密葬 – 特徴・費用相場

小林憲行【記事監修】
小林憲行

記事監修小林憲行

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新聞のお悔やみ欄の中で「通夜・葬儀ともに近親者で執り行いました」という記載を時々見かけます。このように家族や近親者で行う葬儀は、密葬と呼ばれています。

密葬とともにお別れの会を開くことで、密葬のデメリットが緩和されるとも言われており、密葬の種類やそれに続いて執り行われるお別れの会について理解することで、多様化する葬儀への対応ができます。

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密葬とは

密葬とは、本葬を行うことを前提とし、ごく近しい身内のみで内々に行われる葬儀や、葬儀があることを広く知らせずに行う葬儀を言います。

一方、本葬とは、密葬に対して、多くの参列者を見込んだ葬儀・告別式やお別れ会といった儀式や式典のことです。社葬や団体葬など、かつて本葬といえば、著名人を中心に行われてきたという印象も強いかもしれません。

しかし、近年では本葬の有無にかかわらず、葬儀があることを広く知らせず、ごく近しい身内だけで行う葬儀を密葬と呼ぶことも増えています。

応急措置としての密葬

もともと密葬は、葬儀に参列してもらいたい親せきなどが遠方にいる場合や、葬儀が年末年始にかかる場合、旅先で亡くなった場合など、事情によってすぐに葬儀を執り行えない場合の措置として、まず遺体を荼毘(だび)にふす(火葬する)ことを、密葬と呼んでいたようです。

そのため、宗教儀式を除いた葬儀を密葬としていたわけではありません。例えば旅先で密葬を行う場合にも、菩提寺に戒名を授けてもらって行っていたようです。

密葬と家族葬、一日葬、直葬との違い

小規模な葬儀を指す言葉としても使われている密葬。ここでは、家族葬一日葬直葬と、ほかの葬儀と密葬の違いについて説明します。

密葬と家族葬一日葬、直葬の違いは、あいまいになっています。小規模な葬儀の総称として、密葬という言葉が使われているようです。

小規模な葬儀の増加

本来は本葬を行うことを前提として行われてきた密葬ですが、葬儀があることを広く知らせず、ごく近しい身内だけで行う、小規模な葬儀を希望する人は、ここ10年~15年くらいの間で急激に増えました。

小規模な葬儀の種類も、家族葬や一日葬、直葬(火葬式)など、さまざまな種類のものが登場しています。こうした状況の中で、密葬の意味も変化している面もあるようです。

他の葬儀の特徴

一般葬

近親者や友人だけでなく、近所の人や故人の会社関係者などに告知して、多くの人に参列してもらう葬儀。通夜や告別式を行い、僧侶をはじめとした宗教者立ち会いのもと行われるのが通例です。

家族葬

家族や親族、ごく親しい友人など、限られた参列者のみで行われる葬儀。通夜や告別式を行い、僧侶をはじめとした宗教者立ち会いのもと行われるのが通例です。

一日葬

通夜を行わず、告別式と火葬だけを行う葬儀。家族葬と同様、家族や親族、ごく親しい友人など、限られた参列者のみで行われる場合が多いです。

直葬

通夜や告別式を行わず、僧侶をはじめとした宗教者による、読経などの宗教儀式を省いたお別れのかたち。亡くなるとすぐに火葬となることから、火葬式と呼ばれる場合もあります。

他の葬儀と密葬との違い

家族葬や一日葬、直葬(火葬式)と、密葬との違いは、多くの参列者を見込んだ葬儀・告別式やお別れ会といった本葬を行うかどうかにあります。

本葬を行うことが決まっていて、一般会葬者にはそちらに参列してもらい、その前にごく近しい身内だけで葬儀を終えてしまう場合に、密葬という言葉を用いるのが本来の意味です。

しかし近年では、本葬を行わなくても、家族葬や一日葬、直葬(火葬式)などのごく近しい身内だけで行う葬儀を行う場合、一般会葬者の参列を制限することから、密葬という言葉を使うことも多くなりました。また、葬儀社によっては直葬に当たる葬儀のプラン名などに、密葬という言葉を使っている場合もあるようです。

そのため、ごく近しい身内だけで行う、小規模な葬儀の総称のように使われるケースも見られ、言葉の意味の境界線があいまいになってきているのが現状です。

密葬の費用相場

本葬を行わない密葬の費用相場

本葬については、社葬や団体葬、お別れ会など、形式も規模もさまざまなので、費用相場に関しては、目安をお伝えすることが難しいため、ここでは、本葬を省いた密葬だけの費用相場を紹介します。

家族葬

葬儀費用の目安、80万円以上~100万円未満

一日葬

葬儀費用の目安は、40万円以上~60万円未満

直葬

葬儀費用の目安は、20万円以上~40万円未満

主な政令指定都市の葬儀の費用

以下から主な政令指定都市の葬儀の費用が確認できます。

家族葬、一日葬、直葬(火葬式)の選び方

いずれもごく近しい身内だけで行う小規模なお別れのかたちですが、どのタイプの葬儀を行うか、迷ってしまう方もいるかもしれません。

身内に忙しい人が多く時間がとれない、高齢者が多く通夜、葬儀・告別式と2日間にわたる負担をかけられない、一日で終わらせたいという場合は一日葬。

身内が少なく、理解も得られた上で、時間も費用もおさえたい場合は直葬。

ごく近しい身内だけで、気兼ねなく故人を見送りたい場合は家族葬、といった選択のしかたも、ひとつの方法です。

密葬への参列を希望する方への対応

本葬を行う場合は、後日開く本葬に参加してほしい旨を伝えましょう。

本葬を行う場合

本葬を行う場合は、事前に行う密葬ではなく、後日開く本葬に参列して欲しいことを伝えましょう。

本葬の日程がまだ定まっていない場合も、本葬を行う旨と改めて案内の連絡をする旨をきちんと伝えます

本葬を行わない場合

密葬後に故人の友人や知人、呼ばれなかった親族などが故人の死を知った場合、気分を害してしまうことや、「葬儀に参列できなかったので、お別れを言いたい」「お世話になったので、線香をあげさせてほしい」など、弔意を持った客が自宅を訪れることがあります。

