創業メンバーを全社で送る。担当者が語る「お別れ会ができるまで」

本記事は「月刊仏事」2017年4月号に掲載された記事を転載したものです。

チエル株式会社(本社:東京都品川区)
2016年12月27日施行/会場:青山葬儀所

チエル株式会社のお別れ会。今回、このお別れ会の準備から当日の運営までを中心となって行った同社取締役 製品開発部部長 前田喜和氏、マネジメントサービス部 執行役員 若松洋雄氏、マーケティング部 リーダー 安田美穂氏、マネジメントサービス部 人事・総務課 リーダー 目黒徹氏の4名に話を聞いた。

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「きちんとお別れの場を創って、けじめをつけなければいけない」

ご葬儀の場で弔辞を聞いていると、故人の森谷副社長がとても情熱的な方だったということが伝わってきました。

前田さん 熱くて、逃げない。天才でした。メンバーにもとても好かれていました。
ただ弔辞を読むときはとても緊張しました。というのも社葬ですので、ある程度まじめに話さなければならないのかなと思って準備をしていたのですが、社長の川居から、「もっと本音で良いのでは?」という意見がありました。
少しよそよそしいというか、胸を打つものがないというか……。そこから書き直して、土日などにオフィスの自分の部屋で、一人でずっと練習していました。

今回、お別れ会を行われたきっかけには、どのようなことがありましたか?

前田さん この会社を立ち上げてきた創業メンバーだったということ。
そして、関係者もそろって、きちんとお別れをしたかったということがありました。
ご葬儀は準備の時間もありませんでしたし、ご家族のご迷惑になってもいけません。ですので、ご家族を中心に、当社の社員だけ参列させていただきました。
しかし、お世話になった企業の方であるとか、お付き合いをさせていただいた方々も多数いらして、そうした皆様からも「葬儀に参列したい」というご連絡をいただきました。

お別れ会を開くに当たって、ご家族からのご要望はありましたか?

前田さん 「お任せします」と言っていただきました。ご家族にはなるべくご負担にはならないようにしたいと思いました。

素早く動いてくれていた2人が、葬儀実行委員に

WEBサイトをご覧になるまでには、どのような経緯がありましたか?

安田さん たまたまですね(笑)

若松さん お別れ会についてインターネットで検索しました。当初は私たち自身の状況は伏せて、「もしもの時のために」という設定で相談させていただきました。しかし、早い段階で4社の葬儀社にプレゼンをしていただけて、非常に助かりました。

お別れ会の葬儀社を決めた理由は?

若松さん プレゼンは各社、提案の内容はさまざまでしたが、その中で当社の社風に合いそうだったという点です。あとはやはり、お花の提案でしょうか?祭壇に特徴があるという点が響きました。

祭壇の大きな木と、オレンジ色の花が印象的でした。

前田さん あの祭壇はすごくきれいでした。事前にイメージも見せていただいていましたが……。

安田さん 立派でしたね、イメージで見るよりも。

前田さん 小さいサイズの祭壇の提案もあったのですが、大きい方を勧めていただいて、こっちで良かったなと思いました。

当初、ホテルでのお別れ会を希望されていましたが、会場に青山葬儀所を選ばれた理由は?

若松さん 年内に行いたかったのですが、青山葬儀所がちょうど希望する日程で空いていたというのがあります。もちろん格式ですとか、そのようなことも考慮しました。

前田さん 年を挟んで1月にずれ込んでしまうと、挨拶回りですとかお客様のご都合もあるでしょう。とはいえ、年末も各社で予定もあるでしょうし。タイミング的には仕事納めの何日か前。この日程で行くしかないという思いでした。
もうひとつ、年内にこだわった理由として、時間が経つとどうしても思いが薄れていってしまうのではないかという危惧もありました。

お別れ会の準備については、実行委員会などの組織を社内で作られたのですか?

前田さん 組織というよりは、社内が騒然としている中で、若松と目黒の2人が素早く動いてくれていたのです。それがいつの間にか、葬儀実行委員のようなプロジェクトになり、「お別れ会を開く」という方向で進みました。お客様からの問い合わせを受けて、「どうすればいいですか?」とメンバーの声もありましたが、まだ確定していないのに「やります」とも言えない。そうした状況を彼らがコントロールして動いてくれていました。

若松さん お別れ会という性質上、すべてをオープンにできるものでもありませんでしたから。

社員で作った思い出映像

映像も御社で制作されましたね。

安田さん ムービーを流すというのは社長の発案です。森谷さんの人柄や会社への貢献など、「イメージが伝わるような動画を流したいね」と。それは非常に良いなと思いまして、うちのデザイナーが森谷さんの写真を組み合わせて作りました。
写真は前田さんが、すぐに集めてくれました。

あの写真、前田取締役が集めたのですか?

前田さん 「あるものは全部送ってください」とメンバーに呼びかけて、提供してもらいました。皆も「すぐに見つける」って言ってくれました。古い写真もたくさん出てきましたね。

安田さん 皆が「森谷さんのためなら」って。

思い出のコーナーも良かったですね。

若松さん 「開発の部屋に森谷さんの専用の部屋があるのですが、そこにいろいろなものが置いてあって。それらを全部集めて、「持っていこう」と。いつも毛布を掛けていらしたのですが、その毛布も持っていきました。

前田さん あの部屋は外に面していて昼間から寒かったですから。

安田さん 展示したフリースも、いつも森谷さんが着ていたものです。
あのフリースを見ると社員は「ああ、冬が来たな」と、そこで季節を感じていましたから、見るだけでぐっと胸が熱くなります。

一番苦労したのは、情報管理。

お別れ会の準備から当日までで、一番大変だったことは何でしょうか?

