市民葬・区民葬とは、自治体が住民へのサービスの一環として行っている葬儀プランです。葬儀の一部分について自治体と協力する葬儀社とで協定料金を定めているため、葬儀費用は比較的安くおさえられます。一方、市民葬・区民葬のプランに含まれないものはすべて追加での発注となるため、最終的な葬儀費用はまちまちです。
市民葬・区民葬とは
市民葬・区民葬とは、各市町村が市民・区民向けのサービスの一環として行っている葬儀プランです。
葬儀にかかわる一部の項目について、協力する葬儀社と協定料金を定めています。市民葬・区民葬を希望する場合、この協定料金が適用されます。
市民葬・区民葬では、それぞれの自治体が提携している一般の葬儀社が葬儀を施行します。ただし、一部の自治体では自治体で葬儀を施行しています。
市民葬・区民葬の大きな特徴は、簡素ながらも安価でお葬式があげられるということです。
葬儀プランには通常は祭壇や霊柩車、火葬料金などが含まれており、オプションを付ける場合には別料金になります。なお、料金設定は自治体によって異なります。
市民葬・区民葬は葬儀社や火葬場、霊柩自動車の業者などが協力することによって、相場よりも安価での葬儀を実現しています。ただし、自治体によっては葬儀費用の一部、費用負担を行っているところもあります。
なお葬儀が行われる場所の多くは、公営の式場や公民館などの公共施設です。
葬儀の流れは一般的な葬儀とほぼ変わらず、ご逝去、搬送・自宅安置、打ち合わせ、納棺、通夜、葬儀、出棺・火葬、初七日法要となります。
もともとは、戦後東京の葬祭業協同組合が東京都と協力し制度を作ったのがはじまりといわれています。しかし全国的にはまだまだ定着しているとはいえず、市民葬・区民葬を導入していない市町村も多いようです。
市民葬・区民葬の利用条件
市民葬・区民葬を利用するには、所得の制限などがあるわけではありません。
以下の2つの条件のうちのいずれかに当てはまれば、市民葬・区民葬を行うことができます。
・亡くなった方がその自治体に住んでいた
・喪主がその自治体に住んでいる
亡くなった方が住んでいた場所と喪主の住んでいる場所が別々の自治体の場合は、それぞれの自治体における市民葬・区民葬の有無および内容について確認しましょう。
市民葬・区民葬の申し込み方法
市民葬・区民葬を利用したい場合は、申し込みが必要となります。
申し込み方法は2通りあり、1つは市役所または区役所に直接申し込む方法、そしてもう1つは一般の葬儀と同じように葬儀社に申し込む方法です。
市役所・区役所に申し込む方法
人が亡くなった場合には、7日以内に役所に死亡届を提出しなければいけません。
死亡届を提出することで、「埋葬許可証」を受け取ることができます。
市民葬・区民葬を利用したいと考えている場合は死亡届を提出する際に申し込みを行いましょう。
申し込みが受理された場合は、自治体が提携している葬儀社の中から利用したい葬儀社を選び、葬儀の依頼をします。
葬儀社への連絡は、自治体が行う場合と、本人が直接行う場合があります。
葬儀社に申し込む方法
自治体によっては、葬儀をする本人が直接提携の葬儀社へ連絡をする決まりになっています。
その場合は、希望の条件に近い提携の葬儀社を選んで連絡しましょう。自治体でも、ホームページなどでも、市民葬・区民葬を行っている葬儀社の連絡先等公開しています。
市民葬・区民葬を利用したい旨を伝えれば、その価格が適用されます。
詳細はホームページで確認を
市民葬・区民葬の申し込み方法は、やはり自治体によって異なります。可能であれば、あらかじめホームページにて詳細について確認してください。
申し込みにおける注意点などが明記されている場合もあります。
その際、分からないことなどがあれば直接役所に問い合わせてみましょう。
市民葬・区民葬のメリット
市民葬・区民葬の一番のメリットは、「安く葬儀をあげられる」ということです。
多くの場合、葬儀費用は急な出費となります。
しかし葬儀のための費用は高額になることも多く、すぐに捻出できるとは限りません。このような場合、市民葬・区民葬を利用すれば出費を最低限におさえることができます。
また、利用できる葬儀社は自治体と協定を結んでいるという点で、信頼できる葬儀社を探す際の目安になるということも市民葬・区民葬のメリットの一つです。
市民葬・区民葬の例(東京都)
記事の冒頭で述べた通り、東京都では市民葬・区民葬を行うことができます。
ここでは、東京都の区民葬についてみていきましょう。
東京都で区民葬を利用するためには、まずは区役所に足を運んで区民葬のチケットをもらう必要があります。
このときにもらうチケットには「祭壇」「霊柩車」「火葬料」「骨壺」の4種類があり、それぞれ祭壇の種類や棺の種類、霊柩車の種類などにランクがあります。これらを組み合わせて価格が決定します。
例えば、利用できる祭壇にはA、B、Cの3種類があります。
ただしBとCの祭壇はサイズが小さく、式場で利用すると寂しい雰囲気になってしまいます。
自宅で祭壇を使いたいときに向いているといえるかもしれません。
区民葬儀料金表(平成27年4月1日現在)
祭壇料金(御寝棺含む)(税抜)
区分 | 料金 |
---|---|
A1券(金らん5段飾)桐張棺 | 283,800円 |
A2券(金らん4段飾)桐張棺 | 236,000円 |
