平成30年度の介護報酬はいくらになる見込み?

今回は、来年度の改正情報をお話ししたいと思います。

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介護事業経営実態調査

公表が遅れていた、平成29年度介護事業経営実態調査が10月26日に公表されました。今年は、10月に衆議院の選挙があったため、公表結果が選挙に影響するとのことで、公開が遅れたそうです。

この資料は、介護報酬改正の基礎資料になる大事な調査で、改正年度の前年度の10月の資料を元に改定率が決定されます(前回は、3年前の26年度になります)。
以前は、利益率が10%前後だと、マイナス改定になると言われていました。

平成29年の細かい利益率は、厚生労働省の資料(概要)をご確認ください。この調査は、介護サービス事業ごとに利益率などを調べています。

平成29年介護事業経営実態調査結果の概要|厚生労働省
平成29年介護事業経営実態調査結果の概要について紹介しています。

要するに、介護サービス事業者がどれくらい儲けているか?を調べて、あまりにも事業所が儲けすぎている場合は、マイナス改定にして、報酬全体を引き締めるようにしているのです。

サービス全体の利益率

全サービスの利益率は平均3.3%でした

全サービスの利益率は、平均3.3%で、前回26年度の調査7.8%から下がりました。この利益率は、一般の民間企業の4.1%より低いですが、中小企業の2.6%を上回る水準になっています。だいたい4%前後が基準とされ、4%だと、「±0改定」になると言われています。

この下がった原因を、厚生労働省は、27年度の介護報酬改定率がマイナス2.27だったことと、最近更に厳しくなった「人材不足」に伴う、人件費の増加とみているようです。

この結果を受けて、年末の予算編成に向けて、議論が本格化します。前回改定は結果として、マイナス2.27%でしたが、実際は、下記のプラス分とマイナス分を一緒にしたものでした。

処遇改善:+1.65%、介護サービスの充実:+0.56%、その他:▲4.48%(うち、在宅 ▲1.42%、施設 ▲0.85% )

選挙前に、首相が、更なる処遇改善を進めるという話をしていたこともあり、今年度の4月に処遇改善加算は上がったばかりですが、来年度の4月も上がる可能性があります。

各サービスごとの利益率

訪問介護の 4.8%(26年度は7.4%)、通所介護の 4.9%(26年度は10.6%)が目立ちます。両者とも、事業者数が多く、支給額も多い為、よくマイナス改定のネタになるのです。

利益率が5%を超えているサービスもあるのですが、事業者が少ない為、通常は、そのままになる場合もあります。

訪問介護、通所介護は利益率が5%近くになります

ただ、通所介護は、28年4月に定員19名以上の通所介護と定員19名未満の地域密着型通所介護に分かれました。

今回は、地域密着型通所介護は2.0%だったこともあり、地域密着型通所介護はそのままで、マイナス改定の対象になるのは、平均19名以上の通所介護(全国で2万店ほど)になりそうです。

特に、通所介護は、来年度からリハ専門職の配置がより求められそうなので、専門職を雇うが(経費が上がる)、報酬が下がる(加算を取得して現状維持もしくは、多少アップか?)ことが予想されます。

また、訪問介護は、4月から身体介護と生活援助の人員基準を切り分けること事になっていて、その時に生活援助の報酬単価が下がるだろうと予想されています。

前回の報酬改定で、大幅に報酬を引き下げた特別養護老人ホームは、1.6%(26年度8.7%)になりました。

なお、今年度から、1年分の決算を調査することになったようです、そのほうがよりリアルな数字になりますよね(介護はなんだかんだと季節変動がありますから)。

デイサービス(通所介護)、ホームヘルプ(訪問介護)で新設される加算について

デイサービス、ホームヘルプで新設される加算は以下の解釈通知に掲載されています。「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(訪問通所サービス、居宅療養管理指導及び福祉用具貸与に係る部分)及び指定居宅介護支援に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について」

http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000199100.pdf

デイサービス(通所介護)で新設される加算

今年新設される、加算については、しっかりとチェックしておきましょう。

  • (10) 生活相談員配置等加算について(p30)
  • (12) ADL維持等加算について(p32)
  • (16) 栄養スクリーニング加算について(p33)

