます。

まとめ

葬式と関わりのある結界について、その目的や歴史、日本における文化的な広がりをご説明しました。結界はあまり身近には感じない言葉ですが、葬儀の幕やしめ縄にも意味があるということを少しでもご理解頂ければ幸いです。

葬儀に関して不安や疑問点がある場合や、見積もりがほしい、葬儀社を紹介してほしいという方は、お気軽にお問い合わせください。

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