若松さん 予算面では参加する方の人数が最後まで確定しなかったことです。

前田さん メンバーや営業所に確認を取りながらいらっしゃる方の人数を算出していましたが、お料理をどのくらい準備すれば良いのかなど、数がわかりませんでした。「盛大にやった方が良いよね」とは言っていましたが。

安田さん このような会でのムービー制作は初めての経験でしたので、使用する言葉が適切かどうか?失礼に当たらないかどうか?といった、そのあたりの判断がつかないということがありました。

お別れ会に関する規定は以前から用意されていたのですか?

若松さん 社則までは作らず、社内の手続きで対応しましたが、一番苦労したのは情報管理です。社員への伝え方であるとか、外への伝え方の順序など、すぐにFAQを作り、「これは言っていい」「これは言ってはいけない」ということを、すべて通知しました。一つ間違えると、ご家族にもご迷惑が掛かってしまいます。そこをしっかりコントロールできたことは、良かったと思います。

施行を担当した葬儀社の対応はいかがでしたか?

前田さん 社対応が非常に早かったと思います。すぐに打ち合わせをしてくれて、いろいろな案もすぐに出てきて。祭壇など社内の意見もいろいろある中、「少しイメージが違う」となると、すぐに別の案を持ってきてくれたり。

目黒さん 電話すればすぐに来てくれましたね。

前田さん ずっと近くにいてくれたような気がします。

安田さん ムービーでも、例えば「あまり写真が集まってないんですけど」というと「いついつまでにいただければ十分ですよ」と言っていただけて、安心しました。
思い出コーナーも、森谷さんの思い出につながるものを集めたものの、どうしたら良いのかわからなくて。青山葬儀所にどう飾るのだろう?と思っていましたが、プロですね。きれいに飾ってくださって。
展示したパネルは、実は前日「小さいのでは?」という意見が出たのでご相談したら「明日朝、本番までにサイズを直しておきます」と、急な対応もしていただけました。

若松さん 祭壇のお花の色も、当初は「スプレーを用いて色を出す」ということだったのですが、当日には生花で用意していただけました。コーポレートカラーとぴったり合った色の花を見つけていただいたんです。

前田さん あれは良かったよね!

安田さん コーポレートカラーの色番をお教えしましたが、「何に使うのかな?」と思っていたら、そこに生きていたんですね。

若松さん お別れ会のあと、祭壇の花を皆で分けて持ち帰ったのですが、年明けまで元気できれいに咲いていました。いいお花をそろえていただきました。

故人が忘れられても、お別れ会を行ったことは絶対に忘れない

参列者からのご感想はいかがでしたか?

前田さん 遠方からいらした方が、「話だけで聞いていたら(気持ちの)整理ができなかったけれど、お別れ会に参加して、遺影を見て、『ああ、そうなんだな。来れて良かった』と思った」っておっしゃっていました。

お別れ会の前と後では、社内に変化はありましたか?

安田さん 一緒にお仕事をしていたメンバーの中でも、お葬式に伺えなかった人は、ずっと悲しいというか、実感がわかなくてすごく落ち込んでいました。
それがお別れ会があったことによって、故人の分まで頑張ろうというか、ひとつの区切りになったのかなと思います。

前田さん 全社員で会場に行って、お別れ会ができたというのは区切りとしても良かったですね。

当日、全員何かの役を割り当てられていたのですか?

若松さん 誘導とか会計とか、私と目黒の2人で「この人はこの仕事」という風に割り振って、全員に役割を担っていただきました。

前田さん お別れ会を経験して、「自分たちで考えてやらなければいけないんだ」という意識が、メンバーたちの間にも広がったように思います。
何かを相談するにしても、まず自分でできることをまず考えた上で、負荷を自分なりに先に追っていく。なんとなく動きがしっかりして来たというか、やろうとしているというか。
そのような雰囲気を感じるようになりました。

お別れ会の経験が人材の育成にもつながったということでしょうか?

前田さん 可能性は十分にあると思います。上場するとか、社葬をするとか、人生の中ではそう経験できることではありません。青山葬儀所なんてテレビで見たことしかありませんでしたから。「あ、ここなんだ」という感じです。

今回、お別れ会を中心となって進めていらして、いかがでしたか?

目黒さん やはり人の記憶は薄れるというか、故人がいないことが普通になってしまう時が、やがては訪れてしまうのでしょう。
しかし、今回お別れ会を行えたこと。このことは絶対に忘れない。
社員も社外の方も含め、関係者全員で、青山葬儀所でお別れ会をやらせていただけたということ、この事実だけは、ずっと残っていくと思うのです。
若松さん そうですね。社員が一同、団結してできたというのが一番大きかったのではないかと思います。なかなかない経験をさせていただきました。

ありがとうございました。

取材・文/小林 憲行

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