改正のポイント

新加算を含め、通所介護の改正については以下の10項目がポイントです。

平成30年度介護報酬改定に関する審議報告
  1. 生活機能向上連携加算の創設
  2. 心身機能の維持に係るアウトカム評価の創設
  3. 機能訓練指導員の確保の促進
  4. 栄養改善の取組の推進
  5. 基本報酬のサービス提供時間区分の見直し
  6. 規模ごとの基本報酬の見直し
  7. 運営推進会議の開催方法の緩和(地域密着型通所介護のみ)
  8. 設備に係る共用の明確化
  9. 共生型通所介護
  10. 介護職員処遇改善加算の見直し

ホームヘルプ(訪問介護)で新設される加算

今年新設される、加算については、しっかりとチェックしておきましょう。

  • (13) 特定事業所加算について(p5)
  • (15) 指定訪問介護事業所と同一の敷地内若しくは隣接する敷地内の建物若しくは指定訪問介護事業所と同一の建物(以下「同一敷地内建物等」という。)等に居住する利用者に対する取扱い(p9)
  • (21) 生活機能向上連携加算について(p14)

特に(15)で扱われている、同一建物の範囲が、通常のマンション・アパートまで拡大されています。ご注意ください。

また、
「訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等について」の一部改正についての資料は、新しい内容が追加されています。

http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000201799.pdf

特に、p7の
1-6 自立生活支援・重度化防止のための見守り的援助(自立支援、ADL・IADL・QOL向上の観点から安全を確保しつつ常時介助できる状態で行う見守り等)は、今回の目玉の改正になります。

今まで、実地指導などでも、指導されやすい項目でしたが、今回整理されました。

利用者の自立支援のため、ヘルパーが利用者にやり方を教えて一緒に練習する支援が強化されました

ヘルパーさんが、利用者の代わりに行為を行うのではなく、家庭教師役になり、利用者に行為のやり方を教えて、一緒に練習する支援です。見守りなので、利用者とヘルパーの分業ではありません(例 同時にヘルパーがおかずを作って、利用者がお味噌汁を作る)。

例えば、今回は、下記が追加されました。

  • ベッド上からポータブルトイレ等(いす)へ利用者が移乗する際に、転倒等の防止のため付き添い、必要に応じて介助を行う。
  • 認知症等の高齢者がリハビリパンツやパット交換を見守り・声かけを行うことにより、一人で出来るだけ交換し後始末が出来るように支援する。
  • 認知症等の高齢者に対して、ヘルパーが声かけと誘導で食事・水分摂取を支援する。
  • 本人が自ら適切な服薬ができるよう、服薬時において、直接介助は行わずに、側で見守り、服薬を促す。
  • 利用者と一緒に手助けや声かけ及び見守りしながら行う掃除、整理整頓(安全確認の声かけ、疲労の確認を含む)
  • ゴミの分別が分からない利用者と一緒に分別をしてゴミ出しのルールを理解してもらう又は思い出してもらうよう援助
  • 利用者と一緒に手助けや声かけ及び見守りしながら行うベッドでのシーツ交換、布団カバーの交換等
  • 利用者と一緒に手助けや声かけ及び見守りしながら行う衣類の整理・被服の補修
  • 上記のほか、安全を確保しつつ常時介助できる状態で行うもの等であって、利用者と訪問介護員等がともに日常生活に関する動作を行うことが、ADL・IADL・QOL向上の観点から、利用者の自立支援・重度化防止に資するものとしてケアプランに位置付けられたもの

この記事を書いた人

橋谷創(橋谷社会保険労務士事務所代表、株式会社ヴェリタ/社会保険労務士・介護福祉士)

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