本葬を行わない密葬は、費用や時間、手間をおさえ、参列者への対応の煩わしさを軽減するはずが、かえって対応に追われる事態に陥るケースも増えています。

家族や親族の中には、「密葬なんて」と、ごく近しい身内だけで行う小規模な葬儀に、批判的な意見を持つ人がいるかもしれません。後でトラブルにならないためにも、家族や親族とよく話し合い、理解を得ることは重要です。

たとえ密葬が故人の希望だったとしても、充分に検討せず、鵜呑みにしてしまうのは危険です。経済的な事情でなければ、故人の交友関係や、葬儀の意味や役割などを踏まえ、慎重に検討しましょう。その上で、密葬を行うことが決定した場合は、参列をお願いしたい人にはその旨連絡をし、参列を控えて欲しい人には密葬を行う旨を伝え、参列を遠慮してもらいます。

いずれにしても、連絡だけはしっかりしておくことが大切です。

故人と親しかった人への説明はどうする?

本葬を行わない密葬で葬儀を行った場合、密葬の連絡をしていない人は、故人の死を知りません。

密葬の連絡をしていない故人と親しかった友人・知人には、密葬後なるべく2週間以内には、故人が亡くなったことや、密葬で葬儀を済ませたことを知らせるハガキを送りましょう。

ハガキを送ってしばらくすると、「葬儀に参列できなかったので、お別れを言いたい」「お世話になったので、線香をあげさせてほしい」など、弔意を持った客が自宅を訪れることが少なくありません。

また、弔問客から香典や贈り物を渡されることもありますが、予めハガキに香典辞退の旨を記しておいた場合は受け取らないのが基本です。品物を持参されることもあるので、その場合は、返礼品の準備をしておきましょう。海苔やお茶、洗剤など、日持ちのする品物が便利です。

密葬でもお香典は受け取るべき?

本葬を行う場合

本葬は、広く知らせて、多くの人に参列してもらうためのものなので、基本的には、招待を受けていない人でも参列することができます。
そのため、多くの参列者が見込まれます。一般的なお葬式と同じようにお香典を受け取り、返礼品をお返しします。

本葬を行わない場合

お香典を受け取るか受け取らないかは、喪主の判断によります。もしも香典を辞退するというのであれば、事前に香典辞退という旨を伝えておきましょう。この場合、万が一持参された場合でも、受け取らないのが基本です。

しかし、郵送されて来た場合は、返礼品を送ることで対応します。後日、自宅を訪れた弔問客から香典を渡されることもありますが、香典辞退の申し出をしてあった場合も、してなかった場合も、受け取らないこと。品物を持参された場合は受け取り、返礼品をお渡しましょう。

密葬の後にお別れ会をする人が増えている?

「故人を偲び足りない」問題を解決する新しいサービス

本葬を行わない密葬は、ごく近しい身内だけで行われるため、故人に縁のある人の中には、葬儀に参列できなかったことを悔やみ、後から弔問に訪れることもあります。

また、ごく限られた身内だけで、「気兼ねなく故人を見送りたい」と思って選択した小規模な葬儀ですが、葬儀であることには変わりがなく、遺体のこともあるので時間に追われ、バタバタと慌ただしく葬儀や埋葬を終え、やっと心の余裕ができた頃に、「あんな送り方で良かったのか」と後悔する遺族も少なくありません。

いずれの場合も、「故人を偲び足りない」というところから来ている問題といえます。そういった遺族や関係者たちの「故人を偲び足りない」問題を解決するために、「お別れ会」という新しいサービスも登場しています。

故人を偲び足りない、という問題を解決するために「お別れ会」という新しいサービスも登場しています。

お別れ会

細かい段取りや、礼儀作法などで凝り固まった従来の葬儀と違い、「故人や家族が何がしたいか」「故人はどんな人だったか」をベースに自由に内容が組み立てられる「故人を偲ぶための会」。葬儀を終えて、遺族の気持ちの整理が終わる、四十九日や一周期のタイミングに行う場合が多いため、打ち合わせには十分な時間がかけられるのも大きなメリットです。

お別れ会の成り立ち

1994年にホテルオークラ東京(東京都港区)が開いた、「故人を送る会」が始まりだといわれています。当初は会社の役員や芸能人など、著名人が開く本葬として広まりましたが、2010年頃には「お別れ会」をプロデュースする葬儀社や企業が、全国各地で見られるまでに一般化しました。

最近は、故人が勤めていた会社の同僚や部下、趣味の教室・サークルの生徒や仲間など、家族や親族より外側の故人の関係者たちから、「『お別れ会』を開いてもいいですか?」と家族に問い合わせが入るケースが見られるほど、「お別れ会」や「偲ぶことの大切さ」は、社会に浸透してきているようです。

大切なのは送る人の気持ち

「ひそかにほうむる」と書いて密葬です。時間や金銭的な理由から選ぶ場合もありますが、本葬を行わない密葬を選択したからと言って、後ろめたさを感じることはありません。

最も避けたいのは、いつまでも「故人を偲び足りない」気持ちを引きずること。一番大切なのは、遺された人、送る人の気持ちです。

「故人を偲び足りない」気持ちを引きずらないためにも、しっかり故人の死と向き合い、ちゃんとお別れができるよう、納得の行く葬儀を選びたいですね。

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