B券(白布3段飾)プリント棺 | 124,000円 |
C券(白布2段飾)プリント棺 | 91,000円 |
区分(長尺棺) | 料金 |
---|---|
A1券(金らん5段飾)桐張棺 | 295,800円 |
A2券(金らん4段飾)桐張棺 | 248,000円 |
B券(白布3段飾)桐張棺 | 156,000円 |
C券(白布2段飾)桐張棺 | 123,000円 |
※満6歳以下のこどもは、A1券、A2券、B券、C券ともに1,080円の割引になります。
※祭壇を利用しないで、寝棺のみを利用の場合は次の金額となります。なお、その場合は別途人件費が必要となります。
区分 | 料金 |
---|---|
桐張棺 | 60,000円 |
プリント棺 | 40,000円 |
区分(長尺棺) | 料金 |
---|---|
桐張棺 | 72,000円 |
霊柩車運送料金(税抜)
区分 種別 |
料金 | ||
---|---|---|---|
10kmまで | 20kmまで | 30kmまで | |
宮型指定車 | 30,250円 | 35,750円 | 41,250円 |
普通霊柩車 | 14,160円 | 17,760円 | 21,360円 |
火葬料金(非課税)
大人 | 53,100円 |
こども(満6歳以下) | 29,000円 |
※この火葬料金については民営火葬場の料金です。
遺骨収納容器代(税抜)
区分 | 料金 | 料金 |
---|---|---|
大人用 | 2号一式 | 10,900円 |
3号一式 | 9,800円 | |
こども用 | 6号一式 | 2,300円 |
※祭壇、霊柩車、火葬、遺骨収納容器については、ご利用になる方がそれぞれ取捨選択し、組み合わせてご利用できます。
※葬儀を行うにあたっては、上記の区民葬儀料金に含まれない諸費用が別途必要となります。
(東京都 足立区のホームページより。一部抜粋)
市民葬・区民葬のデメリット
メリットもある市民葬・区民葬ですが、やはりデメリットもあります。
市民葬・区民葬を検討している人は、そのデメリットについても理解しておきましょう。
必要最低限の葬儀
市民葬・区民葬で行うことができるのは、必要最低限のことのみを行う質素な葬儀です。
価格をおさえつつ質を維持すると、どうしても葬儀の内容が質素になってしまうのは致し方ありません。
また市民葬・区民葬を行う場合、自治体によっては料理でおもてなしや返礼品を禁じています。
そのため大勢の知人・友人を迎えて盛大な葬儀をしたい場合は、市民葬・区民葬は向かないといえるでしょう。
追加費用が高くなるケースがある
市民葬・区民葬のメリットは費用を安くおさえられる点ですが、市民葬・区民葬において低額に定められているのはごく一部の必要最低限の物品・サービスのみです。
そのため、必要なものを追加しているうちに思いのほか料金が高くなってしまうことがあります。
追加する物の例は、以下です。
・経費
飲食費、斎場使用料、葬儀社スタッフの人件費、寺院への謝礼
・備品
ドライアイス、テント、搬送車、出棺車両、遺影写真
・献品及び、返礼品 など
会葬礼状・返礼品、供花・供物
などは葬儀においては必要不可欠な出費であるものの、追加料金がかかることがほとんどです。
そのため、盛大な葬儀ではなくても価格が高くなってしまうことがあります。
最近では、多くの葬儀社でお得なパック料金を用意しています。
そのため、葬儀の内容や使用する葬儀社によっては、市民葬・区民葬よりも一般の葬儀のほうが安くなることがあります。費用を重視するのであれば、一度比較検討してみることをおすすめします。
葬儀社が選べない
市民葬・区民葬を行うときは、自治体と提携している葬儀社が葬儀の対応を行います。
そのため、自由に葬儀社を選ぶことはできません。
また祭壇や棺なども好きなものを使用できるわけではなく、公営斎場の場合は、祭壇は白木祭壇に限られています。
最近人気が出ている生花祭壇も、市民葬・区民葬では通常、使用できません。
市民葬・区民葬でも斎場や宗派はある程度自由に選択することができますが、葬儀を安く執り行うための制度であるため、様々な部分で制限が出てくるということは覚えておきましょう。
市民葬・区民葬以外の葬儀費用
市民葬・区民葬のメリット・デメリットを踏まえた上で、他の形式の葬儀を検討してみるのもよいでしょう。下記から政令指定都市の葬儀の費用が確認できます。
まとめ
市民葬・区民葬は、自治体によってそれぞれ特徴があります。
葬儀内容や費用も変わってくるので、事前にしっかりと調べておくようにしましょう。
また自治体によっては、故人と喪主のどちらが住んでいたかによって内容や費用に違いを設けています。
この点についても比較しておくとよいでしょう。
市民葬・区民葬は、安く葬儀を行いたいという人には有力な選択肢の一つです。まずは、お住いの自治体で市民葬・区民葬の制度があるかどうかを確認してみましょう。
なお自治体によっては市民葬・区民葬ではなく「自治体葬」「規格葬」などと呼んでいます。
葬儀は、故人と最後のお別れをするための大切な儀式ですが、それゆえに費用はとても重要です。
葬儀の内容や葬儀にかけられる費用などを総合的に考えたうえで、葬儀の方法を選んでみてくださいね。