【終活映画】樹木希林さんの訃報に触れて、もう一度観たい映画『ツナグ』

「終活」という言葉は話題になってもいながら、なかなかお手本も見つからないものです。終活とは、それぞれがそれの人生の終焉を想像して取り組むもの。誰かのまねをしても仕方ないことかもしれません。

そんなときに映像を通じて自分自身の内面を振り返る機会や、元気になるきっかけを与えてくれるのが「終活映画」です。

この記事では、終活映画・ナビゲーターが、人生を楽しむ豊かな終活に取り組んでいただきたいという想いで、おすすめの映画をご案内します。ご自宅で楽しむDVDや劇場公開中の話題作まで、バランスよくご案内をしてまいります。ご自身の環境に応じてお楽しみください。

さて、「終活映画」第一回となる今回は、松坂桃李さん、樹木希林さんの『ツナグ』をご紹介します。

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樹木希林さんと松坂桃李さんが死と生を橋渡し。映画『ツナグ』

「死んだ人に一度だけ再会できるとしたらあなたは誰に会いたいですか?死者とこの世に生きる私たちを『繋ぐ』…それが”ツナグ"です。」

2012年公開のファンタジー映画『ツナグ』のキャッチコピーです。

松坂桃李さんの初主演映画であり、樹木希林さんがそのおばあちゃんを演じていますが、まさに死者と現世の人間を繋ぐ不思議な力を持った血脈を持った二人。その「繋ぐ力」を持つ老婆の役でした。

物語は、いくつかの依頼を受けて生者と死者を繋ぐのですが、その最初の依頼がまさに終活映画と言えるものでした。「病気を患い高齢で他界した母に会いたい」という息子の依頼、ツナグの力など信じていない様子ながらもその力にすがり依頼をしてきます。

指定していたホテルの一室でその依頼者の願いはかなうのですが、呼び出した母に対してなんともシドロモドロに言った言葉は、「不動産の権利書の場所がわからないから」というものです。しかし、すでに亡くなっている母は息子のそんな嘘もお見通しです。

「本当のことを言ってごらん」

彼は、余命告知を受けた母親に本当のことを言えないまま見送ってしまったこと、このことがどうにも悔いになっており、それを謝りたい一心でのツナグへの依頼でした。

「馬鹿だねお前は、そんなことはわかっていたよ」

母にそう言われて、張りつめたものが一気に溶けてゆきます。

終活は逝く人と遺される人のコミュニケーション

終活とは逝く人ばかりの活動と思われがちですが、終活コミュニケーションと考えれば、逝く人も残される人も考えるべきコミュニケーションなのでしょう。

さて、改めて終活映画を語る私としては、樹木希林さんはあらゆる日本映画で活躍をされた偉大な女優さんとしてとらえており、彼女が出ているだけでも劇場に出かける理由は十分だと考えておりました。

死去の報道を受け、ご主人の内田裕也さんのこと、病気に向き合う姿勢など彼女の人となりを拝見するごとに、悟りの境地のようなそんなイメージすら覚え、この映画を思い出した次第です。

おそらくはあまり取り上げられないであろう助演作品を終活映画・ナビゲーターとして取り上げさせていただきました。

改めて樹木希林さんのご冥福を、お祈り申し上げます。

>>樹木希林さんの葬儀式、港区・光林寺で。遺族挨拶では、かつて内田裕也さんから樹木希林さんに送られた手紙も

終活映画の楽しみ方

映画を観るという行為も、真っ暗な中に身を置いて気持ちをリセットしたりすることもできます。さらに映画に出かけようというアクティブな自分自身を作り、タイトルや評判などを聞き想像したりワクワク期待をしたりということも、終活映画の楽しみ方と言っていいでしょう。

作品によっては、その主人公や登場人物にわが身を置いてみることもできます。そしてあのシーンではなぜあんなことを考えたのだろう、あの時私はどんな風に感じただろうと考え、その後で映画をテーマに語る時間を作るとコミュニケーションも広がります。

劇場公開、ホームビデオ、DVDなど、映画を通して、人生を楽しむ豊かな終活に取り組んでいただければ幸いです。

今回ご紹介した映画『ツナグ』

公開:2012年6月

原作:辻村深月

監督:平川雄一朗

出演: 松坂桃李、 樹木希林、 佐藤隆太、 桐谷美玲、 橋本愛、大野いと、遠藤憲一、別所哲也、本上まなみ、浅田美代子、八千草薫、仲代達矢ほか

この記事を書いた人

尾上正幸

(終活映画・ナビゲーター / 自分史活用推進協議会認定自分史アドバイザー / 株式会社東京葬祭取締役部長)

葬儀社に勤務する傍ら、終活ブーム以前よりエンディングノート活用や、後悔をしないための葬儀の知識などの講演を行う。終活の意義を、「自分自身の力になるためのライフデザイン」と再定義し、そのヒントは自分史にありと、終活関連、自分史関連の講演活動を積極的に展開。講演では終活映画・ナビゲーターとして、終活に関連する映画の紹介も必ず行っている。

著書:『実践エンディングノート』(共同通信社 2010年)、『本当に役立つ終活50問50答』(翔泳社 2015)

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